第一話 トライアル
なろうでは初投稿になります。
楽しんでいただければ幸いです。
0章、1章に関しては改稿版がありますので、そちらの方が読みやすいと思います。
個人番号 A148 K256 65H2 5483を仮登録
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ようこそ HIBIKI KODAMA
「…、暑い」
それもそのはず、眼下には溶岩がくつくつと煮えたぎっている。
ここには大きな足場があるとはいえ、万が一にも踏み外してしまえばいっかんの終わり。そうでなくとも召喚したジャックフロストがいなければ、暑さでやられてここまで辿りつけなかっただろう。
「ありがとう」
肩に乗った小さな雪だるまにそう語りかけ、彼、ジャックフロストを送還する。
ジャックフロストは、「頑張れ」とでも言うように腕を大きく振って還っていった。
見上げれば火口から覗く赤く染まった満月。
そして眼前には一匹のドラゴン。
ドラゴンは炎よりもなお赤いその身をくゆらせ、お前が俺の眠りを妨げたのかとばかりに怒りを込めて、大きく咆哮を上げた。
「ゴァアアアアアアアアッ」
その咆哮だけで、用意されていた10枚の障壁符のうち3枚がはじけ飛んだ。
だがそれには構わず、俺の口と右手は召喚のため動き続ける。
「はるか南、常夏の島の万年雪に宿る女神よ。炎の神をも退けしその力、われに貸し給え。」
「召喚、ポリアフ」
その言葉とともに、浅黒く日焼けをした肌に白いマントを羽織った女性が現れた。
重なるようにして現れたウィンドウを見ると、南の島を起源とする熱に耐性のある雪の女神であるらしい。
なるほどこの戦いにはうってつけだろう。
彼女が右手を上げると幾つもの氷の刃が頭上に生まれ、その手を振り下ろすとその刃がドラゴンに向かっていく。
ドラゴンはその刃を以外にも機敏な動きで避けようとするが及ばず、その身を切り裂かれる。
だがその痛みを物ともせず空に舞い上がると、こちらに向かって火の玉のブレスを吐きかけてきた。
「即時召喚、スヴェル」
氷で出来た盾を召喚しそのブレスを防ぐ。代わりに代償となった氷の召喚石が砕け散った。
ドラゴンの突進をゴーレムの腕でいなし、その翼による風の刃はエアリアルを召喚し相殺する。
そしてこちらもドルイドを即時召喚し、その蔦を絡めドラゴンの体を束縛しようとするが、ドラゴンもその爪と牙で束縛を断ち切る。
そんな戦いが幾合も続いただろうか、こちらのMPは半減し、即時召喚のための各種召喚石も心もとなくなってきている。だがドラゴンのその身もポリアフの氷の刃で切り刻まれ、当初の輝きはすでにない。周囲の溶岩も冷えて固まり足場も広くなっている
このまま押しきれる。そう思ったその時だった。
ドラゴンが火球のブレスを吐いた。俺にではない、天井に向かって、だ。
「即時召喚、ゴーレム」
とっさにゴレームを即時召喚し、崩れ落ちてくる岩盤から俺とポリアフをかばってもらう。
なんとかしのいだが、周りはもうもうとした土煙に覆われ視界が遮られた。
不意の強襲に備え身構えるが何も起こらず、そして土煙が晴れてきた。
晴れた視界、そして俺の瞳に写ったのは、今にもブレスをはこうかとしているドラゴンの姿だった。
大きく開いたその口の周りには、幾つもの魔法陣が展開している。
やばいっ、そう思う暇もあらばこそドラゴンはブレスを放ってきた。
今までのような火の玉ではない、輝く熱線を。
「即時召喚、スヴェル」
とっさに氷の盾を召喚するも熱線を防ぎきることは出来ず、パンッと一瞬で砕け散った。同時に障壁符も次々とはじけ飛んでいく。
……、もうダメか。そう思った時、迫り来る熱線を白い影が遮った。
「くっ」
思わず閉じてしまった目を開くと、そこにはドラゴンから直線上に伸びるえぐれた地面、そしてその射線上で薄く消え行くポリアフの姿があった。
視界の端では、準備が整ったとばかりにアイコンが点滅している。
ポリアフもそれを確認すると、満足そうにほほえんで消えていった。
そういうことか、ちくしょう!
このスキルの使用条件にポリアフの消滅があったであろう事はわかる!
だからってあんな顔で消えていくことはないだろう。
俺はかばってほしくて、消えてほしくて召還したわけじゃないのに。
だけど、そんな感傷をよそに俺の口は詠唱を紡ぎ続ける。
「この地は戦場、生と死が交錯する戦いの庭。
我を守護せし戦乙女よ、この場で散りし精霊素を糧に顕現せよ」
ドラゴンはさっきのブレスを再度放とうとしてるがかまうものか。
この召喚にはポリアフの力もつまっている、負けるものかよ。
「そして我が前の敵を穿て! 召喚ワルキューレ」
同時だった。
ブレスが放たれるのと、青銀の鎧兜を身にまとったワルキューレが降り立ったのは。
彼女は飛んだ。左手の盾でブレスを切り裂きながら、右手に槍を携えて。
そして、その槍とドラゴンが交錯したとき、世界は光に包まれ、大きく『ヴァルホルサーガ ~夜明けの開拓者たち~ with VSOnline (c)アルヒシステム』という文字が浮かび上がった。