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浪人生、ダンジョンと歩む  作者: 荒木空
第2部~駅近ダンジョン~
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旅立ち


 10月29日。その日、世界に再びあのアナウンスが人々の脳に鳴り響いた。


 『おめでとうございます。この度、世界で2つ目のダンジョンが完全踏破されました。攻略者には新たな力と安寧を、その他の皆様は更なる発展を夢見て頑張ってください』


 このアナウンスにより世界は三度(みたび)震撼した。約3ヶ月前にダンジョンの1つが完全踏破され、その後一切のアナウンスが無かったためだ。当然人々は何処のダンジョンが踏破されたのか、踏破されたダンジョンの所在は何処か、最初のアナウンスの時と同様踏破した者は一体誰なのか。世界中のメディアが半月この話で埋まったほどの衝撃だった。


 そして、当然攻略された【硬化】のダンジョン周囲では様々なことが起こった。

 役所側の人間は誰が踏破したのか、当然推測が出来ていたし、だからこそダンジョンから出た際には色々問い詰められた。そして役所側の人間がそんな反応をするもんだから、当然周りに人が寄って集って来ようとした。

 まぁ、これはダンジョン攻略の特典のアイテムで切り抜けることが出来たけど、あれが無きゃ今頃どうなっていたかわからないからマジで助かった。


 家族以外で俺が最初のダンジョン攻略者だってことを知っている猿渡には当然バレたけど、言われたのは「おめでとう。絶対に追い抜くからお前は俺に追い付かれないようにより頑張れ」というメールだけだった。




 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆



 オークを倒した時、【変化】のダンジョンでも聞いたあのアナウンスが全世界に向けたアナウンスの後に鳴り響いた。


 『踏破された当ダンジョンはこれ以降氾濫はせず、潜らずとも問題はありません。また、当ダンジョンの資源はいつでも無限に回収可能です。


 踏破者には【硬化】の他に【硬質化】を贈呈します。


 踏破者は既に他ダンジョンを踏破しているため【硬質化】の獲得が出来ません。踏破者は欲しい能力の付いたアイテムを口にしてください』


 聞いた時はどういうことかわからなかったけど、取り敢えずスキルは貰えない代わりに何か貰えることはわかったから、なんとなく瑠璃から言われてた認識阻害?意識誘導?とか言う能力の有る物を望んだ。そしたらネックレスが目の前に現れて宙に漂った。ダンジョンなんてファンタジーがある時点で物が宙に浮いてるなんてファンタジーは今更だったけど驚いた。

 手が触れると宙に浮くのを止めて手の中へと収まった。それをなんとなく首から下げてオークやホブゴブリン達のドロップ品を集めてダンジョンを出た。


 出るとまぁ、役所の人たちに群がられて、その騒ぎを聞いた周りの人たちにも群がられて抜け出せそうになかったけど、「集まって来んな」って思ったら何故か役所の人たち含めて、まるで俺を見失ったかのようにキョロキョロして周りを探し出すなんてことをし始めた。

 理由や原理はわからないけど、これ幸いとその場からそそくさと退散した。まぁそのせいで換金は出来なかったけど、仕方ないと割り切った。ほとぼりが冷めた頃に換金しに行こう。


 手に入れたネックレスのことを瑠璃に聞いたら「なにそれ羨ましい!私も欲しい!お兄ちゃんもう1回何処かのダンジョン攻略してきて!!」とか宣ったから軽く凸ピンしておいた。

 凸ピンで少し落ち着いた瑠璃曰く、「手に入れたスキルの発展形を1度でも手に入れてたらなんらかのアイテムが貰えるのかもね。でも毎回欲しい物が貰えるかどうかはわかんない。もしかしたら最初の数回の攻略特典かもしれないから」なんて言われた。

 瑠璃の予想がどれだけ当たってるかわからないけど、今のところ全部当たってるからたぶんこの予想も当たってると思う。


 それならば、だ。



 夜。家族全員が集まった場で俺は表明した。


 「父さん。母さん。瑠璃。俺、これからは探索者として生きていきたいなって今日ダンジョンをクリアして思った。お金も稼げるしね。だから近い内に家を出るよ」


 俺の決意表明はそりゃいきなりだったから反感を喰らったけど、まぁ、最終的に受け入れられた。

 意外だったのは母さんの反応で、俺が言った直後は目を見開いて驚いてたけどすぐに「行ってらっしゃい」って言われた。前みたいに刺々しくて攻撃的な感じじゃなくて、なんかまるで「わかってた」みたいな反応だった。

 まぁ言葉だけ聞いたら前のダンジョンが出来た頃の母さんと変わらないけど、母さんの「ダンジョンに行く時の孝則は本当にウキウキした様子なんだからいつか言い出しそうだなって思ってたのよ。この子に学歴社会の頭を使う系は合わないってこの約3年でよくわかったし」って言葉で納得された。

 相変わらず言い方はアレだけど、ありがたいと思った。


 このことを猿渡に簡潔に伝えると、相変わらず「先に行ってろ。すぐに追いつく」って帰って来た。

 猿渡はなんと言うか、俺と気まずい雰囲気になって仲直りしたあの頃から少し変わった。前ならこんなことを言ったら「勝手に言って来い。帰って来た時は遊ぼう」みたいな感じだったけど、今は俺に追い付こうと必死って感じだった。上手く言葉に出来ないけど、本当にありがたいなって思った。



 諸々の準備や挨拶を終えて11月2日の朝。


 「じゃあ行って来る。まぁ死ぬことは無いと思うよ。なんせ俺、たぶん世界最強だし!」


 「何が世界最強だ、そうやって調子に乗ってたら足元掬われて本当に死んでしまうぞ」


 「俺なりの家族を心配させないようにって配慮の言葉なんだけど? わかってるよ。現時点でダンジョンを2個攻略した俺は恐らく1番強い。多分これは客観的に考えても驕りとかじゃない事実だと思う。でもだからといって死ぬ死なないは別だってちゃんとわかってる。それは【変化】のダンジョンでよくわかってる。だから油断せず、ゆっくり攻略していくつもりだよ」


 「なら良いんだけどな。お前の部屋は残しとくし、ダンジョンの管理も父さんたちに任せとけ」


 「お願い」


 と、父さん。


 「アンタの世話をしなくて済むようになったって思うとせいせいするわ」


 「……母さん、その表情(カオ)で言われても説得力皆無なんだけど?」


 「うるさい!さっさと行って家にお金入れて母さんたちを楽させなさい馬鹿息子!」


 「……母さん、今まで色々ごめん。そんでありがとう。行って来るよ」


 「早く行け!」


 と母さん。


 「お兄ちゃんこれ」


 瑠璃がそう言ってノートをいくつも重ねて作った辞典みたいに太いノートを渡してきた。


 「これは?」


 「これからのダンジョン生活や考えられるファンタジー展開、出て来るであろうモンスターの情報を可能な限り詳細に書いといた。もぉ!もっと早くに言っておいてくれるかもう少し出発を遅らせてくれたらもっと詰め込めたのに!!」


 そう言って辞典のようなノートを投げて来た。

 それを受け止めて片手で持ちながら瑠璃に近付いて頭を撫でてやった。


 「ありがとな。あ、でもちゃんと勉強しろよ?ゲームやダンジョンも良いけど勉強しっかりしてないと母さんにネチネチ言われるぞ?」


 「孝則!」


 「おぉ恐い怖い。な?恐いだろ?だからちゃんと勉強しろよ?」


 「うるさい!ちゃんとするよ!どうなるかは目の前にいる反面教師のおかげでよく知ってるからね!!」


 そう言って舌をんべぇーと出して自分の部屋に戻ってしまった。

 意地悪し過ぎたかな?


 「父さん、男1人で我が儘たちの相手大変だと思うけど頑張れ」


 「お前は……。変な所だけ俺や母さんから受け継いだな。 その辺も任せときなさい。お前は気兼ねなくダンジョンを攻略してきなさい」


 「うん」


 ……………。


 「じゃあ、行くよ」


 「行ってらっしゃい」

 「ちゃんとお金入れなさいよ。それで生存確認できるから」


 「ははは。うん。行ってきます」



 駅に向け歩く。街並みは見慣れた風景だけど、一部はダンジョンが出来たことで専門店なんかがちらほら見える。

 そんな慣れ親しんだ道を歩いて駅に着けば猿渡が居た。


 「何してんのこんなとこで?」


 「お前を待ってた以外にあるか?」


 「バカタレ」


 「るせぇよ。ほら」


 そうやってこれまた投げ渡されたのは酒だった。

 いや、なんで酒?


 「なんで酒?」


 「別に意味なんて無ぇよ?ただお前、自分では酒買わなさそうだから俺のオススメの酒をって思ってな。グラスに半分ぐらい注いで氷でも入れて飲め。疲れた体に染み渡るぞ」


 「ありがとう。気が向いた時に飲むわ」




 電車に乗り込み、よく知った街並みが通り過ぎて行く。その途中には4日前に攻略した【硬化】のダンジョンが。

 それを横目に座る椅子に背中を預けて、ダンジョンに入る時にいつも背負ってるリュックサックを()(かか)えて、乗り換えの為の駅に着くまで眠りについた。




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