振り返り
今回かなり短いです。
「それで、久し振りのダンジョンはどうだったのお兄ちゃん?」
夜、夕飯を食べていると瑠璃からそんな言葉を投げ掛けられた。
この世界にダンジョンが生まれて間もない頃は幾度と投げ掛けられたその質問を約一月振りに聞いて、ようやくダンジョンが出来てからの日常に戻れたんだと実感出来た。
「どうって、まぁ今日は慣らし程度にしか潜ってないから特に変わったことなんてないぞ?」
「絶対嘘だよ!嘘吐いちゃダメだよお兄ちゃん!」
「何が嘘なんだよ?別に一切嘘なんか吐いてないぞ」
「だからソレが嘘!嘘じゃないなら何を隠してるの?!」
「だからなんの話だよ…」
「帰ってきた時のお兄ちゃんの表情が、完全に新しいオモチャで一杯遊んだ日の1日目みたいな表情してたよ!
ほら、また入院とかしちゃう前に私達に全部ゲロっちゃいなさい!」
「どんな顔だよ。てか食事時にゲロとか言うなよな…」
とか返しつつ、さてどう言おうかと悩む。
確実に腕輪の事を言ってるんだろうけど、そもそも言っても良いものなのか悩む。
ソレに、腕輪について説明するってことはつまり、俺がゴブリン達を虐殺したことを話さないと駄目な訳だから、飯時って事も有るし、虐殺したことを話すのも違う気がする。
さて、どうしたもんか…。
「こら瑠璃。孝則にだって隠したい事が有るんだ。無理矢理聞き出そうとしちゃ駄目だろ」
悩む俺を見てか、父さんがそう仲裁してくれる。
言われた瑠璃は頬をリスのように膨らませながらも「はーい」と言って引き下がった。
ナイス父さん!
「でも孝則。父さんも気になるのは気になるぞ。だから言える範囲を見極めてさっさと話すように」
そう言って父さんは年甲斐もなくウインクしてきた。
前言撤回。やっぱり父さんは父さんだった。
で、結局洗いざらい話すことになってしまった。
ゴブリン虐殺の所は暈して、腕輪の機能と性能の説明をした。
まぁ、そうなると始まるのは父さんと瑠璃の「試したい」コールだ。食後、食休みを挟んで即自室のダンジョンへ直行。父さんと瑠璃に腕輪を貸して、2人が満足するまで付き合った。
そのせいで父さんは「探索者…悪くないかもな!」とか言ってぶっ倒れたし、瑠璃は瑠璃で「探索者始めようかな…」とか言いながら倒れた。
我が家族ながら馬鹿かと本気で思った瞬間だった。
ぶっ倒れた2人を担いで自室に戻り、2人の靴を脱がして各々の部屋に放り込んで、軽く部屋の掃除をしてから布団を敷いて、風呂に入ってそれから敷いた布団に寝転がる。
思い返すのは今日の事。再び訪れた第4階層は、なんだか拍子抜けなくらい簡単にクリア出来た。自室のダンジョンや駅前ダンジョンのこれまでの傾向を考えると、手応え的に第7階層辺りまでは一気に駆け上がれそうな感触だった。まぁ駆け上がらないけど。
そして腕輪。コレはなんというか、これからかなり重宝しそうだなって印象だ。調子に乗って使いまくって心身共にボロボロにならないようにしないと駄目だけど、ある種の切り札になり得る。緊急脱出用にも練習が必要だろうけど使えそうだし。
諸々を考えて、うん。明日からは第5階層に潜っても問題無さそうだ。
明日からは第5階層に潜ろう。
明日からの方針を決めた俺は、襲い来た睡魔に身を任せて意識を闇に手放した。
今作を何処まで書くか、今後今後をどうしたいのか決まりました。
詳しい事は今章最後のあとがきにてお話しますので、ソレを読んでご協力いただければなと思います。




