腕輪の試運転
お待たせしました。更新です。
今回短いです。
第3層に移動した俺は、まずゴブリンを探すことにした。
試したい事とはズバリ、この腕輪を使った戦闘というものに慣れたかったからだ。
…………新しい物を使った戦闘をしてみたかった、というのが本音だが。
この腕輪から出て来る糸はとても頑丈だ。それも、当たった時には普通に固いダンジョンの岩の壁に突き刺さるほどの破壊力が出る。
だから色々出来るんじゃないかと思った。有り体に言えば、この糸でモンスターを倒せるんじゃないかと思った。
それを試す為に第3層に戻って来た。もし考えてる通りになれば、それだけで戦うのが楽になると思うから。
第3層に戻って来て、程なくしてゴブリンを見つける。数は3匹。それぞれ刃毀れた剣と棍棒を持っている。
今の俺とゴブリン達との位置関係は、目測だいたい70メートルぐらい。だいたいホームベースからスタンドまでぐらいの距離。何度も見た景色だから、たぶん合ってる。
ゴブリン達は俺には気付いて無いらしい。俺は左腕を構えた。
糸は腕輪の中心に有る宝石部分から出てくる。その部分を内側に来るように着けてる。こうしていれば出てきた糸を出した後にその糸を握れて、上手く行けばターザンのような事が出来るかもしれない。それに、今からやろうとしてる事も。
ゴブリンに向けた腕、その手に力を込める。そうすると糸が射出され、真っ直ぐ狙ったゴブリン達の許へと飛んでいく。
何処までも伸びる糸は、遂にゴブリン達の許へと届く。運が良いことに、棍棒を持ったゴブリンの鎖骨辺りに当たった。ソコで力を緩めて糸を腕輪から離し、その糸を今度は力一杯引っ張る。
すると糸は当たったゴブリンを少し俺の方へと引き摺るように俺の方へと寄せ、そのままゴブリンの体から抜けて力を込めた分だけ俺の許に戻って来た。
当たったゴブリンの体には鉄棒の棒ほどの穴が開いていて、ソコから黒い青紫色の血が止めどなく流れていた。そのゴブリンは開いた穴を押さえてその場でのたうち回り始める。
その様子を見た他2匹のゴブリンは、仲間がやられたのを理解したのか、真っ直ぐ俺の方へと走って来た。
引っ張った糸から手を離し、再度腕を構える。
今度は頭でも胸でも何処でも良いから一撃で倒せそうな所を狙う。
俺が集中し、ゴブリンが近寄って来ることで標準を合わせる。そして確実に当たると確信出来た距離にゴブリンが入ったところで左手に力を込めた。
再び射出された糸は、真っ直ぐ剣を持った方のゴブリンの額に突き刺さる。それを確認した瞬間にはもう片方のゴブリンが目の前に来ていたため、すぐに糸から手を離して距離を取った。
距離を取り、再度糸の射出を試みる。今度はゴブリン目掛けてではなく、近くの木へ向けて。
たぶん、ゴブリンぐらいの攻撃なら頭に棍棒を貰わなければもう俺はどうってこと無いと思う。でも、だからと言ってむざむざ喰らってやる気も無い。それに、元々この階層に来たのはこういう時の緊急脱出が可能か試す為だ。此処なら怪我せず色々試せるから、練習には持って来いだ。
でも、どうやら現実はそんなに甘く無いらしい。これまでの試用で当たる所まではスムーズに行った。だけどソコから力の限り引っ張るとすぐに糸は抜けてしまって、結果的に棍棒を今まさに俺目掛けて振り下ろそうとするゴブリンが目の前まで迫ってた。
「チッ!」
俺は咄嗟に握る糸を鞭を振るうように右へ振る。その行動で糸はゴブリンの胴へと当たった。そのおかげでなんとか"俺の頭にゴブリンの強打が当たるという"攻撃を"頭に棍棒が至近距離から落ちてきた"程度のものに抑える事が出来た。
糸に当たった当のゴブリンの体は真っ二つになっていて、すぐに魔石になって消えた。
「あっ…ぶなっ」
体感的に殴られても問題無いとは思ってはいても、だからと言って殴られたい訳じゃない。と言うか、普通に頭殴られるとか本能的に避けるもんだと思う。
左手を見る。ソコには倒した事で込める力が緩んだのか、切れた糸が有るだけだった。
ふと、さっきのゴブリンの体が真っ二つになった理由を考える。そしてすぐにその理由を思い出した。
「そう言えば、力を緩めなきゃ硬いままだったっけ…」
毛穴が開き、一気に流れた冷や汗を拭って立ち上がって糸の回収や剣や棍棒や魔石の回収をする。
まだまだ色々試せそうだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ゴブリンで腕輪を更に色々試した結果、糸の射出もある程度理想の使い方の実現が出来そうな事がわかった。
まずまだ硬いままの射出時の糸の先端を返しが付いた物に変えられる事がわかった。糸が刺さった敵を自分の前に引き寄せようと考えての事だ。最初試した時はすぐにゴブリンの体から抜けてしまったから、返しの付いた先端になるようにイメージしながら射出したら、どうにかなった。
ただ、力を緩めたらすぐに力を緩めた時の糸のようになったから、ターザンゴッコをしようかと思ってた事はこの時点では叶いそうになかった。
ソコから色々試して、その力を緩めた時も硬さを維持出来るようなイメージをして射出すれば、望み通りになることがわかった。
ただ両方ともかなり精神的疲労が普通に射出した時より酷かったから、連発は出来そうになかった。
でも、先端が返しの付いた硬い物に出来るようになったおかげで、一種の銃弾のような使い方が出来るようになった。つまり遠距離中距離の攻撃が出来るようになった。
もちろん相応のリスクは有るみたいだけど、これで戦い方の幅が広がったのは確かだった。
結局、その日はそのまま第3層のゴブリンを一掃して、その武器や魔石を売って終わらせる事にした。
明日も有るし、時間も夜の6時になろうとしてたからな。病み上がりなんだし余裕を持って帰った方が良いだろうしね。




