門
お久し振りです。お待たせしました。取り敢えず書けるだけ、書きたいだけ書きました。
まだ本調子ではありませんが、物書きが出来る程度には回復しました。
これからまた、頻度は不明ですが、最低でも一月に1回は更新していきたいと考えてます。
これからもまたよろしくお願いいたします。
やはり最初の部屋はお試しゾーンだったらしい。最初の蜘蛛が居た部屋の先は完全に別物だった。
俺は行ったことが無いから詳しくはわからないけど、まさに『森』と言われると頭に思い浮かぶイメージと全く同じ光景が広がっていた。人が通れる道なんて無い。所々木が倒れていたり、逆に木の根というか蔓というかが通れそうな道を塞いでいて、手付かずの森をイメージしろと言われれば、10人中最低6人はまさに俺が今見てる光景が思い浮かぶ事だろう。
ただ、やはり此処はダンジョンらしい。所々に足を引っ掻けそうな木の根が地面から出ていたり、非常に見えにくいがだいたい首から鼻の辺りの高さには透明な糸が通れそうな道に設置されていたり、逆にちゃんと安全に通れそうな俺の部屋のダンジョンの道のようになっている所が有ったり、それがまた逆に露骨過ぎて罠のように思えたり。
とにかくこれまでとは明らかにレベルが違う光景が広がっていた。
「これはまた……」
めんどくさい。そう思わずにはいられない。
これまでの俺のダンジョン攻略は頭の中を真っ白にして、戦いの事だけに集中していれば何も問題はなかった。しかし、目の前の光景から、容易にそれ以外の事にも意識を割かないとならないとわかる。
思い知らされると言った方が良いだろうか。
パッと見ただけで既に罠だと思わずにはいられないものが視界に入っている訳だ。これまでの脳筋とも言える進軍は出来なさそうだ。
「……罠だと決め付けて警戒して進めないのは本末転倒か」
取り敢えず罠なら罠で、どんな罠かわかるかもしれないから、罠だと思うものは積極的に引っ掛かっていこう。
こういうのをなんて言うんだったか。『漢解除』だったかな?それでいこう。考えるのは苦手だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
それから何が有ったかは…敢えて何も言うまい。
ただ言えることが有るとすれば、漢解除というものは、思っていた以上にスリリングで頭の悪い解除方法だったという事だろう。
もう2度としない。
でも考えるのは苦手だし、いちいち罠毎に対応を変えるのはめんどくさいからまたやると思う。
まだなった事が無いからわからないけど、たぶんアレだ。昔父さんが言ってた「二日酔い辛いからもう飲まない。そう決めても、やっぱり飲んでしまうのが酒なんだ孝則。お前も飲むようになればわかる」ってヤツだと思う。要するに、もうやらないと言いつつやっちゃうヤツだ。
お酒はほどほどに、というヤツだな。
だけど、お酒と罠の漢解除は違う。どっちも命の危険が有るけど、その度合いは雲泥の差だ。漢解除以外の方法を考えなくてはならない。
ただ、やっぱり漢解除以外の解除方法を思い浮かばない。もしかしたらもう他のダンジョン攻略者達が罠に関する情報を開示しているかもしれないけど、それを見たり読んだりしたところで俺が理解して実行出来るとは思えない。
となると、やはり漢解除しかないだろう。
スリリングで頭の悪い解除方法だけど、大変なだけで確実に解除出来るのだ。やらない訳はないだろう。
そこから俺は、森の中を文字通り縦横無尽に駆け回った。
罠は定番の落とし穴から、足を蔓で拘束してそのまま宙に吊るす罠に、確か狩りとかで使われるトラバサミ、特定の物を動かしたら上から岩やドデカイ先の尖った丸太が俺目掛けて落ちて来る罠だったり、引っ掛かったら問答無用で俺の命を確実に取りに来てるとしか思えない罠だったり、心労が絶えないものが多かった。
長時間ダンジョンに潜ったから手に入れたであろうこの身体能力に頼りきった解除になったけど、なんとかなった。
そうして森の中を罠を漢解除したり、いきなり不意打ちで強襲してくる大型犬ぐらいの大きさの蜘蛛達を倒したりと探索していく内に、明らかに森の中に有るとおかしいものがそこに鎮座していた。
門だ。
その門を見て最初に思ったのは「まるで地獄への門のようだ」だ。別に造り事態は何処にでもは無さそうだが、『禍々しい門』と言われて連想しそうな造りをしていると言えばありふれた造りと言えるようなものだった。
強いてその造りを描写するのなら、石造りの重々しい雰囲気を漂わせる門で、真ん中に縦に線が有ることから障子のように開く事が想像出来る、といった所か。
だけど、1番気にしなくてはならないのはその門に施された装飾、レリーフだろう。
まるで天井から糸を垂らし下に降りてくる蜘蛛のような造りをしている。いや、この階層に出て来たモンスターの事を思えば、『ような』ではなく、実際蜘蛛を象っているんだろう。
その造りが精巧で有るが故に、真ん中の縦線がまるで天井から垂らされた蜘蛛の糸を連想させる。それがまた、この門の禍々しさを強調していた。
"肌で感じる"というものを、久し振りに体験した。前に感じたのは最後の甲子園の時。あの空気、熱気というものはあの時あの場所でしか味わう事が出来ない物だ。初めてアレを体験した時なんかは、そのあまりの迫力に気圧された事はいつまでも俺の記憶の中に残り続けるだろう。
そう、甲子園の舞台など特別な時に感じるものは、総じて"肌で感じる"というものを体験するものだ。少なくとも俺はそう思ってる。それを今、この門を見て感じた。それだけで、この門の先がどういう所なのか、想像は容易い。
ボス部屋。この門の先にある部屋は、まさにそれだろう。
門の雰囲気、造り、言葉に出来ない威圧感、場違いな物。この部屋がボス部屋だろうと結論付けるのはこれ等の要素だけで十分だろう。
何より、まだ門に入っておらず門を見ただけの段階でこれだけはわかった。いや、この門が、何を俺達探索者に伝えたいのかがわかった。
『遊びはここまで。ここからは本領を発揮させてもらう』
そう言われている事が、どうしようもなくわかった。理解させられた。それほどまでに、これまで俺がしてきたダンジョン攻略とは違うものがあった。
ゴクリ
唾を飲み込んだ気は無かったが、自然と咽が鳴った。その音で、初めて甲子園の舞台に立った時に気圧された以上圧倒されていることを自覚した。
「スー………、フゥー………………」
大きく深呼吸をする。
幸い、モンスターは襲って来なかったし、直感だがここにはモンスターは入って来ないだろうと思えた。
だから、目一杯時間を使って心を落ち着かせた。
何度も何度も深く深呼吸をする。
「……………………よし」
深呼吸をしている内に心が落ち着いたと同時に覚悟を決める。中に入らない事には始まらない。この門の先から逃げたところで前には進めない。たとえここで俺が入らなくともいずれ誰かが入るだろうし、いつまでも逃げてばかりいては猿渡辺りに馬鹿にされるだろう。
だから、ここで入ってボス戦をして、必ずボスに勝って生き残る事を覚悟する。
敗けるとか死ぬとか、そんなことは一切考えない。勿論、考えてリスクを減らしに行くのは大切な事だが、何かを覚悟するときにマイナスな事を考えるのは中途半端になって悪い結果しか生まない。俺はそれを、高校3年間の野球生活で学んでる。だから、勝って生き残る事だけを考える。
パンッパンッと自分の頬を叩く。そうして気合いを注入する。
もう1度、今度は目を瞑って深呼吸をする。
「………………行くか!」
俺が何か覚悟をしたり気合いを入れたりする時の儀式は終わった。あとは、目の前の事に集中するだけだ。
俺は門に手を当てた。
門は俺が手を当てた所から蜘蛛の巣状に光を放った。そして一際大きく光ると、ゴゴゴゴゴという重い物が動いたかのような音を立てて左右へと開いて行く。
門の先は見えない。真っ暗だ。一言で表すなら闇だ。闇が広がっている。
しかし、だからどうした。覚悟はもう決まっている。
俺は躊躇することなく、闇へと足を踏み入れた。
一瞬の浮遊感を覚えた直後、急に視界に広がる光景が闇から何処かドーム状の大きな部屋の中へと変わる。
周囲には背が高く太い、大きな木が全部で6本有る。
そして部屋の中央。ちゃんと見るまでは気付かなかったが、そこには卵のような形をした大きな木があった。周りの6本の木と比べると小さいが、それでも立派な大きな木だ。その木から伸びる大きく太い木の根を見れば、どれだけ力強い生命力を宿しているかがわかる。
なんとも不思議な形の木だ。そう思ったのも束の間。突如その木が震え始めた。
不思議な木が震えると同時に部屋全体も振動する。
そこで初めて俺は、それが木でないことを理解した。
木だと思っていたものは腹だ。木の根だと思っていたものは脚だ。それは大きく震え、脚を立て、その場に飛び上がると、こちらに顔を向けた。
蜘蛛だ。それも、大きな大きな蜘蛛だ。足の大きさも含めると小学生の野球グラウンドぐらいで高さは小学校の校舎ぐらい有るんじゃないだろうか。
目は8つ有り、口元は忙しなく動いてる。脚や腹から生えてる毛は、その毛先に触れれば血が出て来そうなほど硬そうだ。
そんな大きな蜘蛛が、俺に向かって吼えてくる。
蜘蛛が吼えるってなんだって話だが、迫力は凄まじい。
「……………ハハ」
何故かはわからないが、自然と嗤ってしまう。恐怖は無かった。
有ったのは、「どうコイツを倒そうか」という闘争本能だけだった。
俺はバットを刀身が分厚い大刀へと【変化】させ、大蜘蛛目掛けて駆け出した。
今回主人公が漢解除した罠の種類
落とし穴、括り罠、トラバサミ、戸板落とし、ブービートラップ
計5種類が主です。




