猿渡との2階層
7月18日。今日は猿渡と潜る日だ。だけど昨日のあれで、正直外のダンジョンに潜る気力はかなり失せてる。でも外のダンジョンに潜らなければ生活するためのお金が手に入らない。世の中儘ならない事ばかりだ。
あらかじめメールで集合時間と集合場所を決めていたため、時間にその場所に向かう。集合場所に着くと、既に猿渡が来ていた。
「待たせたか?」
「いや、俺もほんの5分ほど前に着いたばかりだ」
挨拶もそこそこに、俺達はダンジョンに潜る。
最初の受付の際、昨日のあの受付が居ないか確認したが、案の定居なかった。どうでも良いか。
ダンジョンに潜り、第2階層の待機室へと辿り着く。
「今日は第2階層の攻略だな」
「あ、いや、実は昨日……」
猿渡に昨日あった事を全て話す。
「お前…、あれか?お前のもう1つのスキルか何かか?」
「まぁ、ほとんどそれで倒したようなものだけど…、まぁお前になら良いか。ちょっとだけ2階層に潜ろう。俺も確かめたい事が有るし」
猿渡にそう切り出し、昨日のボス戦最後に俺がやった事を試してみるため、もぐらを探す。
通路を歩くこと約10分。ようやく最初のもぐらを見つけた。しかし数は1体だけだった。
昨日は3分に1回ぐらいだったのに、今回はなんでこんなに時間が掛かったんだ?
まぁ良いか。俺はもぐらにすぐに近付き、その首を【硬化】させた手刀で叩く。すると、綺麗にもぐらの首が切断され、もぐらは肉へと姿を変えた。
「やっぱりか」
「お前な……」
俺の呟きと同時に猿渡の呆れたような声が聞こえる。
「?なんだ猿渡」
「いや、だからお前、その化け物身体能力は隠せって言っただろ」
「?だから十分スピードを落として近寄ったじゃないか」
「いやいやいやいやいや、だからな加藤、普通の人間は手刀で首なんて落とせないぞ」
「?あぁ、これの事か。たぶんだけど、これならお前も出来るぞ猿渡」
「お前、何言って……」
俺は猿渡に俺がやった事を話した。
「するって言うと何か、お前は腕を刀に見立てて、腕の外側を三角に尖るようなイメージで【硬化】を使ってもぐらを斬ったと。そう言いたいんだな?」
「俺の身体能力も勿論少なからず関係はしているだろうけど、それを抜きにしてもやってみた感じだと出来ると思うぞ」
「それで出来たら苦労しねぇよ……」
「つべこべ言わず、次は猿渡が試してみると良い。俺がもぐらを抑えておいてやるからさ」
「…………まぁ、物は試しか」
それから更に10分以上2階層を徘徊し、再び1体だけ見つけた。
俺は直ぐ様近付き、もぐらの両手を後ろから掴み、抱き締めるような形で拘束する。
「ほら、猿渡、やってみろ」
「……言っても無駄か」
猿渡は、何故か何かを諦めたような表情をしたあと、普通にもぐらの首を叩いた。
1回では断ち切る事が出来ず、それによりもぐらは必死に逃げようと何度も強く藻掻く。それをギュッと抑え付ける。猿渡も、もぐらの頭を掴んで、何度も何度も首に手刀を入れる。
程なくして、もぐらの首は荒々しい傷口ではあるものの、完全に断たれる事となった。そしてもぐらは肉へと姿を変える。
「な?出来ただろ?」
「………………だな」
「自棄にテンション低いな、どうした?」
「いや、この方法、確かに肉を手に入れられて金稼ぎにはちょうど良いかもしれないけどさ、グロい」
「…………」
「グロい。ただただグロい。確かにお前の身体能力なら1発なんだろうし、俺でも切れる事は証明出来たけどさ、切るまでの過程がグロい」
「駄目か?」
「少なくとも、もっと力を付けなきゃ無理だな」
「そうか……」
昨日、たまたまボスに対して出来たから、俺以外にも肉を供給出来る奴をと思ったんだけどな……。グロいまでは考えてなかったな……。
「まぁでも、この戦い方はバリエーションを増やすという意味では凄く役に立つ。良いこと教えてもらったよ加藤。サンキューな」
「気にすんな。俺も俺の都合でお前に教えただけだしな」
「で、どうする?話を聞く限り第2階層もクリアしたんだろ?」
「あぁ」
「じゃあ第3階層に行くのか?」
「あー、それも良いんだが……」
「……なんか有るのか?」
「ほら、自衛隊の田中さんって居ただろ?俺等の探索者試験担当した」
「居たな」
「あの人苦手なんだよ……」
「あー……」
俺達の間に、暫しの沈黙が訪れる。
しかしこのままこうしているわけにもいかない……。
「…………行くか……」
「だな……」
俺達は3階層に行くことにした。




