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浪人生、ダンジョンと歩む  作者: 荒木空
第2部~駅近ダンジョン~
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2階層クリアと久し振りのあの人


 7月17日。今日は1人でダンジョンに潜る事にした。何処のダンジョンに潜るか?駅前のダンジョンにである。猿渡曰くお酒が残った状態で潜るのは危険だそうだが、どうせ潜っても2階層までの気だし、一昨日の事を思えば問題は無いだろう。

 父さんや母さんや瑠璃には猿渡に言われたように俺がダンジョンをクリアした事は隠すようにお願いした。その事を話したら、父さん達に「むしろ仲が良いとはいえ話したのか」と驚かれた。



 入口で受付を済まし、ダンジョン内へと入る。

 中は相変わらずの洞窟で、それなのにじめじめした感じはしない。

 そのまま1階層のボス部屋まで行き、ボスを倒す。勿論猿渡に言われたように、他に誰も居ないことを確認してから戦う。

 第1階層のボスとは一昨日も戦ったから戦い方がわかってる。簡単に倒すことが出来た。

 いくら第1階層とはいえ流石にボスが簡単に倒せるというのはおかしいだろう。ここで俺は、ようやく自分の強さというものを朧気ながら理解した。


 そして第1階層のボス部屋で壁に触れ、ホワイトアウトし、第2階層の待機室へと辿り着く。

 待機室が有るのは自室のダンジョンと同じらしい。

 エレベーターのランプを見ると、ランプが11個有った。その内2つが白と赤に光っている。どうやらここは10階層ほど有るらしい。

 それを確認した俺は、第2階層の通路へと足を伸ばす。

 ここのダンジョンに限らず、自室のダンジョン以外は通路にもモンスターが出るらしいから気を付けなければ……。


 そうして歩くこと体感5分。第2階層のモンスターが現れた。なんと第2階層のモンスターは、よく知るもぐらだった。しかし自室のダンジョンのもぐらと比べると、何処か刺々しい様相をしている。


 まぁ、関係無いか。


 俺は軽く近付き、もぐらの頭にバットを叩き込む。それだけでもぐらの頭は弾け飛び、黒く濁った石へと姿を変えた。


 「…………」


 呆気ないと思ってしまった。猿渡が化け物と言ったのは、この辺が関係してるのかと、今なら客観的に自分を見れる。


 残り2体居る。その2体も早歩きで近付き頭を軽く叩くだけで、見るからに頭蓋骨が陥没し、すぐに黒く濁った石になった。


 「化け物、ねぇ……」


 頭を振って気にしないようにする。

 俺はダンジョンに潜るとき、安全第一で動いてただけだ。その結果化け物と呼ばれるのなら、いずれ誰でも化け物に見えるようになるだろう。そう思うことにする。


 「………………行くか」


 2階層のボス部屋目指して進むことにした。




 それから1時間ほど、歩いてはもぐらの頭を潰し、歩いてはもぐらの頭を潰しを繰り返していると、いつの間にかボス部屋に辿り着いていた。通路から覗いた感じだと部屋の広さは5メートル~10メートルの立方体の部屋らしく戦うにしては非常に狭い部屋だった。

 その中にもぐらが大きいのを含めて第1階層のボス部屋同様、これまた6体居た。

 5メートル~10メートル……8メートルで良いか。だいたい8メートルぐらいの狭い部屋に6体の中型犬から大型犬サイズのもぐらが、恐らく地面の中を潜って四方八方から攻撃してくると考えるとかなり脅威だな……。


 まぁでももぐらなら慣れてる。四方八方からの攻撃も、数が減れば怖くない。

 そう結論付けて、俺はもぐらに向けて駆け出した。

 まずは1番手前のもぐらの頭をバットで殴る。殴って、そのまま止まらず走り抜けて1番後ろのボスの頭に蹴りを入れる。ボスは後ろに吹っ飛ぶ。吹っ飛ばしたボスを放置し、先に取り巻きを処理するために後ろを向く。後ろを向くと、いつの間にかもぐら達はそこには居らず、背中にドンッと強い衝撃を受ける。

 後ろを振り向くと、ちょうど地面に潜ろうとしているもぐらが。

 嫌な予感がしてボスの居る方を見れば、やはりボスも姿を消していた。


 「……やっぱりダンジョンによって難易度が違うのか?」


 少なくとも今現在の自室のダンジョンではここまでモンスターの対応は早くない。

 それなら気を引き締めなければならない。ダメージとしては小さい子供にぶつかられたような衝撃だ。でもそれが積み重なればもしかしたらが有る。背面側から脚にタックルを食らえば十字靭帯を最悪断裂するような怪我をするかもしれない。


 俺は今まで流しの軽い気持ちでいたのを即座にやめ、集中する。


 何処だ?何処から来る?


 最初に気付いたのは少し前の地面だった。少し動いたような気がしたのだ。俺は直ぐ様バットを構え、出て来るのを待つ。

 ジッと前の地面を見つめる。すると普通のもぐらが出て来た。俺はタイミングを見計らいバットを振ろうとした。その時、背中に再び衝撃が襲った。それによりタイミングはずれ、目の前のもぐらの突進を顔面で受けてしまう事になった。もぐらの突進はとても強烈で、主に当たった鼻が痛い。幸い鼻血は出なかったが、恐らく赤くなってる事だろう。


 「野郎……」


 【変化】をジャージに施し鎧にし、【硬化】を体に掛ける。そしてバットも厚さ2センチを保ってられる長さに伸ばせるだけ伸ばす。刃渡りがパッと見2メートルを越えたが気にしない。それを持って、刃の有る方にグルグル回る。非効率だろうがなんだろうが関係無い。これで出て来たやつを刈る。


 グルグル回る。前まではこんなにグルグル回ったらすぐに目を回していたが、今はまだまだ余裕だ。

 グルグル回る。グルグル回っていると剣に確かな感触が何度も掛かる。

 グルグル回るのをやめる。すると周りには取り巻き4体分のもぐら肉が有った。これで最初のもぐらを合わせれば5体の取り巻きを倒した事になる。


 残るは、


 「何処だ?何処から来る?」


 ボスのみ。


 神経を研ぎ澄まし何処からか来るのを待つ。剣はバットに戻して鎧はジャージに戻した。俺の予想だが、ダンジョン最初に貰える力はそのダンジョン攻略に役立つ力が手に入る。だから、ここでは本来【硬化】以外は使わなくてもクリア出来る筈だ。それを考慮すれば先程の俺の行動は邪道だ。だから2階層の最後ぐらいは本来の力である【硬化】に頼る。


 体とジャージにそれぞれ【硬化】を掛ける。これで防御面を固めた。さぁ、いつでも来い。


 その時は上からやって来た。天井からボスが俺目掛けて飛び出て来たのだ。


 「ぶっ倒す!!」


 落ちてくるボスに向けてバットを打ち上げる。

 なんとボスは、俺が打ち上げたバットを手でガードして腕を犠牲に一撃必殺を防いだ。


 「糞!だったら!」


 俺はバットを手放し、ボスの体を掴んだ。そして地面へと背負い投げのような要領で打ち付け、それを何度も何度も繰り返す。そして最後に首目掛けて手刀を何度も何度も打ち下ろした。すると首は綺麗に落ち、ボスはもぐら肉へと姿を変えた。


 「ハァーーーー……。勝った!」


 なんとか勝てた。ゴブリンほどじゃないが、久し振りに手に汗握る大変な戦闘だった。

 やった事、やられた事を振り返れば楽勝のようにも思えるけど、俺としては結構一杯一杯だった。本当に、久し振りに焦った。でも戦い慣れてきたからかそんなに長いことあたふたしなくなったのは成長を感じる。


 俺は部屋の中の物を見る。部屋の中には肉が5つと石が1つ有った。それを1つずつリュックサックに仕舞い、部屋の奥の壁に触れる。すると視界はホワイトアウトした。



 次に視界が戻った時には、自室のダンジョンでは見慣れた待機室の風景が有った。そしてそこには、見ず知らずの人3人ほど居た。

 その人達は俺を見るとその人達の内の1人がコッチへと寄って来て、笑顔で話し掛けて来た。


 「確か君は、探索者試験の時に最初に合格した子だよね。うん。あの時と同じ格好だし同じバットを持ってるし、そうだね」


 言われて気付く。確か探索者試験の時に俺や猿渡の試験を担当した……、


 「確か…田中さん……でしたっけ?」


 「そうそう。それで?君はここまで辿り着いたって事は2階層をクリアしたって事だよね」


 「えぇ、まぁ……」


 この人、なんでこんなグイグイ来るんだろうか?

 顔に出たのか田中さんは慌てたように謝罪してきた。


 「気を悪くさせてしまったようで申し訳ない。別に取って食おうとしている訳じゃないんだ。君には個人的に期待してたから、今頃になってこの階層に辿り着いた事にビックリしたんだ。確か君と一緒に受けてきてた子、確か猿渡君だっけ?彼はもっと早い段階で来てたから意外だったんだよ」


 「はぁ……」


 にしてもよく喋るな、この人。

 なんかこのまま此処に居ると色々根掘り葉掘り聞かれそうだし、さっさと退散するか。


 「じゃあ、これで俺は失礼します。今日はもう疲れたので」


 「……そんな風には見えないけど?まぁ、そうかい。それは引き留めてしまって悪かったね。じゃあまた会おう」


 こちらはなんだか、2度と会いたくないです。


 俺は足早にエレベーターの方へと行き、そこからダンジョンの最初の部屋へと戻った。



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