任務中に幼女を拾った 7話 幼女とお話と鳥
ヴォルアとメイアはジスタを後にし、森の中を歩いていた。
「これからどこにいくの?」
メイアは歩きながら隣にいるヴォルアに聞いた。
「そうだなぁ。とりあえず一番近い街は……そうだなエンジェかな」
そう言いながらヴォルアは腰につけたポーチから地図を取り出し、少し悩んだが、すぐに行き先を決めた。
今回の旅の目的はメイアの情報を探すためだ。昨日のうちに情報屋に色々聞きに行ったが、メイアに関する情報はなかった。
「エンジェって街に何か用事あるの?」
「特に用はないけど、メイアの情報を探しに行こうかなって」
ヴォルアはそう言ったが実際には用はあった。だが、メイアにはあまり知らせたくないことだったので、メイアに教えなかった。
「メイアの?」
メイアは歩きながらヴォルアに聞き返した。
「メイア自身が記憶がないなら少しでもいいから情報を探そうっていう旅だから」
「なるほどね!」
「な、なにあれ!!!」
突如、メイアは大きな声をあげてヴォルアに尋ねた。
「あ~、あれはスライムって言って人には無害なん、だ、?」
と、ヴォルアは言い、手を顎に置きぶつぶつと言い始めた。
「どうしてスライムが存在しているんだ?あの時に奴は……」
「ど、どうしたのヴォルア?」
メイアは怖い顔になり、独り言を言っているヴォルアが心配になり、声をかける。すると
「え!?いや!なんでもないよ!!」
といつもの感じに戻った。
「そう?じゃああのスライムのこと聞いていい?」
ヴォルアのことが気になったが、メイアはスライムのことに話を戻した。
「あ、ああ、スライムは基本的には無の国に存在している生物なんだ」
「無の国?」
首を傾げ、ヴォルアに質問した。
「うん、この世界は2つ存在しているといわれている」
「1つは僕たちが住んでいるこの世界。そして魔の者が住む無の国と呼ばれる世界」
「なんで2つも世界があるの?」
メイアは興味津々にヴォルアの話を聞き入った。
「そうだね。じゃあこの世界のおとぎ話を話そうかなっとその前に休憩しようか。」
「うん!」
ヴォルアは近くにあった丸太に腰かけた。メイアもヴォルアの目の前にある丸太にちょこんと腰を掛けた。
「ヴォルア!早く!」
「わかったよ。慌てないで」
急かすメイアに微笑し、ヴォルアは口を開けた。
「むかしむかしあるところに2人の神様がいました───」
少し悲しい表情をしていたヴォルアにメイアは気づいていなかった。
……
…………
………………
むかしむかしあるところに、2人の神様がいました。
虹を司ると言われている神───メサイア
無を司ると言われている神───タナトス
メサイアとタナトスは虹の国、無の国の絶対的な唯一神でした。
元々の敵対した理由は遠い記憶に忘れ去られた。
だが、2つの国は戦い続ける。それに意味がないというのに。
多くの民がこの戦いで死んだ。2人はこれが許せなかったのです。
2人は一騎打ちをすることで戦いを終わらせることに同意し、一騎打ちをしました。
戦いは凄まじく、新たな宇宙が生まれては破壊され、それが永遠と繰り返されるような戦いでした。
そして2人の戦いは決着がつくことがなく力をほとんど使ってしまいました。
タナトスは残った力を使い、無の国に逃げ、メサイアは残った力を使い、自らの体を星の形に変えて1つ星が生まれました。
それからメサイアとタナトスは出会ったことは未だにないのでした。
◇ ◇ ◇
「これがこの世界のおとぎ話だよ」
「それがさっきのスライムとどんな関係があるの?」
丸太から立ち、ヴォルアのところにやってきてメイアは聞いた。
「直接は関係していない、でもこの星は虹の神メサイア自身なんだ。だというのに無の国の者たちがいるなんてありえない」
ありえないがヴォルアが考えていることが正しいならこのありえないことがありえることになる。
(もし、無の神タナトスが本来の力を取り戻しつつあるのなら…)
ヴォルアはこのことをメイアに話すつもりはなかった。
「ま、どうなってるのかわかんないけどね」
「そっか~」
そらを見上げながらメイアは言った。
「そういえばさ~」
「どうしたの?メイア」
ヴォルアはメイアのほうに振り返った。
「あのスライムどうするの?」
メイアはスライムのほうを指さしていた。
「そうだな~」
スライム自体は無害だが存在自体、異常なことなのでほかの人たちの不安を煽りたくない。
本来なら消滅させたほうがいいのだが、メイアの前でそれをしていいのかと悩むヴォルア。
(さて、どうしたものか)
と、考えていたヴォルアだったが、
「あれ!?スライムどこ!?」
ヴォルアは声の主であるメイアのほうを向いた。そこにはスライムの姿はなかった。
メイアは「どこ!?どこにいるの!?」といいながらきょろきょろしていた。
「たぶん、森の中に入ったんだろうね。入りすぎると帰ってこれなくなるから探すのはやめよう」
スライムを始末せずに済んだヴォルアはほっとした。
(一応、連絡しておくか)
そう思いながらヴォルアはポーチから紙を取り出し、この出来事を書きこみ、折りたたんだ。
紙を左手で持ち、右手で指を鳴らした。そうすると、
「あ、あれなんですか!?」
空を飛んでるそれにメイアは気づき、指を指していた。
そこには猛スピードでヴォルアたちに向かう1匹の黒い鳥がいた。
「おいで」
そう言って手を伸ばしたヴォルアの腕に鳥は止まった。
「メイア、これをこの子の足につけてもらえる?」
そういった手紙をメイアに渡した。
「わ、わかった」
びっくりした様子だったが、メイアは言うとおりにしてくれた。
メイアは手紙を鳥の足に結んだ。
「こんな感じでいい?」
「ああ、ありがとう」
「こんなことお安いごようだよ!」
メイアは照れながら言った。
「これをあの子のところに届けてもらえる?」
そう右手に止まっている鳥に言うと、その言葉を理解したのか羽を大きく広げ空へと飛んだ。
「ほえ~」
メイアは口を開けてぼーっとして、脳が追い付いていなかった。
「あの鳥は一体…」
ようやく脳が追い付いて、ヴォルアは聞いていた。
「んー。まあ分かりやすく言うと飼ってる鳥さんかな?」
微笑しながらそう答えた。そうしていると、
「え、また?」
空を見上げるとさっきの黒い鳥ではなく、赤い鳥がヴォルアのほうに向かっていた。
「え!ええ!?」
慌てるメイア、ヴォルアは何をしたかというと、
また右手を出し、
「おいで」
そう言っていた。
赤い鳥がその右腕に止まった、その足には手紙が結ばれていた。
右手を下ろし鳥を地面に移動させ、その手紙を取り、メイアが見えない高さで広げた。
そこには──────