任務中に幼女を拾った 2話 少女に餌やり
男は幼女を連れていくことを決めたが、迷っていた。
(んー、でもどうしようかな)
男は腕を組み考えた。
(やっぱり、名前がないのは不便だよなー)
(でも、これは本人に頑張ってもらうしかないか)
男の考えは決まった。
「ねぇ、君?」
「!!?」
幼女は走って木の後ろに隠れてしまった。その様子を見た男は、少女が自分のことを警戒していると察し
「ご、ごめん! 警戒しなくてもいいから!」
男は慌てて幼女の警戒を解くことに決めた。これは今やらなければいけないと感じたからだ。
そう思ったのだが、
(う、うーん…)
それから10分がたった。
いまだに幼女は男のことを警戒している。だが、こうしているのも時間がもったいない考えた男は本題に移ることにした。
「さ、さっきの質問だけど、少し大変かもしれないけど、名前を思い出してはもらえないかな?」
男は記憶喪失になったと思われる幼女に自身の名前を思い出してほしいとお願いをした。
男は幼女に名前を聞く必要があった。
1つ目、ミクセル王国に行方不明の届け出が出ているとき名前がわからないと不便ということ。
2つ目、この幼女を呼ぶときに不便ということ。
これが今、男が幼女に名前を聞く理由だった。
だが、幼女は男の質問に答えない。
(んー、これだけ警戒されててもな―、困ったな)
男は再び考えた。どうすればこの幼女の警戒心を軽減することができるのかと。
そして、男はあることを思い出した。
(そーいえば、ワーニンとの出会いも最初はものすごい警戒されていたんだよなー)
思い出していたのは男がよく使う宿屋<デビット>の宿主の娘、ワーニンとの初めての出会いだった。
男とワーニンの出会いは今から1年ぐらい前のことだった─────
◇
男は、こことは違うある森の調査をしていた。その時、遠くから悲鳴のようなものが耳に入った。
それに気づいた男はすぐさま『β』を使い、周りを分析した。
その結果、少し遠い森の中で小さな人の形1つとそれを取り囲むように大きな人の形を3つを見つけ出した。
『α!』
男は『β』とは別に自分以外の時間を最大で10分の1にすることができる能力『α』を持っている。
男は自分以外の時間を10分の1してその声のしたところに急行した。
それから大体、男からして5分がたった。
ヴォルアは『α』おかげですぐにその現場に駆けつけることができた。
だが、
目の前には小さな女の子に刃物を刺そうとしている3人組の盗賊らしき男たちを見つけた。
(な、!間に合わない!!)
(そうだ!一応セーブはしておいて!)
男は今いる時点の場所にセーブした。そして、男は手の平に闇エネルギーの物質を構成し、それをぶつけて攻撃する能力『シャドウボール』を発動し、
『シャドウボールっ』
さらに、自分の速度を最大で10倍にすることができる能力『アクセル』を発動した。
『アクセル!!』
(間に合え!!)
『α』と『アクセル』の同時発動のおかげで、男は刺されそうにしている女の子の前に立ちはだかり『α』を解除した。
「なんだ!?」
「どこから現れたんだ!?」
「な、なんだよ!!」
3人組の盗賊は男がいきなり現れたことに驚いている。
男はそんな言葉は気にせずに────
「うるせぇぇぇええええ!!!」
男は刃物を持っていた、少し太っている盗賊に向かって発動しておいた『シャドウボール』を食らわせた。
「ぎゃぁああああああ」
と悲鳴をあげながら太った男は近くにあった木まで吹き飛ばされ、「ば、ばか、な、、、」と言い、気を失った。
「ひぃ!」
「な、なんだ!?」
その光景を見た、残った2人は男に恐怖していた。
「まだやるか?」
と男は再び『シャドウボール』を発動させ、尋ねた。
「く、くそ!!」
「ふざけんじゃねぇ!」
盗賊の2人は懐から刃物だし、男に攻撃してきた。
(ま、まずいな、調査で力を結構使ったし、『α』と『アクセル』の同時発動は体にかかる負担が結構重いんだよな)
(くそ、これなら調査をさぼっておけばよかったな)
男はそんなことを思いながら2人の攻撃をかわし続けた。
「な、なんで当たらねぇんだ!」
「なんだよ!こいつ!」
(この程度か、これなら余裕だな)
男がほんの少し気を抜いた瞬間。
「死ねぇぇえええ!!」
(っ!!な、なに!?)
シャドウボールを食らわせた太った盗賊が男の背後に回り込んでいた。
(し、しまっ、!!)
グサっ!
盗賊の刃物が男の背中を刺した。
「くっ!!がはっ!」
男は血を吐き倒れ、そのすきに盗賊の3人は男の背中を刺し続けた。
「ひゃっは!!」
「ザコがよぉ!!」
「調子乗んなよ!」
そんなことを聞きながら男は、ある魔法を発動した。
だが、男は死んだ。
「死んだか…」
「あ、あぁ」
「さあ、本日のメインディッシュといきますかねぇ」
死んだのを確認した2人の盗賊は標的を女の子へ向けた。
「次は、お前の番だ」
「いい悲鳴を期待してますよ!」
「ふふふっ」
と太った盗賊が刃物を持っている腕を上げ、女の子が目を閉じた瞬間。
「ぎゃぁぁああああ」
どんっ!!!
誰かの悲鳴と何かと何かがぶつかった音が聞こえた。
その声にびっくりした女の子がとっさに目を開けた。
そこには1人の盗賊の姿が消えていた。うえぇと声が聞こえ、少女はその方向を見た。
「っ!!」
びっくりするのも当然だった。なぜなら刺そうとしていた太った盗賊は近くにある木にもたれ掛かり再び気を失っていたからだ。
「お、おい!」
「大丈夫か!」
残った2人が心配の声をかけながら気を失っている盗賊に近づいた。
「死んでないよ。手加減したからね」
突如、森の中から声が聞こえた。
2人の盗賊はすぐに振り向き、
「だ、だれだ!」
「どこにいる!」
と声がした、森の中に向けて叫んだ。
声の主は森の中を歩く。
そして声の主は森から姿を表した。
「な、!」
「ば、ばかな!」
2人が驚いたのもそのはずだ。それもそのはず、その声の正体は先ほど死んだはずの男がいた。
2人はとっさに男が死んだはずのところを見た。
だが、そこには男の姿はなかった。
「ど、どうなってやがる!」
盗賊の1人が叫んだ。
「さっきの借りは返してもらう」
と言いながら手の上で『シャドウボール』を発動させた。
『シャドウボール!』
男は、2人にこう脅した。
『生きて帰れると思うなよ?』
「く、くそが!」
「ざけんな!」
と言い、残った2人の盗賊は我が先と言わんばかりに走って逃げて行った。
「たくっ、逃げるなら最初からするなよな」
男は『シャドウボール』を解除しながら、独り言をつぶやいた。
「っと、そこの君、大丈、夫かい?」
男は後ろにいた女の子に声をかけたが、木にもたれながら自分の体を温めるようにしながら震えていた。
「ね、ねぇ?」
男は女の子の肩に軽く触った瞬間───
「っっ!!!」
女の子は体をびくびくと震わせたのだ。男の攻撃を見て、さらに怯えてしまったらしい。
「これは参ったなぁ」
男はこれ以上怯えてもらいたくないと考え、なにかいいものがないかと腕を組み、考えた。
(そうだ!確か!)
男は腰につけてたポーチからあるものを探した。
(これだ!)
男はポーチからそれを取り出し、女の子に渡した。
「これ、君にあげるよ」
女の子に少し顔を上げて、それを見て目を大きくした。「本当に、いいの?」と聞いてくるように男の顔を見た。
「いいよ、あげるから」
男は笑顔でそう言うと、女の子は男の手からそれを受け取り、口に運んだ。
(いやー、任務に行くとき用に、チョコレート持ってきておいてよかったぁ)
そう、男が女の子に渡したのは、チョコレートだった。
「おいしい?」
女の子は男の質問に頭を軽く縦に振った。
「そう、それはよかった。」
男は安堵した。もう怯えることはない、と思ったからだ。
「俺の名前はヴォルアっていうんだ。君は?」
男は名前を教え、女の子にも尋ねた。
「ワ、ワーニン」
女の子は聞こえるかわからない声でそう答えた。
「そうか、ワーニンって名前なんだね。教えてくれてありがとう」
ヴォルアはワーニンの頭を優しく撫でながら、そう答えた。
これがヴォルアとワーニンの初めての出会いだった────