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異世界へ

俺、松寺楠生は今日高校生になる。入学式に対して期待をしていた俺がいた。中学の間に全く青春らしいことが出来ていないことに気が付いた俺は高校こそは青春をすると思っていたのだ。校門を通ろうとすると後ろから衝撃を受けた。

「あ、ごめんなさい。」

「こちらこそ。」

あまりの出来事に驚く半面、なぜか俺は喜んでいた。ラブコメ的な展開だと思ったのだろうか。

教室の席に着く。みんな初対面で気まずい空気が流れる。後ろの席には朝あった彼女がいた。

「あ、今日の朝の。」

それだけしか彼女には言われなかったが勝手に俺は喜んでいた。

あ、名前を聞くのを忘れたと気が付いたがもう一度聞いても不審がられると思い控えた。

そんなときどすどすと入ってきた人がいた。女性教師。とても美人で、馬鹿そうな男子が目をハートにしていた。もちろん俺はそんなこと無...やっぱり俺の目もハートになっていた。

「お前らには異世界に行ってもらう。」

なんだろう。どこかで見たことのある景色だ。

◇◇◇

目が覚めると周りは平原となっていた。青い空。本当に異世界かもしれない。明らかに異様な景色に生徒たちは驚いていた。ここはどこか、なんでいきなり、なぜ自分たちが。

なんというか。ものすごいテンプレなのだ。この最高な展開に一人胸を躍らせていた。

「お前らのステータスをここで確認してもらう。」

なぜだろうか。俺だけ役職欄が黒に塗りつぶされている。まさかチート能力ってやつじゃないか?

俺はわくわくして手を挙げる。

「あの。役職欄が黒く塗りつぶされているんですが。」

「ああ。それは役職暗殺者の特徴だな。」

暗殺者?チート能力ではなさそうだが...。おそらく強いに決まっているのだ。クラスの中で暗殺者は俺しかいなさそうだ。

「先生!暗殺者というのはどんな職業ですか?」

「暗殺者っていうのはな。対人戦を得意としていて最強とも言われる役職の一つだ。」

まじか。最強。俺のチートハーレムライフが来るか。来い。

「微量だが自己回復に加えて、透明化、透視ができたり、主にナイフやワイヤーでの攻撃をおこなう。ただし防御力は低めだ。」

なんだろう。最強要素しかない。透明が強すぎるんじゃないか。

「あ、けどな。私が倒してほしい魔王の部下たちは当たり前だがモンスターたちだ。透明化は上級モンスターには効き目はない。音や熱などで一瞬でばれる。また上級モンスターにはあまりナイフやワイヤーの効き目はない。」

ええ...。待って詰んだ。俺は異世界でも悲しい立ち位置なのか。

「ダンジョンでの透視自体はとても強力だ。」

俺の役割は透視に限定される模様だ。

◇◇◇

あれから何年たったのだろうか。異世界には時計なんてありはしないからよくわからなくなる。

俺はとにかくコツコツとレベルを上げた。少しずつ下級モンスターを狩りつつ、上級モンスターのいる場所を教えては逃げ、教えては逃げを繰り返していた。レベルは60。上級モンスターのほうが経験値は豊富なのだ。しかし、俺がレベルを60まで上げて皆についていけたのは大量のポーションのおかげだった。対人戦のコロシアムで俺は勝利を重ね、金を沢山儲けていたのだ。

「おい。どこに上級モンスターがいるんだよ。早く言えよ。」

おいおい。俺は仮にも同級生なのだ。その言い方はないだろ。いくらレベルが高くても対人戦以外ではお荷物でしかなかったので透視だけが仕事だった。クラスメイトの中には俺に対して不満を抱くものも多かった。活躍もしていないのに金とレベルだけが上がっていく俺に対する嫉妬だ。

「あ、あそこに上位モンスターが。相当上位じゃないか?というかデカい。」

明らかに近くに言ってはいけないと言わんばかりのオーラの漂うシルエットが見える。あれはなんだ。おそらくゴブリン?いや、一回り大きいな。

「ひとまず左に曲がろう。右のモンスターには関わらないほうがよさそうだ。」

今来ているのはクロエイロ洞窟といって難易度の低いモンスターが多く、しかし構造が複雑であり、奥に武器が眠っているとのことだった。まぁ先生の言うことが正しければ。こんな洞窟にいないはずの明らかに高難易度モンスターが俺には見えている。しかもだ。今洞窟に調査で向かっているメンバーは俺意外レベルが40代なのだ。

「おいお前らなんでそっちに行くんだ。」

なんと彼らは俺の話を無視して右に進んでいく。異世界に来て活躍どころか絶叫のパシリポジの俺はだめってついていく。

「前から思ってたんだけどさぁ。お前調子乗るなよ。あんまり。」

奥の方から目のようなものが真っ赤に輝く。暗闇から姿を現したのは肌の緑色の大きな男。頑丈そうな鎧に身を包んでいた。ゴブリンではない。ゴブリンの上級版か?

「おお。本当にいるんだな。暗殺者って。まぁいいや。」

このゴブリンしゃべる。言語を使えるゴブリンといえば...。

「まさか...」

「ここにおられる方は魔王軍幹部のビルドゴブリン様だ。」

魔王軍幹部は全部で六体いてそれぞれが超強敵であると先生が言っていた。ビルドゴブリンの特徴は映し鏡と言って、見る人間の持つ不満の大きさだけより強力な外見にとらえられたり、ビルドゴブリンに対する服従心が強くなる。それだけではなく単純な腕力なども強力であるらしい。おそらくこいつらはビルドゴブリンにそそのかされたのだろう。

「ビルドゴブリン様はおっしゃたのだ。がんばっている俺たちのレベルがこんなに低くなるはずがないと、また先生のことを信用してはいけないと。異世界に連れてこられた恐怖を慰めてくださった。」

おそらくそれは慰められたんじゃなくて利用されたの間違いなのでは...

それは置いといて絶望的な状況なのはわかったほかのメンツは皆ビルドゴブリンに洗脳されていて、ビルドゴブリン自体もとても強いと。そして俺は対人戦以外ではめっぽう弱いのだ。

「逃げる以外の選択肢があるわけないだろ!」

俺は走り出す。透視能力で洞窟の奥にある剣の場所がわかっていた。あの剣があればなんとか対抗できるのかもしれない。剣にある方へダッシュだ!

「なんて愚かな奴だ。ビルドゴブリン様の目の前でのご無礼。許さない。」

「いいんだ。俺はあまり気にしていない。」

ビルドゴブリンはあまり気にしていないといいつつ、殺意のオーラを隠しきれていなかった。俺は暗殺者だ。素早さ全振りみたいなところがあるからビルドゴブリンから全速力で逃げることが出来ていた。

剣のある場所を見つけた。

「え?」

思わず声が出た。そこは鉱石たちでできた美しい空間が広がっていてその中心には勇者の剣っぽい剣が刺さっていた。

「はぁはぁ。見つけたぞ。死んでもらおうとするか。」

後からビルドゴブリンはやってきた。俺はかっこつけてこう言う。

「ビルドゴブリンよ。この剣が見えるか!」

俺は剣を引き抜こうとする。すると目の前が光り輝いて...

◇◇◇

「八ツ!」

目が覚めると暗いところにいた。どこだろうか。どうやら路地で寝込んでいたようだ。散乱したゴミ。捨てられた空き缶。倒れ掛かった自販機。ここはどこだろうか。いや。まさか。そう。俺は異世界から戻ってきたのだ。路地を抜けると見覚えのある道が広がっている。俺の住んでいた町。昔よく通っていたラーメン屋は理髪店になっていた。一人で時々悲しくブランコに乗っていた公園には新しい遊具が設置されていた。そして俺の家があったところには学習塾が出来ていた。学習塾に入りここの前にあった建物を聞いた。若そうな職員は少し首を傾げ、塾長を連れてくると言った。

「楠生なの?本当に?」

塾長として呼ばれ出てきたのは俺の姉である、松寺心だった。

姉は警察を呼び、俺は警察に様々な質問を受けた。異世界に行ったことを話すと警察は不思議に思い、心配の目を俺に向けてきた。誘拐の恐怖による精神の崩壊ということにされた。姉の話だと、三年前に同時に高校一年の生徒34名と高校教師一名が行方不明になるという事件が起きたのだ。そしてこの事件の不可解な点はそれぞれの生徒が全員違う学校の生徒だったのだ。今までクラスメイトだと思って異世界でいたやつらはクラスメイトでもなんでもないのかもしれない。誘拐事件と言われている話などから俺は異世界に行った妄想をしているのではないかと俺自身が気が付いた。上手くできすぎた異世界だった。半チート能力だし、妙にリアリティがあるのはおそらく読んだラノベの影響でもあるだろう。

誘拐事件の被害者である俺は新聞の一面を飾り、時の人となった。そんな俺に姉はこんなことを言い出した。

「青春やり直さない?」

内容は簡単だった。大学に行くために高校の勉強を姉が塾長を務めている塾でしないかという話だ。その中には俺と一緒で高校の間青春を満喫できていない子もいるだとか。まぁ断る理由もないので俺は軽く承諾した。転移者の俺の青春が今やり直される。

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