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大抵悪役の脇役のボスはしょうもないおじさんだ

「メガ!今すぐ出てこい!出てこないとこのドアを破壊するぞ!」


その声は男の声だがメガには聞き覚えのない声だった。


「ど…どなたですか?」


メガはビビリながらも思い切って聞いてみた。


「クサイ町長の使いのものだ!お前がクサイ町長の自宅に押し入り金品を盗んだのはわかっている!観念して出て来い!」


「え…あ…う…」


メガはもうどうしようもなくなったのか言葉も出ずに立ちすくんだ。


「出てこないなら…!!」


―ドン!!!!


すごい音を立ててドアの板が室内に倒れてきて、ほこりを巻き上げた。


「あ…鍵、開いてたのに…。」

メガはボソッと言った。

「え?」

それを聞いたドアを蹴破った警備兵のような若い男は一瞬顔が引きつった。

後ろにいた10人の兵達もピコやアトも一瞬固まった。

あたりにはグルーチョのいびきだけが響いていた。

「…そ、それはともかく!盗んだ物は何処へやった!」

「それは…」

メガは苦い顔をして一歩後退した。

その警備兵は後ろの6人に手でぱっと合図をすると警備兵達が家の中を捜し始めた。

「そうやって隠していると、罪は重くなるぞさぁはや…」

「ありました!!!!」

リーダーらしきその男がメガにぐだぐだと脅し文句を言おうとしていた矢先に部下が頑丈な金属の箱の中にあるお金を見て言い放った。

「早!?…お前、もうちょっと空気読めよ!!」

男は部下に向かってどなった。

「も…申し訳ございません!!」

部下は焦って男に頭を下げるとすぐに持っていた箱を男の目の前に運んできた。

「観念しろ!」

男は呆然としているメガに歩み寄ると腕に手錠をはめた。

メガは暗い表情のまま押し黙っている。

「お前達も仲間か?…にしては子供に…じいさん?」

男は手錠をはめたメガを部下に押しやるとピコ達の方へ歩み寄ってきた。

ピコはビビっていたが、未だにグルーチョはいびきをかいて寝ている。

「彼女らは違う!その盗んだものの一部が彼女達の金なんだ!返してやってくれ!」

メガはその男に気丈に叫んだ。

「ふん、そうやって仲間を助けようってんだな。甘いわ!」

男は部下に指示をするとピコとアトを捕えさせた。

「やだ!ちょっと!私達悪いことなんてしてないんだから!!」

「無礼です!お触りにならないでください!」

ピコとアトは抵抗をするも少女の身では大人の男に叶うはずもなかった。

「やだ!!??誰か胸触った!!!???」

ピコは一瞬びっくりして身を庇った。

兵達は取り囲っていた手を一瞬緩めたがすぐに二人の兵が両腕を掴んで身動きは取れなくなった。


―がたん!!


その時、椅子が倒れて大きな音をたてた。

それはグルーチョの座っていた椅子だった。

当のグルーチョは立ち上がり拳を握ってわなわなと震えていた。

グルーチョはピコの方へ歩みよってきた。


―ぺちょん…


その拳はピコを捕えていた兵士の頬に当たったが蚊が刺すほどの攻撃にもならなかった。


「テラの胸はワシのもんじゃぁ!!!!」


グルーチョは顔を赤くしながらゆっくりと叫んだ。

その額は机に伏せて寝ていたせいか痕がくっきり付いてさらに赤くなっている。


その声が家に響き渡ると一気に静まり返った。


「お、おじいちゃん。」

ピコは顔を真っ赤にしてうなだれた。

恥かしくてしかたがなかった。

その様子を見て男はグルーチョに歩み寄った。

「じいさん。一緒に来てもらうよ。」

男は冷静に言った。

兵士達はその男の発言に一瞬動揺したがそれに従うように一人の兵士がグルーチョの後ろに回って肩を掴んだ。

「なんじゃ、肩もみでもしてくれるんかい?」

グルーチョはさっきまで興奮していたのを忘れたようにのほほんとした顔で言った。

その様子に後ろに立っている兵士は困った。

「優しく頼むよ。孫は力ばっか強くて痛いんだ。」

「ちょ!……」

ピコは困ったようにさらに顔を赤くした。

兵士は混乱したのかグルーチョの肩を揉んでいる。

「おい!肩もみなんかしてないで、行くぞ!!」

「は…はい!!」

男の冷静な言葉で、兵士はやっと正気に戻った。

 一同はグルーチョのゆったりとした動きにあわせて馬車まで歩いた。

4人を檻のような馬車に入れ動き出した。



「ちょ…ちょっと…」

ピコの声が虚しく地下牢に響き渡った。

4人は4人とも同じ牢屋に入れられてしまった。

兵士達は牢屋の入り口まで戻り能天気に世間話をしていた。

ピコは切ない声でずっとその兵士に声をかけようとして牢屋の鉄格子から手を伸ばしている。

「お止めになったら?どうせ聞く耳を持たないんですもの。」

アトの方は牢屋の真ん中で腕組みをしていた。

その顔から焦りは感じられない。

「でもぉ…。」

ピコはまた泣きそうな顔をしてアトを見つめた。

「う…泣かないでください。なんとかなりますから…。」

アトはピコを少し励ますとその鉄格子に近づいて見た。

ため息を一つ付いた。

「まったく、舐められたものですわね。こんな鉄格子…。」

アトは鉄格子に掌を触れるか触れないか程の距離でかざし始めた。

「…ま…待って!」

それを言ったのはメガだった。

アトは少し驚いて手を下ろしてメガの方を見た。

「なんですの?」

「様子を見ないか?勝手で申し訳ないが。この町の連中で捕まった人間が何人もいるんだ。なのにここの地下牢に入っているのは俺たちだけみたいだし、何か秘密が掴めれば…。」

メガはボソボソと囁く様に言うとアトとピコを見た。

そしてグルーチョを見たが、もうすっかり横になってグーグーいびきをかいていたので視線を少女二人に向けた。

アトとピコはお互いに顔を見合わせるとメガに頷いてみせた。


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