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影を背負った美少年なんてまずいないわ…

「あ…あのぉ…」

ピコとアトはその場でピコがいざというとき用に持っていたロープで男をグルグル巻きにした。

男はなす術もなく地面に転がった。

そんな様子を見ていた酒屋の親父はなぜか大爆笑していた。

「お金返しなさいよ!」

ピコはすごい形相で言った。

アトも同じように男を見下ろしている。

グルーチョは…こんな状況であるのに未だに窓際の席でコクリコクリと居眠りをしている。

確かに老人が眠る時間ではあるようだ。

「か!返します!返しますからほどいて!」

男は必死でごろごろと転がりながら叫んだ。

「あはははは!お嬢ちゃんたちそこらでよしといてやんな。そいつは悪気があったわけじゃないと思うぜ。」

その時酒屋の親父がやっととめに入った。

まだ大笑いしているが。

「悪気がないって!?泥棒なんですよ!」

ピコはそのままの形相で親父に迫った。

「…そんなにおこりなさんな。こいつはこいつなりに町の連中を助けるために盗みをやってるんだ。お嬢ちゃん達の話を聞いてるとおそらくちょっとした手違いが起こったんだろう?」

親父は冷静に二人の怒りを静めようと笑顔を浮かべて話した。

ピコとアトは顔を見合わせるとピコが男のロープを解いてやった。

 「で…なんで盗みを?」

ピコはため息を付きながらカウンター席に再び座った男とカウンターの向こうの親父に聞いた。

「こいつが盗みに入ったのはここの自治をやってる連中だ。」

親父が男の酒を注ぎながら言った。

「自治?」

ピコはその男の横の椅子に腰掛けながら言った。

「あぁ、この町は城とはかなり遠いから、一旦町長が税金を集めて収めるんだが…。」

男は話すのを止めて注いでくれた酒をぐいっと飲んだ。

「前の町長は魔王の進行で防衛魔法を張る前の調査で亡くなってしまって、今の町長が城下町の方から派遣されてきたんだよ。」

それから親父と男はかわるがわる説明した。

どうやら要約すると今の町長は悪いやつで税金を水増しして徴収していい思いをしているんだとか。

町民はその町長の横暴に抗議に行くも帰ってこなかった者もいて、怯えて何も言えなくなってしまった。

そのせいで町からは人がいなくなっていったのだという。

そこでこの町で人々に疎まれながら生活していた男、メガは自分を町の人間に認めてもらいたいと思い、町長から巻き上げられた金を取り戻そうと何度か忍び込み金品を盗んでいたらしい。

盗むという行為は許されることではないかもしれないが、彼の盗んできた金品を換金して町民に配ることで彼らの生活は助かったのだという。

しかし、今日は首尾よくいかず、初めて見つかってしまいそこへピコ達が居合わせた。

ピコとメガはぶつかって、ぶちまけてしまった金品に金塊が紛れて間違えて持っていってしまったということだった。

「そっか…でもなんで貴方が町民から疎まれていたの?」

ピコはその話を納得してメガの顔を覗き見た。

「…あぁ…この髪と目めずらしいだろ?それに…。」

メガはそう言うと肩までの横髪を持ち上げた。

その奥には耳が見えた。

しかし彼の耳は少し違っていた。

長細くてとんがった耳をしていた。

妖精の耳のようだと言うとわかりやすいだろう。

「この耳が決定的だな。俺は魔物と人間のハーフらしい。」

そういうとメガは少しだけ悲しそうに笑った。

それを見たピコは少しドキッとした。

さっきまでロープでぐるぐる巻きにしていたとは思えない。

「あぁ、ごめんね。換金した金塊の分はもちろん返すから安心して。」

メガは泥棒をしているとは思えないほど優しく笑った。

ピコの心臓はバクバクと大きく打ち始めた。

「…そう…(なんで泥棒にときめくんだよ!)」

ピコは何となく冷や汗を流しながらそれを受け入れた。

アトは真顔でピコの様子をジーっと見ていた。

「今はまだ家にあるんだ。だから…ここで待ってる?」

「おいおい。お前の家まで行って戻ってきたら閉まる時間だぜ」

親父は時計を指差して言った。

今は夜の10時半くらいで店は11時に閉まる。

どうやら往復では30分以上はかかるらしい。

「あぁ…そうだった。女の子外で待たすのもなんだし、一緒に来る?」

「はい!行きます。」

ピコは即答で答えた。

その返答にアトは呆れながらも従うことにした。


 メガの家へ向かう途中4人はグルーチョ達がこの町に来た理由を話した。

アトは話すことに乗り気ではなかったようだが、ピコはなんだかウキウキとした気分でいた。

「じゃぁ、このおじいさんが勇者なの!?」

「えぇ…無茶な話ですよね。」

メガとピコはそんな会話をしているとやっとメガの家らしき木の家が見えた。

その場所は本当に町のはずれで、もう獣魔の森のすぐ近くで鬱蒼としている。

小さい木の家で人が一人住むにはちょうどいいくらいだろう。

「う…。」

アトはピコにしがみついていた。

内心どうして付いてきてしまったのだろうと後悔していた。

「大丈夫だよ。今灯りつけるから。」

そう言うとメガは中に入ってマッチでランプをいくつかつけると天井から吊るしてある金具に引っ掛けていった。

「どうぞ。」

メガはそう言うと、入ってすぐのところにあった丸いテーブルに3人を導いた。

椅子はもともと一つしかなかった。

メガはその一つにグルーチョを座らせた。

そして、さっと台所の奥にある物置に行って、木を切って少し加工したような簡単な椅子を二つ出してきた。

ピコとアトにそこに座らせるとテーブルから少し離れたベッドに横にうつ伏せになった。

窓とベッドの間にある何かを取ろうとしているようだ。

それは頑丈な金属で出来たような鍵のかけられる箱のようだ。

メガはそれを取り出すと床に置いて開けて見せた。

その中には大量のお札や硬貨が入っており、ピコとアトは驚いた。

グルーチョはと言うと見事に机につっぷしていびきをかいていた。

「全部一緒に換金しちゃったからどのくらいがその金塊の分かわからないんだけど…。そういえば、質屋にどれがどのくらいか書いてもらったんだ…。」

メガはそう言って箱の蓋のポケットに入っていた紙切れを見ていた。


―ドン!ドン!ドン!


その時のことだった。

メガの家のドアを激しくノックする音が聞こえた。

メガは一瞬ビクッとして箱を閉めて再びベッドの向こう側に戻した。


次の更新は問題なければ木曜更新します。

以降しばらく月木更新になります。

書き溜めにおいついてきたら週一で考えています。

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