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自分の秘密を知られるのは誰だって嫌だよね

遅くなりました。


私事というかちょっと動画のアップとかもしてましてそっちでバタバタしてたらこっちがおろそかになっちゃいました。

すみません。


 「終ったわよ。」

その声はノイアだった。

アトとハーンの修行の間はほんの20分程度だっただろうが、疲れていたメガはソファでうとうとと寝てしまっていた。

エリフィエルはその間グルーチョの寝姿を色んな角度から見ていたらしい。

ノイアの声で目を覚ましたメガはアトがあくびをしながらメガの隣に座ったのに気が付いた。

「まだそんなに夜遅くないから、修行しようか?」

「あ…はい。」

メガはそう言うと立ち上がりノイアとヂャメンが先を行くのを追った。

部屋を出る前にアトを見るとアトがそれに気が付いた。

「いってらっしゃいませ~…おやすみなさ~い。」

いつものハキハキとしたアトの口調とは違い伸びきった年齢通り可愛い雰囲気でそのままソファにコテンと横になってしまった。

その向かいのソファにはハーンが静かに座っていた。

エリフィエルがその近くをヒラヒラ舞っている光景が見えた。

「行かないの?」

ノイアがそう言うのでハッとしてメガはその部屋を出た。


 「この方法ならココスレイヤの声を聞けるかも。」

ノイアは準備をしながらわくわくとした声で呟いた。

「何か楽しみみたいな口調ですね。」

ベットに横になったメガは不思議そうにノイアに言った。

それを聞いた本人はニヤっと笑うとベットの横に置かれた椅子に腰掛けた。

ヂャメンは夢見草をセットすると魔方陣の前に立って二人の方を見た。

「じゃ、いくわよ。」

「どんとこい!」

ノイアは何故かテンションが上がって気合が入っていた。

 ヂャメンは魔方陣に向かって両手を広げると言葉のような歌のような、そして笛のような透き通る声を出し始めた。

それは頭の中に響いてくるように、体中に浸透するように世界を包んでいく。


夢見草の香が強くなり気が遠くなる。


ヂャメンの出す音が縛り付けるように体が重くなる。


しかし、まるで何か無数の紐で宙に持ち上げられるような感覚。




―…ピィィン……ピィィン……ピィィン…



ヂャメンの声と呼応するように音が近づいて来る。



―…ピィィン…ピィイイイイイイ!!




あの時と同じだ。


そう思った瞬間だった。




『遅かったな。メガ。』



誰かがそう言った瞬間目を閉じていたと思ったその暗闇の中に光が満ちた。


そして真っ白になった。



『ようこそ。』


その声と共にその真っ白な世界に一つだけボンヤリと自分の体ほどの影が浮かんだ。


影というよりもむしろ月のない夜に見える夜空の色がぽっかりと真っ白い壁に穴が空いて見えているそんな感じだった。

その影の中は水のように揺らめいて星が瞬くように時々キラキラと何かが光っているように見えた。

まさに宇宙を手に取るような影がそこに浮いていた。


『この姿ではわかりにくいか?』


そう、影の方から声がすると影は突然ギュッと縮まって小さくなり、丸い形を示すようにメガに近づいた。

「ココスレイヤ!」

メガはハッとして叫んだ。


『いかにも、皆がそう呼んでいる石ではあるが、私はそこらのココスレイヤとは違う。…さて、話しにくいだろうから最初に私を作り上げた人間の姿を借りるとしようか。』


ココスレイヤはそう言うとその縮こまった石の姿から膨張したと思うと一瞬にして人間のような形になった。

そしてフードを被った男性のようなボンヤリとした姿になり目や鼻や口が浮かんできた。

輪郭がぼやけて、色はそのまま白と黒の人間らしき形と言った所だ。

年はさほどメガとは違わないように見えるが、髪は短くそこらへんにふつうにいそうな好青年に見える。

特徴を一つ言うなら胸に大きな黒い石のペンダントをしており、おそらくそれが彼の持っていたココスレイヤの形だったのだろう。

『どうだ?人間のように見えるか?』

その姿は光を集めて人間の形をかたどったように見える白黒の影にすぎなかったが、メガはうんと頷いてその影はにやっと笑った。

ちょっと怖い。

 『はじめまして…ではないな。二度目か…。まぁいい、私はココスレイヤのイチだ。よろしく。』

「え…あ、僕はメガです。よろしくお願いします。」

メガがふかぶかとお辞儀をするとココスレイヤのイチはそれを見ながら何か考えているようだった。

『まぁ、…あれだ、私はお前のことはよく知っているからして…そんなに畏まる事はない。エルフと人間の子供だということ、双子の片割れだと言うこと、ベータでの生活、あの3人との出会い、…お前が少しMだという事もな。』

「え!?」

メガはイチに言われて真っ赤になった。

何故知っているのかというより自分がMということが知られていると言う恥かしさからだった。

『気にするな。お前の性癖など私からしてみれば可愛らしいものだ。まだ女性との付き合いはないし、あのノイアとかいうサキュバスへの反応といい、なんとまぁ真面目なやつかと思っていたところでな。』

イチは時々意地悪そうにニヤニヤ笑いながら手を振り振り言葉を連ねた。

最初に作った人間の性格なのだろうか…。

「いや…その…あんまり回りに女性と言う女性が居なかったもので…Mなのもマスターがいじってくれたりしてなんかそれが嬉しくて染み付いちゃったっていうか……って、そういえば、ノイアさんは?」

メガはイチに説明をしていて思い出した。

その真っ白な空間にはメガとイチしかいない。

眠る前の説明を軽くしてもらったが、ノイアと一緒に潜ってサポートすると言われていたのだった。

『ああ、あのサキュバスか。申し訳ないが、ここには入れられない。この空間は精神世界と同質で同じ空間と言ってもいいが、ここだけ閉鎖させてもらっている。いわば、私の家のようなものだ。別にここに連れてきてもいいが…どうも夢魔は苦手でな。あの女からいかにもという感じはないが、精神世界を操られるのは気持ちが悪いんでな。』

イチはそういうとメガに向き直った。

『心配するなすぐに返してやる。それに今回こうやってお前と私が繋がったことで絆が強くなった。いつでもお前に声を掛けてやれるようになったはずだ。』

「え?」

イチは少し微笑んだ。メガはイチの言葉が全て夢のようでまだ掴みにくい。

『さぁ、向こうで魔術師と夢魔が心配し始めたようだ。行け。』

イチがそう言って上を指差すとそこには小さな点のような黒が浮かんでいた。


…とそう思った瞬間に黒が白に覆いかぶさって一瞬にして当たりは真っ暗になった。




「メガ!!」


ノイアの叫び声だった。

辺りにはまだ夢見草の香が漂っているが、ヂャメンがそれを片付けていた。

「…よかった。目が覚めたようね。」

ヂャメンは夢見草を片付けて近づいてきたところでメガが目覚めたことに気が付いた。

「何があったの?」

ヂャメンは冷静ながらも心配そうに問うた。

ノイアの方は母が重病の子供を見るような目つきだった。

「…ココスレイヤが…ココスレイヤのイチってやつがいて…ノイアさんはここには来られないって言っていたけど…」

ぽかんとしていたメガの口からポロポロと言葉が零れる。

「へ?」

ヂャメンもノイアもこの答えにはびっくりしていた。


 それから二人にそのココスレイヤのイチとのことについて詳しく話をしているとノイアは少し膨れ面になった。

「何よそれー…心配したんだから…。」

「でもそのココスレイヤは本当に珍しいわね。作った人の姿ってどんな感じだったのかしら?」

ノイアは疲れたような表情だったが、ヂャメンは冷静にそのココスレイヤのイチに興味を示した。

「えっと…魔術師のような格好…フード付きのローブを着た男性で30代前くらいだったような…。髪は短めで…色はわかんないなぁ…白黒だったし…背は俺と同じくらい…でも、なんか普通な感じ?…かな。」

「ふーん…やっぱり、初代東方の賢人かしらね。初代東方の賢人の見た目はまったく冴えない感じだったと本とかにも書いてあるし…。」

ヂャメンのその言葉の後で3人は少し落ち着いて、一息置くと皆が待っているであろう(おそらく寝ているが)リビングに下りることになった。


 時間がたって蝋燭が消え灯りも少なくなったその部屋で案の定アトとグルーチョはすっかり寝ていた。

エリフィエルとハーンが気を利かせたのか毛布が掛けられていた。

大きな長いフカフカのソファなら二人ともそれはぐっすり寝られるだろう。

しかし、そのハーンとエリフィエルは何か二人で話していたようだ。

何故かハーンの顔は熱を持ったように赤く染まっていた。

その雰囲気を遠目に悟ったヂャメンはノイアとメガにまた明日来るようにと告げ帰した。

思い出したように眠気に苛まれたメガはあくびをしながらノイアと帰路に着いた。



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