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男性は遺伝子の影響で浮気をする?…人間なんだから理性もっとこうよ…

「わあああああぁぁぁーーー!!!!????」


その声はノイアの家から響いていた。

パユヴィの者たちはその声に驚き朝から何かが起こったのだろうかと家から飛び出したりなんかしたが、その後は何も起こらなかった。


「な…びっくりした。」


「びっくりしたのはこっちよぉ。」


大声の主はメガであった。

その声にノイアが耳を塞いでいた。

そのノイアはまるで裸のような胸と腰周りを隠しただけの服でメガの横にいた。

メガが朝目を覚ますと隣にセクシーなノイアがおり、顔が目の前にあったのだ。

ノイアはいたずら心で目を覚ましてこないメガを起こそうと声をかけたが、中々起きないので上から飛び乗ったのだ。

その衝撃で目を覚ましたメガはノイアの色香にびっくりして大声を発したのだ。


「そ、その格好は…」


メガは昨日の服でさえ肌が露出しておりクラクラするほどだったのに、ほぼ裸の状態でノイアの色気ではノックアウト寸前だった。

「変かしら?いつも服着るのうっとうしいし、寝るときとか朝のうちはこんなものよ。」

ノイアは不思議そうに言った。

「変とか…そんなことよりも、お、俺も男なんです。上着か何か…。」

メガは焦ってどもっていた。

「あらぁ…これも修行の一環よ。色香に迷わない意思の強い男にならないとね。」

ノイアはそういうとウィンクをしてその場を去った。

 メガはノイアの家の二階にある一室に床を借りていた。

他の子供達は数人ずつで寝ていた。

最近大人になり、ひとり立ちしたお兄さんたちの部屋を一人で借りていた。

ヂャメンの予知から勇者一行の一人がノイアの家に来るかもしれないと聞いてから、片付けをして、部屋を空けておいたのだそうだ。

メガはノイアが出て行った後にさっと着替えを済ますとすぐに一階へ降りた。

そこにはノイアと9人の子供がおり、ご飯を食べ終わった子と今から食べる子がいるようだ。

食べ終わった子はそれぞれ忙しそうにバックを手に持つと家を元気に出て行く。

残ったのは3人ほどだった。

その3人はまだ幼くノイアの助けで食事をしていた。

「皆どこ行くんですか?」

メガはこんな朝早くから彼らがどこにいくのか気になった。

「あぁ、これでも家は子供達を学校に行かせているのよ。こんな小さい村でも親切に教えてくれる先生が居てね。学校って言っても大したものじゃないんだけど…」

ノイアは一番下の子供にお乳をあげようとしながら言った。

その状態を直視できず、メガは目を背けながら聞いた。

「学校…。」

メガは自分が学校というものに行ったことがなかったのでピンと来なかった。

「その、考えたら、ノイアさんって働いているんですか?」

メガはふと疑問に思った。

いくら親切な先生のいる学校だって多少の財産がなければ子供を学校には行かせられない世の中だからだ。

ベータの町でも金銭的に困窮している家庭では子供が学校に行くのは大変なのだ。

「私は…そんなに働くってことはないわね。一応狩猟とかしてはいるけど食べる分程度ね。うちはこの子達の父親達が皆養育費って言って出してくれるのよ。」

ノイアは隠すようなそぶりも見せずに言った。

その顔をチラッと見てメガはまた視線をそらした。

子供が元気にノイアの乳を飲んでいた。

「父親…が…。」

メガは聞いていいのか考えた。

昨日来たばかりだが結局父親にあたる人は帰ってこなかった。

メガが来てちょっと後に一人自分より少し下の女の子が帰ってはきたが。

「私がこんなだからね。皆父親が違うのよ。それでもついねぇ。サキュバスの血ってやつなのかなぁ」

ノイアは悪びれた様子もなく明るく言った。

昨夜子供を紹介される時に少しだけ話を聞いていたメガは考えこんで黙った。

ノイアはサキュバスという魔物なのである。

いわゆる、夢魔と呼ばれるものだ。

サキュバスは男性を魅了し魂やエナジー等を奪うと言われている。

しかし、ノイアはそのようなサキュバスとは異種なのであるという。

そのところについての話はまだよくわからない。

メガも一応魔族についての知識はそれなりにある。

獣魔の森のそばに住んでいたのでそれなりに独学で学んでいた。

 「さ!早く食べちゃいなさい。すぐに修行よ。」

ノイアはそう言うと用意してあったスープとパンを差し出した。

メガはそれに答えて席についた。




 「なんの声?」

その時ピコはシンの家で朝ごはんを食べていた。

隣にはシンと前にはシンの母ミーと父ポンがいた。

食卓には鳥の卵と魚を炒めた料理とパンが並んでいた。

昨日ピコがシンの家に来て不安に思っていたことは取り越し苦労だったようだ。

あのネズミはただのおもちゃ代わりなんだそうだ。

それでもちょっとぞっとはするが…。

 4人は遠くからの雄たけびに目を見張っていたがその後は静寂が場を包んだ。

「昨日のあのお兄ちゃんの声じゃない?ピコさん言ってた…メガっていう…。」

そう言ったのはシンだった。

「なんでそう思うの?」

ピコは不思議そうにシンを見た。

「だって、今までこんな叫び声聞いたことないし。ノイアおばちゃんっていたずらが好きなんだってリアちゃん言っていたから。たぶんノイアおばちゃんのいたずらでびっくりしたんじゃない?」

シンの予想は的確だった。

「はぁ…」

ピコは関心したように息を吐き出した。

「シンは耳も鼻もいいけどそれ以上に勘がいいんですよ。ちなみにリアちゃんって言うのはノイアちゃんの娘よ。」

ミーはにこっと笑って言った。

それを聞いてすぐにシンは食事を終え席を立つとそそくさとバックを手に取りドアのところまで行った。

「え?どこ行くの?」

ピコはシンの行動を見てやっと声をかけた。

「学校だよ!ピコさん、昨日言ったでしょ?僕、学校の特別講師やっているって。」

シンがそう言ったのを聞いてピコは一瞬固まった。

「あぁ!!そうだった。大丈夫、大丈夫!荷物はちゃんと用意はしてあるわ。ハハハ。」

ピコは焦って隣の部屋に飛びこんで荷物を取りすぐに戻ってきた。

それを見たシンはドアを開けて二人は家を出た。

「いってらっしゃい。」

「いってきます。」

シンの両親に見送られて二人はその道を進んでいった。

学校は村の入り口の方へ進み少し小道に入り込んだあたりにある。

位置的には村の入り口から見て真ん中あたりから少し左にある。

 「とりあえず、僕が教えてる講義と空き時間でめいいっぱい教えるからね。」

そう笑顔で言ったシンの顔は人間ではないのは確かだが可愛らしく、師匠には見えないし、学校の先生にも見えなかった。





 朝日が差し込む道の真ん中で彼はゆっくりと体操をしていた。

そのつるつるの頭には日の光が反射し第二の太陽のように輝いていた。


『…わあああああぁぁぁー……』


どこかから聞こえてくる誰かの雄たけびを聞いてその動きを止めた。

「あぁ、マルか…。」

彼はそう言うと再び体操をしていた。

あたりの澄んだ空気を吸い込み、世界と溶け込むように体を動かす。

そのたびに体の中の気が浄化されていくようだった。


 「あれは…グルーチョさんって何している人なの?あの体操すごいわ…。」

アトの耳もとでそう呟いたのはエリフィエルだった。

一番上のエリフィエルの部屋とその下のアトが使わせてもらっている客間は繋がっていたのでそこからやってきたのだろう。

アトはびっくりした気配も見せずにチラッとエリフィエルを見た。

「私はあまり知りませんの。国王陛下にはもう年金生活されていらっしゃるとの話を聞いていましたし、ピコさんの話からも特別なことは…。あの体操がどうかされたんですの?」

エリフィエルはその言葉にアトを見ると言った。

「あなたなら、よく見ればわかると思うんだけど。」

「え?!」

アトはエリフィエルに言われてやっとグルーチョの体操を魔術的な目で見る気になった。

「あ!?」

アトはその時やっとグルーチョの秘密を少し見てしまった気がした。

「そうですわ。だから…でも…あの体操だけでは…。」

アトは考えるようにブツブツと呟いた。

 『朝ごはんよぉ』

突然アトやエリフィエルの頭の中にそれが響いた。

どうやらグルーチョの頭の中にも響いていたらしく彼の動きが止まった。

それはヂャメンであった。

ヂャメンは日の光を浴びたくないからとアトのいる部屋には近づかないし、その上外になど行きたくないのだ。

魔術の使えるものが引きこもりになると、とことん引きこもってしまうのも問題だ。

その声のため一時考えるのを止めエリフィエルと共に下に下りた。

庭は狭いが屋敷は結構でかい。

魔術の道具やらおかしな物がいっぱいあり、日が当たらないためいたるところで物にぶつかりそうになる。

エリフィエルから発せられる明かりでなんとか回避している。

一階までくるとやっといい香が漂ってきた。

アトがその香につばを飲み込んだ頃グルーチョが玄関の方からやってきて少し日の光が差し込んできた。

つるつるの頭で反射した朝日が差し込んできたがすぐに光はおさまりグルーチョが歩いてきた。

アトは再び魔術的な目で見てみた。

「(確かにこれは…)」

アトはほえほえとした笑顔のグルーチョを真剣な目で見ていた。

グルーチョがダイニングに入り、アトとエリフィエルも続いた。

「朝っぱらから作りすぎちゃった。いっぱい食べてね。」

そう言ってヂャメンは黒いフードをかぶったまま料理を並べていた。

お腹はすいてはいるがあまり食べたい気にはならない。

朝だというのに真っ暗な部屋で蝋燭の明かりだけで食事をする。

しかし、ヂャメンの料理はその雰囲気とは反してかなり美味しいのだ。

朝ごはんらしく、サラダとスープにパン、卵と野菜と肉を炒めたものなんかもありそれぞれの量もかなりあるが、あっというまに全部食べてしまっていた。

アトは何か食欲を促進させる薬か何かを入れているのではないかと少しだけ思った。

「ごちそうさまです。ヂャメンさんのごはんは本当に美味しいですねぇ。」

グルーチョは幸せそうな顔で呟いた。

その顔を見たヂャメンは顔を真っ赤にして照れていた。

「そ…そんなこと…ないですよ。…でも…ありがとうございます。」

ヂャメンは黒いフードを被ってはいるものの心は乙女なのかもしれない。

「じゃ、行きましょうか?」

エリフィエルは食事を終えると切り出した。

彼女はフェアリーなので食事をあまり取らなくてもいいらしいが、ヂャメンの料理は美味しいので食べる。

しかし体が小さいため量は米粒数個程度に少ないし、食べるのが非常に遅い。

エリフィエルが食べ終わったのは3人が食べ終わってから数分後だった。

「いってらっしゃい。」

ヂャメンは食器を片付けながら言った。

「え…ヂャメン、行かないの。」

エリフィエルは少しでもヂャメンを外に連れ出したかった。

「い…行かないわよ。今日は夕方来られるお客さんの為に少し準備しなきゃだし…。」

ヂャメンはかなり大きな本音を隠した。

「まったく、少しは日があるうちに外に出ないと魔力バランス崩れるわよ。」

「だ…大丈夫よ…。」

ヂャメンはエリフィエルに顔を合わせない様にしながら呟いた。

そんなヂャメンを見てエリフィエルはため息を付くと外に行く準備をした。

「いってきます。」

「いってらっしゃい。」

グルーチョとアトも準備をしてそれに続いた。

ヂャメンはホッとしたように手を振っていた。

そうとう日の光が苦手なようだ。


「あの子もかわいそうよね。」

エリフィエルはぼそっと呟いた。

家を出て、湖に向かう途中のことだった。

「かわいそう…?」

「あの子色んな種族の血が混じっているから、能力は強いんだけど、その代わりに吸血鬼の血が混じっていて日に当たるのが本能的に怖いと思っちゃっているのよ。相当薄くなっているはずだし、ヂャメンは日に当たってもなんともないはずなんだけどね…。」

エリフィエルは打てば響きまくるタイプだった。

「そうなんですの。あまり、闇に魅入られてしまうとそれはそれで危険ですわね。」

アトはエリフィエルの言葉に考えをめぐらせていた。

尊敬するヂャメンほどの魔術師にも欠点があるのだ。

アトはまだ7歳なのだからもっとあるだろう。

「そういえば、グルーチョさんはどうします?」

ぼーっと景色を眺めていたが、エリフィエルの問いに視線を戻した。

「ワシはその辺りで散歩でもしておるよ。」

案外あっさりとした答えでエリフィエルは少し間をはずしたように一瞬黙った。

ボケ始めているわりにはしっかりして見えた。

「そうですか。」

エリフィエルがそう言った頃に3人は湖の畔に着いた。

そこにはもうすでにハーンが佇んでいた。

3人が来たことに気が付いているのかいないのかぼーっと湖を眺めていた。

「ハーン。」

エリフィエルはハーンに近づいて声をかけた。

「あぁ、…待ってたよ。」

ハーンはゆっくりと答えた。

アトがハーンに近づくとエリフィエルは少し下がった。

「じゃぁ、あとよろしくね。私は一応グルーチョさんについているから。」

「え…あぁ…」

ハーンは言葉すくなにエリフィエルとグルーチョを見送った。

ただ、去っていく背中をしばらく眺めていた。

「あの…よろしくお願いいたします。」

アトはボーっと去っていく二人を眺めていたハーンに声をかけた。

「え?…あぁ、すまん。アト…と言ったか。さぁ、アト、こっちだ。」

ハーンは若干声の貼りがよくなったようだ。

もしかしたらエリフィエルが苦手なのかもしくは…とアトは思った。

 ハーンはアトを畔の小屋に連れてくると着替えを棚から取り出して、アトに着替えさせた。

その着替えは動きやすいような長ズボンと半そでのシャツだった。

「いい家の子だって聞いて、ヂャメンが用意してくれていたんだ。戦いに出るのに結構高級なものを着てくるって言っていたよ。」

「あ…」

アトはやっと場違いな服を着ていたことに気が付いた。

実際気が付くような場面はアトにはなかった。

母はワイルドで世界を飛び回る人間だけど、いつも家で自分を育ててきていたのはお金持ちの父と豪華な人材ばかりのいる親戚陣なのだ。

修行はさせられたが、レディとしての躾も厳しかった。

母は時々家に帰ってくると少しは子供らしく振舞ってもいいのにとアトに言っていたくらいアトは女性として育てられていた。

 「まぁ、魔術師はそんなものだがな。これからの戦いはきっと厳しくなる。その厳しさを多少教えなきゃいけない。」

ハーンは着替え終わったアトにそう声をかけた。

エリフィエルがいたときとはなんだか顔つきが違うようだった。

その顔はまさに竜族のキリリとした顔立ちでアトは背筋を自然に伸ばしていた。



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