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混血の生き物ってのは真剣に考えるとありえないのでは?

 「こ…ここが、パユヴィ村…」

ピコはその村を見て驚いてそれしか言葉が出なかった。

村の建物や道路は珍しい物ではなく一般的な木や土やレンガなどで作られた家だった。

しかし、どの家も珍しくないのに作りがばらばらだった。

どことなく統一感のない町並み。

それだってそこまで驚くようなことではなかった。

ピコはあんぐりと口を開けたまま呆けていた。

その原因は村人にあった。

村を行き来している村人を目で追いかけ目が合うたびにピコはビクビクしていた。

「これは…。」

メガがやっとその言葉を発しようとしたところでアトがにこりと笑った。

「なんとも興味深いですわね。パユヴィ村はこの地上で唯一魔物も人間もエルフやそれ以外の種族も一緒に暮らしているんですの。魔王の影響があって今は、人間はほとんど住んでいないんですけど…。」

アトはそう言うと小走りで近くにあった店に近づいた。

それは道具屋で目を輝かせて何かに見入っていた。

「辺境の村だけあって素晴らしく心惹かれるものがいっぱいですわ!」

その声を聞いた店の主人が奥の方から顔を出した。

アトやピコ達のその姿を見て店の主人は驚いていた。

しかし、それ以上にピコは主人の顔を見てびっくりしていた。

それもそのはずだった。

顔は犬のようで耳は兎のような長い耳、首は蛇のように長くくねくねしており、人間のように二足歩行していた。

体には商売用の腰巻のようなエプロンをしてはいるが、フサフサの栗毛で覆われていて、明らかに人間やエルフではない。

所謂魔物といった風体だ。

「人間だ!!」

「店の人もモンスターなの!?」

店の主人もピコも驚きの一声を同時にあげた。

「落ち着け…別におかしかないだろ…。久しぶりだなジルデ。」

レセはバルから降りると店の主人に近づいた。

どうやらジルデという名前らしい。

「おぉ、レセか!お前はとにかくとして久しぶりに人間を見たからテンションあがっちまったぜ!」

そのジルデと呼ばれたモンスターは人間の言葉を流暢に話しており、その間首をうねらせるようにしていた。

どうやらテンションが上がると首を動かす癖があるようだ。

「はじめまして、私アト・ツェーと申しますわ。」

そのアトの落ち着いた様子にピコはやっと固まっていた状態から解き放たれ、アトの後ろまで近づいた。それと共にメガやグルーチョも店の前に集った。バルだけはそこまで近寄らず、店の脇のほうで大人しくしていた。

「おお!はじめまして。俺はジルデ!両親とも魔物だが違う種族で雑種だから俺みたいのは他にはいないぜ!!そっちの嬢ちゃん、俺は魔物だが、いい魔物だ。村の奴らは皆いい魔物だが、俺は特にイカスぜ!!俺の彼女にならねーか?」

ジルデはそう言うと体の割に可愛らしい目を片目だけ閉じてウィンクをした。

それを見たピコは苦笑いをして一歩後退した。

「お前、懲りてないな…。」

レセはため息を付いた。

「別にいいじゃんか。魔王のせいで人間がいなくなって唯一の出会いがたまに来るかもしれない旅人だけなんだぜ!!彼女が出来る前に人生終るなんてまっぴらだぜ!!」

ジルデはわがままを言うようにじたばたと首を振った。

魔物はこんなにテンションの高いやつばかりなのだろうか?

「だからなんで人間限定なんだよ。他にも女はいっぱいいるだろ。大体出会った途端彼女になれとかお前は軽すぎるんだよ!!」

レセはどうやら真面目らしい。

ジルデの行動が気に食わないのだろうか。

「だってぇ、人間の女の子ってぇ、可愛いし柔らかいじゃん?」

ジルデは目をキラキラさせて言った。

それを見たレセはあきれ果てた。

「お前のフェチズムはまだしも…」

それを言いかけたところでレセはハッとなった。

誰かが自分達の後ろに立っていたからだ。


「あ…村長。」


ジルデがそう呟くとピコ達も振り向いた。

グルーチョだけが、その道具屋の商品に見いっていた。

「え!!どこ?」

振り返ったピコの前には誰かがいるようには見えなかった。

「下よ。」

その声は今まで聞いたことのない声でどうやらその声の主が村長らしい。

ピコはその声にしたがって下を向いた。

「え!!?」

ピコはその村長の姿を見てさらに驚いた。

パユヴィ村の村長は身長20センチほどの姿をしており、背中にはキラキラと輝く半透明の羽が生えている。

髪は薄い紫がかったピンクで、ハーフアップの団子に腰まで髪を垂らしている。

その小さな体を纏うのはクリーム色の胸と腰を覆う程度の南国の衣装のようなものに薄いストールを羽織っている。

その体は地面すれすれを浮いておりフワフワと上下している。

体付きは女性だ。

「はじめまして!パユヴィ村へようこそ!!あなた方が来るのを待っていました。」

村長はその甲高い声で話しかけてきたと同時にフワっと上昇してピコ達の目線のあたりまで来た。

「は…はじめまして……あ…私はピコ…と言います。」

ピコはおどろきが抜けないままたどたどしく自己紹介をした。

「はじめまして、アトと申しますわ。」

「あ、俺はメガって言います。こっちがピコの爺さんのグルーチョさん。」

グルーチョはやっと自分の名前が呼ばれて村長の方を見た。

「おぉ、妖精じゃ…また見ることがあるとはおもわなんだなぁ…。」

グルーチョは相変らずののんびりぶりで、それを見た村長も呆けた顔をしていた。

「国王陛下からこちらにグルーチョさんという方が来るとは聞いておりましたが…。まぁ、それはともかくご案内いたします。」

村長はひらりと身を翻し村の奥の方へ導く仕草をした。

「あ、じゃあ、俺はここで…。がんばれよ。魔王は恐ろしく切れる男らしいからな。」

レセはその忠告をすると4人にひらりと手を振った。

「ありがとうございました。」

ピコとアトはそう言い残して村長の進む方へ歩みだした。

「俺……会えてよかった」

メガは弱弱しく言葉を発した。

その声に対してレセは少し照れて微笑んだ。

その顔には赤みがかかり、レセの素が顕になった。

「元気でよかったよ。ごめんな…姉さんにちゃんと会わせられなくて。いつかきっとお前のことも思い出せる日が来ると思う。今はまだ会わせられないけど…だから…死ぬなよ。」

そう言ったレセの顔は耳まで赤く、照れ隠しのつもりか少し下を向いていた。

「うん。」

メガはそう一言だけ答えると駆け足で3人を追いかけた。

その背中を見つめながらレセは少し大きく息を吐いた。

 「おい。つかぬことを聞くが、あれはもしや勇者一行だったのか?」

その場にいて様子を見ていたジルデはまた驚いた顔をしてレセに問うた。

「あぁ、一応な…。」

レセはその問いに答えながら苦笑いをした。

「それは…やばいな…。」

ジルデは突然真顔になりテンションは最低なほどに落ち込んだ。


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