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ツンデレってデレの要素少なくないか?

―ガサガサ!!


そのほんの一瞬の安堵感をその音が切り裂いた。

どうやらその爆音を聞きつけてオークの仲間が来たようだ。


「カァ!!」


―バサ!!バサ!!


小型爆弾は間違いだった。

オーク以外にも大カラスも大量に呼んでしまった。

「げ…。」

「大ピンチですわね。」

アトとメガはグルーチョとピコを庇い二人を挟んで左右を向いた。

「考えたら、こいつらから逃げていたのに、対策とか全然考えてなかった。」

ピコはボソリと呟いた。

オークと大カラスはジリジリと4人に近づいてきていた。

4人の表情は険しい。

オークと大カラスを併せると50匹は越えているかもしれない。

「逃げる…隙間がないですわね…。」

アトのその言葉でピコもメガも緊張をさらに増した。

そんな中、グルーチョだけはぼうっとして、取れたキノコを見つめていた。




―バリバリバリ!!!!



その中、突如として轟音が近づき通り過ぎるようにあたりを取り巻いた。

それと共に眩いほどの光がアルフヘイムのほうから近づいてくる。

「な…なんだ!?」

目がほぼ見えないグルーチョ以外の三人は瞬間的に眩しそうに手で目の前をさえぎった。

「う…うるさい!眩しい!!」

アトは思わず大声を上げた。

その声が聞こえるか聞こえないかほどにその轟音は収まりを見せた。

それと共に光も弱まり、やがて通常の森に戻ろうとしていた。

 目を空けた三人の前には今迄オークや大カラスがいたのに一匹も見当たらなかった。

目も耳も閉ざされた環境からやっと脱出した三人の視覚と聴覚はしばらくうまく効かなかった。


「お前ら、馬鹿か…。」


しばらくして聞こえたのは誰かの呆れた声だった。

その声を聞いた4人がそちらを見るとそこに居たのはユニコーンのバルとエルフのレセだった。

「なんで、ここに…。」

ピコは思わず問いかけた。

まだ若干耳鳴りがするが、随分良くなった。

「なんで…そ…それは…なんていうか…メガは俺の甥にあたるわけだし…その…し…心配で…。」

レセはボソボソと顔を赤らめて呟いた。

その声は耳鳴りの続く4人には聞き取れなかった。

「何ですの?先ほどの轟音のせいか耳がよく聞こえませんわ…。」

アトは耳の後ろに手をやるとよく聞こえないというそぶりを見せた。

ピコとメガも同じようにしていた。

それを見た、レセはさらに顔を赤らめると押し黙ってしまった。

アト達はその様子に首を傾げていたが、それを見ていたグルーチョが一言大きな声で言った。

「心配してくれたんじゃなぁ!!」

それを言い終えるとグルーチョはメガの肩に手を置きにっこり微笑んだ。

そこでやっとレセが自分達の様子を見ていたことに気が付いた。

「ありがとうございます!!」

メガはすぐにレセに微笑んで礼を言った。

それにつられて、ピコとアトも微笑んだ。

それを見たレセは耳まで赤くして下を向いてボソボソと呟いた。

「べ…別に…そんな…」

それを見たピコはやっとレセの性質を理解してニヤリと笑った。

どうやらレセはツンデレキャラのようだ。


「そ、それよりも、メガ…そのグローブ使えばもっと楽に戦えるんじゃないか?」

少ししてレセはその雰囲気を一掃しメガに話しかけた。

レセはバルから降りるとメガの腕を持ち上げて、その手に付いているグローブを見つめた。

「え…」

メガはよくわからないと言う顔をしてレセを見た。

「この石で魔力を制御しやすくして、グローブ自体を変化させたりするすぐれものだと思うよ。」

レセはお約束のエルフの眼力を見せた。

「たぶん、剣とかの形になったりして、武器の代わりになるから…。」

レセはメガの手にはめられたグローブをマジマジと見つめていた。

「す、すごいですね。俺なんかまだどうやって使うのか説明書見ているとこなんですけど…。見ただけでわかっちゃうんだ。」

メガは感心してレセのようにグローブを見つめた。

「メガはエルフよりも人間の部分が前に出ているからな…。説明書を読む方が向いているかもしれないな。お前の兄さんのシアだったらそれをはめた直後でもすぐに扱えただろうな…あいつは…恐ろしく器用な子供だった。」

レセはそう言うとメガの腕を離し再びバルに乗った。

それを聞いたメガはレセを目で追いかけて黙ったまま真剣な表情で考え事をしていた。

レセはそれにお構いなしでバルのたてがみを撫でるとバルはゆっくりと歩き出した。

4人はそれを見送り…


「おい!!付いて来いよ!!お前らだけじゃまた魔獣に襲われるのは目に見えてるだろ!!」


レセは見送られるつもりはなかったらしく、しばらく歩いた先から突然振り返って、眉間に皺を寄せて切れた。

その姿はエルフの美しいイメージとは程遠い。


「え!?…は…はい…(怖い…)」


ピコはびっくりするとそれに従って付いて行く。

アトやメガも一瞬顔を見合わせるとそれについて歩いた。

そしてその後ろをグルーチョがのほほんと歩いていく。


 「それにしてもユニコーンが男性になつくなんて不思議なこともあるんですわね…。」

アトはしばらく歩いたところで、不思議に思っていたことを口にした。

その間ゼェゼェと息を切らして歩いていたピコやボーっとついて来ているグルーチョはそれを聞くことはなかった。

一方メガはその問いにやっとハッとしてレセを見た。

元々ユニコーンは乙女に弱いとは言うが警戒心が強くめったに人に近づかないと言われているからだ。

「ん?…あぁ…バルは、本当は姉さんになついていたのさ…。だが、ヨタが来ちまってからというもの元気をなくしちまって…。俺も唯一無二の存在を奪われた気がしていたんだ。それで…まぁ、コイツと気があったのさ…。姉さんがベータに降りて病にかかっていたときこいつは協力して姉さんを村まで連れて帰ったり、村を魔獣から守ったりしてな。所謂、戦友ってやつになったのさ。今でもこいつは俺以外の男は乗せるのは嫌がるんだぜ。メガを運ぶ時はちょっとイライラしてたしな…。」

バルの話をするレセはそれまでとは違って饒舌で優しい表情だった。

当のバルは時々唸り声のような鳴き声を出す程度でほとんどアトたちを気にしている様子はなかった。

「そうなんですの…。ユニコーンもエルフもはじめてお会いしましたので、本当に勉強になりますわ。あんなすごい技はユニコーンの魔力の賜物ですわね。」

アトはバルの顔を覗きこみながら言った。

本当に楽しそうな子供の笑顔を浮かべていたが、言っている事は子供とは思えない。

バルはそのアトを見て顔を近づけるような仕草をしていた。

どうやらバルはアトのことは気に入ったようだ。

それを見ていたメガも不思議そうにバルの後方に近づいた。

「乙女に弱いってユニコーンって雄しか居ないのかな…。」

そう言ったメガはバルに触れようとした。

―バサァ!―

バルはメガが自分に触れる前に魔力のこもったシッポで器用にメガを退けた。

その勢いのせいでメガは一瞬後ろにこけそうになった。

「う…。俺はハエか…とにかく俺に気を許していないことは確かだな…。」

そんなことを話しながら一行はアルフヘイムから随分歩いた。

その間一度も魔獣に襲われることはなかった。

どうやら、魔獣達はバルとレセが苦手なようだ。

魔獣達は時々影からチラチラとこちらを伺ってくるが手は出してこない。

 そんな魔獣が段々とこちらを伺うことが少なくなっていくと川が現れた。

どうやら本線の道に戻ったらしい。

レセはそれからも暁の国による前に行くはずの村には自分も用事があるとかで付いて来てくれた。

川沿いを歩いていくと、橋がありそれを渡る道が順路らしくレセの教えどおりに道を進んだ。

国王から貰った地図にはそんなことは示されていなかった。

国王には悪いが落書きのような地図に比べたらレセは十分なほどの案内だった。

 川を渡ったあたりから獣魔とはまた違う魔物が現れるようになった。

数は多くないのでバルやレセの助けがなくてもやっつけることが出来るほどだった。

どうやら道順さえ間違えなければ、大変な目には合わなかったのだろう。

「はぅぅ…足が棒のようだよ…。魔物との戦闘の仕方もわかってきたけど、そろそろつかないと夕方に…。」

朝方に出発したのに日は沈みかけていた。

ピコは時々休みながらも歩き続けた距離が今までに経験したことのない距離だったのでボロボロだった。

アトやメガも同じように疲れきっていた。

平気なのはバルとレセとグルーチョだけだった。

「なんじゃ、だらしないのぅ…。」

グルーチョは恐ろしく元気だった。

老人とは思えない足腰だ。

しかも非戦闘員というわけでない。

なぜか攻撃していないのに魔物を自滅させている。

おそらくメガより多く倒している。

アトが一番魔術で魔物を倒したが、それにも迫る勢いだ。

「(この爺さんはなんでこんなに元気で魔物を自滅することが出来るんだ。もしかして世界一の運の持ち主とか…いや、回避率が高いのか…それにしても…)」

レセはその4人をバルに乗った状態で、高みの見物をするように眺めていた。

「あの…村はあとどれくらいなんですか?」

息を切らしながらピコはそれをレセに問うた。

「あぁ、もうすぐさ。…ほら、村のやぐらが見えてきたぜ。そうだ村に入る前に一つ注意しておくが、村人に会っても突然攻撃したりするなよ。」

「え?」

レセがそう言うとピコとメガは同時にその声を上げた。

「この村もアルフヘイム以上に不思議な村ですのよ。」

アトがそう付け加えるとちょっといたずらっぽく笑った。


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