年金は大切だよねぇ
なるべく明るい感じで書いていこうと思います。
ただし戦いのシーンもあるのでR-15にしてあります。
暁の光はまるで神様が降り立ったようにある一人の人物の背を照らした。
光を浴びた草が朝露で輝いていた。
しかしそれよりも光り輝く頭を持っていた人物がそこにはいた。
その光がさらにあたりを眩いくらい輝かせている。
その日、大切な用事を控えていた彼だが、いつものように庭で体操をしていた。
その動きはゆっくりで、あたりはいつの間にかすっかり明るくなっていた。
その時、家の扉が開いて、女の子が顔を覗かせた。
「お爺ちゃん!いつまで体操しているの?朝ごはん覚めちゃうよ!」
「あぁ、テラ…今行くよ。」
女の子は彼のその言葉を聞いて苦笑いをすると家の中に入っていった。
お爺ちゃんと呼ばれた彼の名前はグルーチョ。
もう84歳になるお爺さんだった。
頭はすっかりお月様のようにテカテカに光を反射する。
一方、テラと呼ばれた女の子は本当はピコという名前だ。
栗毛の髪を二つに縛った愛らしい少女で、16歳だ。
16歳にしては12歳くらいに見える小柄で童顔な女の子だ。
だが、胸だけは肩凝りしそうな大きさだった。
性格はしっかりしていて、一人でボケ始めた祖父グルーチョの世話をしていた。
村の同年代の子と比べてもよく働く器量のよい娘だった。
彼女は若いながらも貴族の住む隣のお屋敷のお手伝いをしてお金を稼いでいた。
あとは祖父の年金でどうにかなった。
「そうじゃ、ピコ…」
グルーチョがごはんをスプーンからボトボトと落としながらゆっくりと言った。
「…(さっきはおばあちゃんと名前間違えてたのに…)」
ピコは無言でそれを拭きながらグルーチョの次の言葉を待った。
「今日は年金を貰いに行く日じゃ…。」
グルーチョはそう言うとピコの返事を待つ前に魚の塩焼きを一切れ口に入れた。
「そうだね。ちゃんとご主人様にはお休みもらったから。(昨日も聞いたし…)」
「そうか…。」
その瞬間に一回口に入れた魚のカケラが一つポロリと落ちた。
ピコはそれをまた拭いて、自分の食事を再開した。
二人の会話はその後しばらくごはんの為に中断した。
ピコがごはんを食べ終わって、食器を片付けようとした時だった。
グルーチョが再び口を開いた。
「そうじゃ、ピコ…」
食器を流しに置いたあたりで、ピコは振り返った。
「今日は年金を貰いに行く日じゃ…。」
「…うん。そうだね。一緒に行こうね。(他のことはすぐに忘れるのに、お金に対する執着心が強いのかしら…)」
ピコは苦笑いでグルーチョを見ると、グルーチョはピコに満面の笑みを浮かべていた。