10,建物探索
3番目の島の中央、目を引く大きな建物は、他とは違い入っても問題なさそうな状態だった。
他よりもきれいで、崩壊箇所も少ない。
コガネとベーレスが問題ないだろう、というので、揃って中に入る。
「おお、おお!すごい!城みたい!」
はしゃぐレークを追ってベーレスが足を速め、アルフは死にそうな呼吸をしながらベーレスの背を追った。
アオイは少し後ろでそれを眺めつつ、コガネに声をかける。
「どうしよっか」
「……ついてくぞ」
「うーん、なら、自由探索」
「分かった」
建物の中央と思しき広間でレークたちが止まっていたので、アオイはそこに声をかける。
レークは勢いよく振り向いたが、アルフの動きが鈍い。大丈夫だろうか。
「少し別行動でもいいですか?」
「分かりました!お気をつけて!」
「何かあったら叫んでください。コガネが聞こえると思うので」
「分かりました!叫びます!」
「叫ぶ前に言ってください、耳塞ぎますから」
「ベーレスそれはどういう意味だ?」
「よく聞こえるって意味ですよ」
「そうか!」
ははは、と軽く笑ったベーレスにアルフが何か言いたげな目を向けた。
レークは気付いていないのかアオイに手を振ってから奥の探索に向かったので、アオイも手を振り返してコガネと共に別の方向に向かう。
レークが言ったように、建物の中は城のようだった。
床には絨毯が敷かれ、壁には所々ステンドグラスがはめ込まれている。
庭のような場所に面した廊下を進み、少ししたところでアオイはコガネに寄りかかった。
「大丈夫か?」
「うん……情報の波があるだけ……」
「休むか」
「うん……」
頭を押さえて唸るアオイを抱えて、コガネはその場に腰を下ろした。
膝の上に乗せたアオイが見上げてくるので耳を寄せると、考えを纏めているのか少しつっかえながら話し始める。
「……この島、は、……どう思う?」
「歴史物、だな」
「丸ごと?」
「丸ごと」
「……だよねぇ……発展途上、初期のころ」
「……俺に、そこまでの知識はないが、そうなんだろうな」
両手でコガネの片手を握って弄っていたアオイが、目を瞑って何かを考え始める。
コガネは何も言わずにアオイの考え事が終わるのを待った。
手をにぎにぎされているが、それも気にせずに静かにイスに徹した。
考えが纏まったのか、アオイが目を開けた。
何か言おうと口を開いたが、アオイが声を出すより先にレークの声が響いてきた。
コガネとアオイは目を見合わせ、アオイが立ち上がったのを合図に元来た道を戻る。
「レークさん!?」
「アオイさん!!見てください!これ!これなんだと思いますか!?」
何があったのかと慌てて戻ってきたアオイに、レークは元気よく何かを差し出した。
見せられたのは、1枚のカード。
綺麗な縁が描かれ、中央には人魚が座っている。
レークは大興奮でカードを見ている。
探索の最中、一際綺麗な机の上に置いてあったのを見つけたらしい。
そして思わず大きな声を出し、アオイたちと別れたこの場所に戻ってきたのだという。
レークの後ろには肩で息をしているアルフと、耳を擦って苦い顔をしているベーレスがいる。
アオイは2人の姿に苦笑いして、レークからカードを受け取った。
受け取った瞬間、アオイの物ではないはずの知識が流れ込んでくる。
このカードの詳細や、これが属する場所。
一気に流れ込んでくる知識にめまいがして、ふらつくとコガネに支えられる。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です。……人魚、ですね?」
「そうですね!人魚にあったことはないので、正しく人魚かは分かりませんが!明らかに神話時代の何かです!すごい!大発見だ!」
レークにカードを返すと、レークはそれを光に当て目を輝かせる。
そしてこれは一体何なんだ?といきなり静かになった。
「レーク様、ここで考えても分かりませんよ」
「そうだな!……それに、もう日暮れまで時間もそうなさそうだ」
「どうしますか?」
「最後の島も見て、今回は帰りましょう!夜に何かあるかもしれませんが、危険もあるでしょうし。夜の探索は準備も必要ですしね!」
「……案外冷静なんだな」
「勢いだけで探索は出来ませんよ!」
レークは笑ってそういった。
建物から出ると日は頂点から少し下ってきている。
確かに最後の島を探索して最初の島に戻ったら夕方になりそうだ。
次の島への通路は綺麗に加工されていて、広さも前の通路より広い。
最後の島は一番狭く、だが、どこか客人をもてなすような雰囲気があった。
探索はしたが特に何もなく、今回の大きな収穫は人魚のカードだけだったが、レークはそれで大満足のようだ。
今まで皆無といってよかった神話時代の物が一つでも手に入った時点で大勝利らしい。
そう言われると、そういうものかと納得できる。
そんな話をしながら島を渡り、ドラゴンたちの待つ最初の島に戻ってくる。
ドラゴンたちはアオイたちが戻ってきたのを見て身体を起こし、乗り込めるように姿勢を低くしてくれる。
その背に跨り飛び立ちながら島に目線を向ける。
来たときと何ら変わらない島の景色を目に焼き付けて、アオイはドラゴンに帰還の合図を出した。
実はちゃんと作ってある神話時代の設定。
というより、別で考えていた話の設定を神話時代の物ってことにしたんですよね。
いつかしっかり書きたいなぁと思っていたり。




