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薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
7章・天空の島
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8,天空の島

 目の前の島は、円形が連なって構成されていた。

 周りを飛んで島を観察しながら、ぼんやりと考えを巡らせる。

 島は4つの円。全て横に繋がっており、どこか団子の様である。


 大きさは、2つ同じ大きさのものが連なり、その次が最も大きい。その先に一番小さな島がある。

 円形と円形は細い陸で繋がっているようだ。

 その繋がり方は、地上の大陸間と似ている。


「レークさん!上陸しますか!?」

「そうですね!どこから……」


 話しながら、ドラゴンたちに島に近付いてもらう。

 一番大きな島に近付こうとすると、島を見えなくしていたものと同じものなのか、結界が反応して島から弾かれた。


「……入り口、どっちかな?」

「どっち、とは!?」

「多分、端の島から入らないといけないんです」

「そうなんですか?」

「はい。人の家に行ったとき、裏口からは入らないですよね?玄関を探さないと」

「なるほど!」


 ポンッと手を叩いたレークに、どちらから行くか聞いてみる。

 答えは、1つの方。

 ドラゴンに向かってもらいながら、アオイはコガネに顔を寄せられそちらに耳を向けた。


「今の考え方は」

「ゲーム脳、かな?探索は好きだったのよ」

「そうか」


 言わない方がいいな、と返されて同意を返し、目前に迫る小さな島に目を向ける。

 上陸できるか、という距離まで近づいたところで弾かれ、島との距離が開く。


「外れ。反対側ですね」

「みたいです!行きましょう!」


 元気よく言ったレークが勢いよく動き、驚いたドラゴンが背中の上を確認する。

 ドラゴンが目を向けるより先にベーレスがレークの腹部を強く抑えた。

 ぐえ、と呻き声を出したレークを無視して、ベーレスはドラゴンに大丈夫だと声をかける。


 ドラゴンは不安そうに目線を戻し、連なった島の先頭に向かう。

 島が目線の先で一列に並ぶ位置をドラゴンが飛ぶ。

 そしてゆっくりと近付き、島に上陸した。


「来れた!やった!島だぁぁ!!」

「おお、上陸完了だね」

「そうだな」


 はしゃいでドラゴンから飛び降りたレークを横目に、アオイはコガネに下ろしてもらう。

 ドラゴンを労いつつ島に目を向ける。

 飛んでいた時から思ってはいたが、広い島ではないようだ。


 今いる島を1つ目とすると、1番大きな島は3番目。

 何かあるとしたらそこだろう。

 ここを見るのか聞こうとしてレークの方を振り返ったアオイは、レークを確認するより早くコガネに腕を引かれた。


「伏せろ!」


 鋭く発せられたコガネの声にアオイが反応するより早く、コガネによって身体を低くされる。

 レークは助手2人によって地面に押し付けられているようだ。

 アオイがコガネの目線の先を辿るのと同時に頭の上を何かが通った。


 おそらくは魔法。だが、それを確認する余裕はない。

 目線の先には先ほどの魔法を放ったのであろう、石で出来た人型の物がいる。

 いわゆるゴーレム。この世界ではあまり見ないものだ。


 ギギッと音を立ててゴーレムが石で出来た腕を上げる。

 作られてからだいぶ時間が経っているのか、その動きは酷く緩慢で、ゴーレムの第2波が放たれるより前にコガネの放った魔法がゴーレムに当たった。


 音を立ててゴーレムが崩れ、コガネは用意していた2発目を無に帰す。

 地面に押し付けられていたレークも解放されたようで、ぶつけたのか赤くなっている額を擦りながら崩れたゴーレムを見ている。


「ああ……ゴーレム……神話時代のゴーレムが……」

「レーク様、まずはお礼ですよ。助けていただいたんですから」

「そうだな……コガネさん!ありがとうございました!」

「ああ」


 コガネは短く答えてゴーレムに目を向ける。

 再度人型になって襲ってくるとかそういったこともなく、ゴーレムはただの石になって沈黙を保っている。


「もういないかな?」

「居ない、と、思うぞ。気配も魔力もない」

「なるほど!なら、少し探索してもいいですか!?」

「どうぞ。そのために来ましたからね」


 アオイが笑うのと同時に走り出したレークを追って助手2人も駆けていく。

 アオイはそれを見送ってドラゴンに身体を向けた。

 ドラゴンたちはゴーレムに怯えた様子もなく、島を珍しそうに見ていた。


「ここで待っていて貰えますか?多分、進むのは大変なので」

『ああ、分かった』

『えー!僕も行きたい!行きたい!』

『駄目だ、迷惑になるだろう。それに、俺たちが怪我でもしたら皆帰れなくなる』

『……ちぇっ』

「帰りにアルフさんから沢山話を聞いてくださいね」

『そうするー』


 拗ねたように言いながら休む体勢に入ったドラゴンの頭を撫で、狭い島の中をくまなく探索する3人を眺め、アオイはコガネに寄りかかった。

 青年の姿をしたコガネはアオイよりだいぶ大きい。

 寄りかかっても少し心配そうにするだけで、そのまま支えてくれた。


 しばらくして探索が終わったのかレークがかけてきた。

 身体を起こしてどうしたのか尋ねると、この島の探索は終わり、次の島への道を見つけたのだという。

 ドラゴンはここで待たせることを伝え、レークの先導で次の島に向かった。


 外から見た限りでは、この島と次の島は同じような大きさで同じように植物が巻き付いていたはずである。

 もしやまた何かに襲われるかも、とコガネに目線を向けると、コガネは分かっていると頷いた。


「……やっぱり、コガネがいると安心だぁ」

「任せてくれていいぞ」


 横を歩くコガネを見上げると優しく微笑まれ、そっと目を背ける。

 イケメンの笑顔は、心臓に悪いことが多い。

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