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薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
7章・天空の島
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7,いざ空へ

「おはようございます!」

「おはようございます……元気ですね、レークさん」

「はい!ぐっすり眠りましたから!」

「主はぐっすり寝た結果眠そうだな」

「あと4時間寝たい……」

「寝すぎだ」


 リコリスの敷地内は朝から賑やかであった。

 朝からテンションの高いレークと、眠たげなアオイ。そのアオイを支えつつ揺さぶって起こすコガネ。レークの後ろでニコニコと笑っているベーレスと、立ったまま寝ているアルフ。

 ……朝早い出発はやめた方がよかったのではないかと思わなくもないが、もうすでに支度は整っている。


 アオイもアルフもドラゴンの上で眠るという器用なことは出来ないので、出発してしまえば問題はないだろう。

 ドラゴンたちの準備も出来ているようで、促されて背に跨る。

 レークがとても興奮して何か言っているが、にっこりと笑ったベーレスに口を塞がれ静かになった。


 ドラゴンたちに合図を出すと、3頭が一斉に飛び上がった。

 見送りに出てきていた小鳥組に手を振って、アオイは目線を空に向ける。

 後ろにはコガネが居るので、多少バランスを崩しても大丈夫である。


「レークさん、詳しい位置を教えてください!」

「ひとまず第1大陸に向かってください!」

「分かりました!」


 風の音に負けないよう、声を張って会話をして、アオイはレークに向けていた目線を前に戻す。

 トマリに調べてもらったが、詳しいことは分からなかった。

 何か結界があるのか、条件があるのか。

 それらは行ってみないと分からないだろう。


「主」

「なあに?」

「心配しなくとも、そう悪い方には進まない。……と、言ってる気がする」

「ふーむ。なるほど。なら、楽観視していこうか」

「ああ」


 コガネに体重を預け、アオイは空を見上げた。

 それはどちらからの言葉なのか。だがまあ、どちらの言葉でも、信じていいものではある。

 だから、きっと大丈夫なのだろう。


「私が何かしたところで、結果は変わらないのかもね」

「そうかもな」

「なら、自由にやっていいよね」

「そうだな」


 ゆったりと話していると、何やら横が騒がしい。

 目を向けると、レークが楽しげに辺りを見渡している。

 腰にはベーレスの手が回っており、ベーレスはしっかりと手綱を握っているようだ。

 ……普段から苦労しているのだろう。行動の抑制に慣れが感じられる。


『なあ、こいつ、落ちそうで怖いんだが』

「ベーレスさん、レークさん落ちたりしないですか?」

「その前に止めますよ」

「大丈夫らしいですよ」

『……落ちても、俺の所為じゃないからな?』

「落ちてもドラゴンは責任を取れないそうですよ」

「大丈夫です。落ちたらレーク様の自己責任ですから」

「案外厳しいんですね」

『……この兄ちゃんが一番強いんじゃないか?』


 ニコニコと受け答えするベーレスだが、抑えられたレークの稼働範囲が大分狭いので腕にはかなりの力が入っているようだ。

 確かに、ベーレスが一番強そうである。

 アルフは言葉は分からないがドラゴンと会話を成立させているようで、何やら楽しそうに急加速と減速を繰り返している。


 それを見たレークが目を輝かせ、何か言おうとした瞬間にベーレスが「駄目ですよ」と先回りする。

 そのまま押し問答が始まったが、結局レークの要望は通らなかったらしい。

 最終的にベーレスがレークの頭に顎を置いた時点で問答が終わったが、あれは何かの合図なのだろうか。


『第1大陸、入りましたよ』

「おお、本当だ。レークさん!ここからの道は?」

「上に行ってください!見えるはずです!」


 アオイたちを乗せている無口なドラゴンの言葉に目線を下ろして、下の大地が第1大陸の形をしていることを確認する。

 レークに道を聞くと、曖昧な言葉が返ってきた。

 首を傾げながらドラゴンに上昇の指示を出し、アオイはコガネに寄りかかる。


「そんなに大きいのかな?」

「それなら、もっと早くに見えていそうなものだが」

「だねえ。見える、とは」


 考えているうちにドラゴンは高度を上げていき、雲を突き抜けてその上に出る。

 それでも止まらず高度は上がり続け、アオイがひええ、と声を出しても止まらない。

 しばらく上に上がり続けてもアオイには島の影すら見えない。


 本当にあるのか、見えるとはどういうことなのか、尋ねようとレークに身体を向けようとしたとき、アオイ以外の4人が声を揃えた。


「「「「あった!」」」」

「え、どこ」

「あそこだ。……ああ、待ってくれ、見えるようにする」


 コガネの手が目を抑え、離れていくと確かに目線の先には島が浮いている。

 アオイにとってはそこそこ見慣れたもの。仮想の世界でよく描かれていた、下が円形の浮島である。


「なんでさっきまで見えなかったの?」

「結界が張ってあった。主は、目に魔力を溜めるのは苦手だったな」

「苦手。出来ない。保って2秒」

「その状態でないと見えないようになっていたようだ」

「じゃあ、皆さん出来るんですね」

「古代の物は魔力が籠っていることが多いですからね。レーク様が一番精度が高いですが」


 話している間にドラゴンたちが島に近付き始める。

 レークが目を輝かせて身を乗り出し、ベーレスの腕により一層力が籠った。

 アオイはこの世界では初めて目にする島に、静かな目を向けていた。

冒頭の会話がだいぶお気に入り。

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