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薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
7章・天空の島
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4,登山

 朝。起きて着替えて部屋を出る。

 朝食は朝市で買い食いして、ついでに昼食も買っていくことにした。

 アオイがヨルハ・プーアから教えられたのは、行き方ではなくその風景。そこからまあ、こう行けばいいのだろう、という予想を立てて、その場所に向かっている。


 第5大陸には、人の定住地がない「奥地」と呼ばれる所がある。

 今向かっているのはその奥地。そこにある山である。

 アオイは体力があるので登山も全く問題なかったが、アルフが死にそうである。


「日頃の……運動……不足がっ……」

「学者さんって机から動けなさそうですもんね。ゆっくり行きましょう」

「すみ、ません……」


 肩で息をしながら必死に後ろをついてくるアルフを気遣いつつ、アオイは山を登っていく。

 途中コガネがアルフを背負うか、と提案したが、そこまで迷惑を掛けられないと断られた。

 登っているうちに日も高くなり、途中で昼食を食べて休憩する。


「ふう……あとどのくらいですかね……」

「もうすぐだろう。中腹は越えた」

「そうですか……もう少し……」


 目の上に冷やしたタオルを乗せて呟くアルフの様子にコガネとアオイは顔を見合わせて少し笑う。

 リコリスに居る者たちは皆体力が人並みかそれ以上あるので、こうなっている人を見るのは久々である。

 思い返せば、徒歩での移動も久々な気がする。


「もうそんなに時間もかかりませんし、もう少し休んでから行きましょうか」

「はい……ありがとうございます……帰ったらベーレスも巻き込んで運動するか……」


 アルフの体力が回復するまで休んで、再度登り始めてからそう時間はかからず目的地が見えてきた。

 今回の目的地、第5大陸の奥地の山、その山頂の窪地にあるドラゴンの巣である。

 パッと見ただけで百に届きそうな数がいる。


 アオイは迷いなく窪地の中心に向かい、コガネも当然その後ろをついて行く。

 アルフは驚いたように辺りを見渡していたが、アオイが移動していることに気付いてついてきた。


「こんにちは」


 アオイが声をかけたのは、ドラゴンの巣の中心に座している年老いたドラゴン。

 ドラゴンはアオイに顔を近づけ、その手に顔を押し付ける。

 歓迎する。そう言われてアオイは微笑んだ。


 アオイには契約獣(最上位ドラゴン)の加護が付いている。

 その加護は強力であり、ドラゴンたちはアオイの接近に気付いていたようだ。

 用を尋ねられ、アオイはチラとアルフを見た。


 アルフはアオイから少し距離を置いて空を飛ぶドラゴンを眺めていた。

 小さく「綺麗だなー……」と呟く声が聞こえてきて、アオイは目線を目の前のドラゴンに戻す。


「空に浮かぶ島をご存知ですか?」

『島、とな?』

「はい。あの方は学者さんの助手なのですが、もう一人の助手さんと学者さん、あと、欲を言えば私とコガネを乗せてその島に連れて行って欲しいんです」

『……貴女を乗せるのは構わぬ。貴女は花園、拒む理由はない。だが、他の人間を乗せるとなるとな……』

「……やっぱり、難しいですかね?」

『うむ……』


 ドラゴンは渋い顔をした。

 アオイが頬に手を当ててどうしようかと考えていると、コガネがその肩を突いた。

 アオイが振り返ると、アルフの近くに1頭の幼いドラゴンがいる。


 アルフも気付いているようだが、特に手を出したりはせず、その場から動かず眺めているようだ。

 コガネはアオイとドラゴンの会話が終わるまで待っていたらしく、見ていた限りあの幼いドラゴンがジリジリとアルフに距離を詰めているらしい。


 どうしたのかと近付いてみると、ドラゴンはアオイが来たからなのか少し速度を上げてアルフに近付いた。

 ドラゴンはアルフに興味があるようで、少しだけ距離を取ってアルフを見ている。

 アルフも何やら近づいてくるドラゴンは気にはなる様で、その場から動かずジッとドラゴンを見つめている。


「……コガネ、これずっとこうだったの?」

「ああ。ずっと見つめ合ってる」

「そっかぁ……」


 これはひとまず話を聞こう、とアオイはアルフに声をかけた。


「なんだか微妙な距離感ですね?」

「あれ以上は近づいて来ないんですね……アオイさんのお話は終わりましたか」

「小休止、です」

「そうですか」


 アオイと話し始めたアルフを見て、ドラゴンはジリッとまた少し距離を詰めてきた。


「……あの、アオイさん、あの個体は何がしたいんでしょう……?」

「アルフさんに興味があるんだと思いますよ。話してみますか?」

「俺、言葉分かんないですよ」

「だいじょーぶです」


 アオイは自信満々に言い、ドラゴンを手招きした。

 おいでーと声を掛ければ、ドラゴンは素直に駆け寄ってくる。


「よーしよしよしいい子だー」


 駆け寄ってきたドラゴンの頭を撫でまわして、そのままその場に座ってもらう。

 ドラゴンはアオイの斜め後ろからドラゴンを覗くアルフをキラキラとした瞳で見つめていた。


「君はどうしてアルフさんを見つめてたの?」

『あのね、僕ね、人間を見るの初めてなの!』

「あら、そうなの?」

『うん!あなたは人間だけど、人間じゃないから、長とのお話に来たんだな、って思ったけど、普通の人間ここに来るのは初めて!だから、何をしに来たんだろう、って』

「アルフさんは、自分たちを上に乗せて空を飛んでくれる子を探しに来たんだよ」

『お空飛ぶの?僕出来るよ!その人も乗せられる!』


 ドラゴンは翼を広げてバサバサと動かした。

 そして、アルフに期待の籠った目を向ける。

 アルフは何を話していたのか問う目をアオイに向けていた。

そういえば助手2人の名前なのですが、下書き()で助手A助手Bとしていたのでそのまま頭文字にしました。

そんな端話。どこかに書きたかった。

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