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薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
7章・天空の島
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3,聞き込みの相手

 レークが何か言う前に動きを抑えて目配せで会話をするという連携を見せていた助手たちがアオイに向き直った。

 そして、助手の1人、アルフと名乗った方がアオイに告げる。


「俺だけ同行します。それで大丈夫ですか?」

「はい」

「おいまてアルフ!俺も行く!おれも!」

「お前が来ると話がややこしくなるんだよ!大人しく待っててください!」


 レークはまだ文句を言っていたが、アルフはそれを無視してアオイとコガネに出発を促してくる。

 コガネがそれに従ったのでアオイもその後に続き、迷いの森の中に入った。

 普段通る場所と違うところから森に入り、歩きにくい獣道を進む。


「どこへ向かっているんですか?」

「隣の森です。会いたい子たちが居まして」


 明らかに足りていない説明だが、アルフは納得したように頷いて後をついてくる。

 コガネの先導で進み、しばらくすると森を抜けた。

 魔物が多く危険なはずの迷いの森を魔物と会わずに無傷で抜けるのはコガネの防衛術が優秀だからである。


 森を抜け、そのまま進むと別の森が見えてくる。

 第4大陸に存在する2つ目の森、迷いの森と違い、こちらは普通の森である。

 アオイは迷いなくその森に入り、少し開けたキャンプ地に出来そうな場所に座る。


 何をしているのか分からないはずだが、アルフは何も言わずにアオイの斜め後ろに座った。

 少しして、空から翼の音が聞こえてきた。

 目を向けると、そこにはモフモフとした生物がいる。


 2匹が連なり、翼を持った1匹がもう1匹を抱えて飛んでいる。

 抱えられている方は翼はないが、足がヒレのようになっていた。


「……ヨルハ・プーア?」

「そうです。この子たちなら、何か知っているんじゃないかと思って」


 ヨルハ・プーア。ヨルハとプーアで対を成して行動する生物である。

 翼をもち空を飛ぶ方がヨルハ、ヒレのような四肢を持ち泳ぎが得意な方がプーアである。

 飛べないプーアをヨルハが抱えて飛び、泳げないヨルハをプーアが上に乗せて水上を進む。


 とても賢い種族で、対の絆が固い。

 対を失った個体は強い悲しみのオーラを出すようになり、別の生物に対を殺された場合その種族を強く憎むようになる。

 人間を嫌うわけではないが人の多いところには姿を見せず、謎が多い生き物である。


「……初めて見た……」

「そうなんですか?可愛いですよね」

「そう、ですね」


 膝に上がってきたプーアを撫でているアオイからなぜか少し距離を置き、アルフは興味深そうにヨルハ・プーアを眺めていた。

 アオイは無心でプーアをモフモフしていたが、コガネから声を掛けられて我に返る。


「こんにちは、お久しぶりです」


 アオイに声をかけられ、ヨルハ・プーアは一声鳴いて返事をする。

 膝の上に上がってきたプーアを撫でつつ、それを見ているヨルハにも手を伸ばす。

 2匹同時に撫でていると目的を忘れそうになるので、一旦手を止めてプーアを膝から降ろす。……すぐに膝に戻ろうとしないでほしい。撫でたい。


「きょ、今日は聞きたいことがあってですね……」


 目的を忘れてはいけない、とプーアに伸びそうになる手を止めて、ついでに目を瞑る。

 見えなければきっと撫でたくもならない。

 ……膝の上に何かモフモフがいる気配がする。撫でたい。


「……はあ、モフモフ……で、そう、聞きたいことがあるんです。この辺りに、人を乗せて飛べる子たちっていないですかね?」


 プーアを撫でながら尋ねれば、ヨルハ・プーアは顔を見合わせる。

 そして、何か相談を始めた。鳴き合うヨルハ・プーアはしばし相談を続け、アオイに向き直った。


「ほう、ほうほう……なるほど、第5大陸ですね。ありがとうございます」


 最後に一鳴きしてヨルハ・プーアは去って行った。

 それを見送ってから、アオイは後ろに立っていた2人を振り返る。


「教えてもらえました!」

「なんて言ってたんですか?」

「第5大陸にドラゴンの群れがいるそうです。凶暴な子たちではないらしいので、尋ねてみましょう」

「そうか。……このままいくか?」

「うん。ムスペルに一泊しよう」


 アルフからも同意を受け、森から出て第5大陸に向かう。

 この森は第5大陸に近い位置にあるので、夜までには宿泊予定の国に入れるだろう。


「ドラゴン、ですか……」

「何か良くない思い出でも?」

「いえ、ただ、見た事がないんですよね。恐らくそうだろう、程度にしか分からない距離の影なら見ましたが……」

「そうなんですか」

「主はドラゴンと縁があるよな」

「そうだね……襲われたり契約したりしたね……乗ったこともあるね……」

「すごいですね」


 アルフは心底感心した、という風にため息を漏らした。

 そして、前を向いて歩きながら聞いてくる。


「怖くはないんですか?」

「ドラゴン、ですか?」

「それ以外も。強大なものが近くにいることが怖いと思ったり」

「ない、ですねぇ……周りが強すぎて、もう何が普通なのかも分からなくなってまして。強いて言うなら、コガネが居なくなる方が怖いです」

「居なくならないぞ」

「良かったぁー」


 話しているうちに大陸を跨ぎ、陽が傾いてムスペルが見えてくる。

 明日は早いからさっさと寝てしまおう。そう話して、宿に入ってすぐに眠りについた。

どうしても出したかったヨルハ・プーアさん。

もっと出したい。軽率に出していきたい。

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