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薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
7章・天空の島
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2,神話時代

 客間に入り、少ししてモエギが持ってきたお茶を啜りながらレークに向き直る。

 レークは子供の様にキラキラした目をアオイに向けてきていた。


「……で、島、ですか」

「はい!島です!」


 この世界で島と言えば、神話の時代あったとされる物。

 現在この世界にはないはずのものである。

 それを見つけた、と言うのだから興奮して当然なのかもしれない。


「うーん……飛べる契約獣はいますが……人を乗せて、は無理ですかね……」

「そうですか……」


 告げた瞬間明らかにシュンとしたレークに、アオイは苦笑いする。

 そして少し考え、コガネをチラッと見た。

 コガネはアオイにだけ分かるよう微かに頷く。


「方法は考えてみます。なので良ければ今日は泊っていってください」

「ありがとうございます!」


 分かりやすく表情を明るくしたレークに手を握られブンブンと上下に振られる。

 助手2人が止めに入り、アオイは笑って立ち上がった。

 客間から出て歩きつつ、アオイは家の陰に声をかける。


「トマリ」

「なんだ」

「場所、特定できるかな?」

「……やるだけやってみる」

「お願い」


 再び闇に溶けたトマリを見送り、アオイはそっとため息を吐く。

 自分の判断だけでどうにか出来ないことは持ち込まないで欲しかった。言っても仕方ないが。


 家の中に入り、モエギの作った美味しいご飯に舌鼓をうち、早く風呂に入って自分の部屋に上がる。

 ベッドに横たわって目を瞑り意識を浮かせれば、すぐに別の空間に着いた。

 真っ白な世界。何もない場所。そこに少しづつ色が付き、扉が作られる。


「ああ、いらっしゃい」

「こんにちは、白さん」


 扉を開けたコガネに似た雰囲気の青年に案内され、アオイは奥の部屋へと向かう。

 そこには黒髪の中性的な男性が待っていて、アオイに向かって手を広げた。

 とりあえずその腕の中に飛び込み、すぐに離れて目を合わせる。


「どうしたんだ?」

「聞きたいことがあるの」


 青年に進められてイスに座り、改めて向き直る。


「なんだ?」

「上空に浮かんでる島って何?」

「…………ああ、あれか」


 少し考えて、男性はポンッと手を打った。そして青年に向き直る。


「白、あれはずっとあるな?」

「ええ。ずっとありますよ。……浮かべておくと言ったのは貴方でしょう」

「そうだった。長らく触れられて居なかったからな、忘れかけていた」


 1人頷く男性と、やや冷たい目線を送る青年。

 2人の顔を交互に見て、アオイは次の質問をした。


「その島の探索に、私は協力していいの?」

「構わんさ。我の力は要らんのだろう?」

「うん。……いや、使ってる気はするけど……」

「それはお主の力だ。気にしなくていい」

「そっか……じゃあ、行って来る」

「うむ、気をつけてな」


 アオイは勢いよく立ち上がり、見送られて去って行った。

 閉まった扉を眺めて、青年は主に声をかける。


「あんなに簡単に許可を出して良かったんですか?」

「よい。ここまで来れば、いずれ行ける」

「そうですけど……」

「心配するな、そう悪い方には転ばんさ」


 ゆったりと言う主にお茶を出しながら、青年はアオイを案じるように再び扉に目を向けた。




 朝日が眩しい。まだ眠い。

 そんなことを思って布団にもぐろうとすると、コガネによって布団が剥がされた。


「ひどい……」

「起きない主が悪い」

「うう……おはよう……」

「おはよう。どうだった?」

「行っていいってさ」

「そっか」


 目を擦って伸びをして、コガネに急かされベッドから降りる。

 着替えてリビングに向かえばもうすでに朝食が用意されていて、トマリも席に座っていた。

 アオイを見て手に持った紙を渡してくる。


 軽く内容を確認しながら席に座り、一旦閉まって朝食を食べる。

 セルリアは今日も魔法の特訓をするらしい。

 コガネを連れて出かける、とだけ言って朝食を食べきり、トマリから渡された紙を確認して席を立った。


 コガネを連れて客間に向かい扉を開けると3人共ソファに座っていた。

 レークがアオイを見て勢いよく立ち上がり、両サイドから肩を抑えられ強制的に座らされる。


「おはようございます」

「おはようございます!キャラウェイ殿!」

「うーん……アオイと呼んでもらえませんか?」

「アオイ殿!」

「殿もなしで」

「アオイさん!」

「はい、おはようございます、レークさん」


 ふんわりと笑うアオイを見て、コガネはふと思う。

 主がここまでこだわるのも、少し珍しい。

 キャラウェイという姓は自分で付けたはずなので、気に入っていないわけではないはずだが。


「で、どうでしょう!何か方法は……」

「そうですね、人を乗せられるほどの大きさがある、飛べる生物と言うのも限られていまして」

「そ、それはつまり……」

「その子たちに協力を頼みましょう」


 断られると思ったのか、レークは恐る恐る聞いてきた。

 そしてぱあっと表情を明るくする。

 頭に犬耳、腰に尻尾が見えた気がした。勢いよく振られている尻尾が。


「そんなわけで、今から出発しようと思うのですが……」


 アオイの言葉にレークが反応し、だが何か言うより助手2人が早かった。

 レークをしっかりと抑え、助手たちは何か目で会話をしている。

 それを眺めながら、アオイは仲良しだなーと緩く考えていた。

アオイちゃんの正体を匂わせていきたい。

前作エキナセアにはばっちり書いてあるので、気になる方はそちらもぜひ(自然な誘導)

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