1,学者とお供
今日はよく晴れていて、シオンとコガネ、そしてセルリアが外で魔法の特訓をしていた。
セルリアの魔法の扱いはもの凄い速度で上手くなっていっている。
コガネは魔法特化種で人間とは魔法の扱い方が違うので上手くいくか不安だったそうだが、シオンやウラハも加わって問題なく特訓は進んでいる。
「……これは、近々追い越されるなぁ……」
「あら、マスターがそれを気にするとは思わなかったわ」
「まあ、魔法なら追い越されるだろうと思ってたけどね?」
リビングから外を眺めて、ウラハとアオイはお茶会である。
小鳥組は部屋で何かしているらしく、久々の2人のお茶会だ。
「セルちゃん、攻撃魔法も使えるんでしょ?」
「ええ。初期の魔法は大体出来てたわ」
「それは敵わないなぁ……」
アオイは、防御や援護の魔法はそこそこ使えるが、攻撃魔法が全く発動しないという少し特殊な人である。
基本的な魔法適正は低くないのに、なぜか攻撃魔法は発動しない。
昔モクランに魔法を教わっていたころは一周回って感心されてしまったほどだ。
「で、マスター?今日の来客はいつかしらね」
「それは分からないなぁ。……それとね、何となくね、薬屋のお客さんじゃない気がするんだ」
緩く話しながら眺めている先の3人は、今何をしようとしているのか忙しなく動いている。
コガネが何か大きな魔法を使う動きをしているのだが、本当に何をしているのだろうか。
気になるので見に行こうかと思ったら、コガネが動きを止めた。
そして森の方をじっと見つめて、家の中に居るアオイを見てくる。
本日の来客予想が当たったらしい。
キッチンの横にある扉から食糧庫に入り、そこから外に出る。
コガネは、アオイに駆け寄ってきて真っすぐに森を指さした。
「あっちから人が来るのは珍しいね?」
「そうだね」
コガネがそちらから目を離さないのは、警戒しているから。
ジッと見つめるだけで動きはしないので、危険なものではないようだ。
シオンがセルリアを連れて店に入って行ったので、それを見送ってアオイもコガネの向く先に目線を向ける。
しばらくして、足音が聞こえ始めた。
コガネは警戒を解いていないが、リコリスの結界が反応していないのだから悪人ではない。
少しして、森の中から人が現れた。
身体中に葉っぱやなんかをくっつけて、木の枝で擦ったのか細い傷もつけて、それでもキラキラとした瞳で進んできた1人の男と、その後ろから現れた少し疲れた様子の2人の男。
コガネは依然警戒態勢だが、アオイは男の子供の様な表情に警戒を止めている。
男は空間が開けたことに目を輝かせ、建物があることに目を輝かせ、アオイとコガネを見つけて駆け寄ってきた。
後ろの男たちが制止の声を上げるが、無視である。
まっすぐアオイの元に走ってきたその男はコガネに睨まれ、それも無視してアオイに話しかけてきた。
「貴女がアオイ・キャラウェイ殿ですか!?」
「……何で知ってるんですかねぇ……」
「顔は広いもので!」
元気よく言った男に、アオイは頭を抱えた。
一応は秘密であるはずの自分の居場所を知っている人物と知り合いらしい。
その知り合いが誰なのかは後で聞くとして、ひとまずコガネに威嚇を止めさせる。
その間に男の連れが近付いてきていて、男は腕を引っ張られてアオイから距離を置かされていた。
1人がそれをしている間にもう1人の男がアオイに謝ってきた。
「申し訳ございません、うちの馬鹿が」
「おいアルフ、俺は一応お前の主人だぞ?雇い主だぞ?」
「少し大人しくしててください」
アルフと呼ばれた男は引きずられていく男に面倒そうに言い放ち、アオイに向き直る。
「本当に、申し訳ない」
「あー……えーっと……うん?」
「主、定型文定型文」
「……あ、本日は何をお求めですか?」
「そう、それ」
混乱したアオイがコガネと話している間に、引き連れていた男は脱出してアオイに駆け寄ってきた。
そして、他2人の制止より早くアオイに話しかける。
「キャラウェイ殿は、飛べる魔獣と契約していますか!?」
「へ?」
「こら、レーク!」
「これが目的なんだからいいだろ!」
「よくねえ大人しくしてろ!」
言い合いを始めた2人の男の後ろから、先ほど男を引きずって行った方の男が近付いてきた。
そして、困ったように笑う。
「すみません、騒がしくて」
「あ、いえ。それで、なぜ契約獣……」
「そうですね、その説明も兼ねて、自己紹介をさせてください」
アオイに向けて綺麗な礼をして、男は笑顔を見せた。
「初めまして、僕はベーレスと言います。あの人、レーク・ヴィストレーンの助手をしている者です。もう1人の男はアルフ。彼も、レーク様の助手です」
「初めまして、ご存知の様ですが、アオイ・キャラウェイです。こっちは契約獣のコガネです」
「どうも」
コガネと揃って頭を下げると、それに合わせてベーレスも頭を下げてくる。
3人でペコペコしあった後、ベーレスはまだ何か言い合っている2人に目を向けてからアオイに向き直った。
「レーク様は考古学者でして。今回発見した物の調査に赴くのに空を飛べなければいけなくてですね」
「……それで、飛べる契約獣ですか」
「はい。急に押しかけて妙なことを言って申し訳ございません」
「いえ……で、その発見した物とは?」
「島です!」
横から勢いよく答えられ、アオイは少しのけ反った。
それも気にせず話し続けようとするレークをベーレスが引きずって距離を置かせている。
「島、ですか」
「はい!島です!」
「……とりあえず、座って話しましょうか」
客間に3人を誘導し、モエギにお茶を持ってくるよう頼みながらアオイの思考は急速に回転し始めた。
とっても元気。この学者とっても元気。




