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薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
6章・収穫祭
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0,夜会に行こう

6章行きます!

 第3大陸に、ガルダという国がある。

 アオイの師匠がいる国であり、世界でも有数の強者パーティー「クリソベリル」の拠点がある国だ。

 クリソベリルはギルドを通して国に雇われているパーティーであり、上流階級との関りも多い。


「おい、モクラン」

「ん?何リーダー」


 クリソベリルの拠点で、パーティーリーダーが1人の青年を呼び止めた。

 モクラン。よくアオイに会いに来る青年である。

 ハーフエルフである彼は、味方のサポートをする魔法が専門のはずなのだが、普通に攻撃も出来る万能魔法使いだ。強い。


「今度の夜会、お前に行ってもらおうかと思ってな」

「え、何で俺なの?今回だけ何かあったりするの?」

「上方の娘さんがお前を気に入ったそうでな」

「……拒否権は?」

「ないな。女性同伴可だぞ」

「……リーダー、時々性格悪いよね」


 モクランは深くため息を吐いた。

 リーダーの企みを一瞬で理解できるのも何とも言えない気持ちになる。


「断られたらどうするの?」

「アヤメとコーラルも行かせておく。お前が行かないなら2人に頼むさ」

「じゃあ俺行かなくていいじゃん」

「後が面倒だぞ」


 確信をもって言われれば、反論も出てこずもう一度ため息が漏れた。

 相手は曲者ぞろいのクリソベリルをまとめあげ、全員の手綱を握るリーダーだ。どうにも敵わない。


「……ついでに休みちょうだい」

「いいぞ」

「……すぐ?」

「任せる」


 無理だろうと休みを強請れば間髪入れずに許可が出て、仕方がないので部屋に戻る。

 普段からある程度まとめてある荷物を確認して、それを持って厩に向かった。


「参加状な。行かないなら向こうでアヤメに渡してくれ」

「分かった」

「行ってこーい」

「行ってきます」


 愛馬に跨り拠点を出る。

 人混みを避けて裏道を使いつつ門へ向かっていると、1つの建物から女性が出てきた。

 昼の月のような銀髪の女性だ。


 その人はモクランを見止めると、手に持っていた物を掲げた。

 モクランが止まるとそれを渡してくる。


「こんにちは、モクラン君。アオイちゃんの所に行くならこれを渡してくれる?」

「行きますけど……何で知ってるんですか」

「勘よ」


 にっこり笑って紙袋を渡してきたこの人は、ヒエン・ウィーリア・ハーブ。アオイの師匠である。

 妙な強者感がある人で、自由人で、とても優秀な薬師だ。

 アオイに対して過保護な所があるので、今回の届け物もそれだろうか。


「道中気を付けてね」

「はい」


 紙袋を荷物の中に入れ、再び馬を走らせる。

 ヒエンがなぜモクランの行き先を知っていたかなど、聞いても教えてもらえないし教えてもらっても理解できる気はしない。

 あの人が人外だと言われても納得できるほど謎な人なのだ。


 ガルダを出て、まっすぐ進むと魔物の大通りがある。

 突っ切っても問題はないが、面倒ごとに巻き込まれたくもないので迂回して進む。

 この馬は速い。多くの人が一泊する大陸の中心近くにある国に寄らず、その先の国に一日でたどり着く。


 第3大陸内で第4大陸に一番近い国、キマイラである。

 凹凸の多いこの国は、魔物の侵入などがガルダとは比べ物にならないほど多い。

 こういった国の方が、国民の戦闘能力が高い。

 アオイは初めてこの国に来たとき魔物に襲われ、情報屋に助けられたらしい。


 陽が落ちてきたので適当に宿を取って身体を休め、荷物の中から魔道具を取り出す。

 魔力を送って起動させ、すぐに荷物の中に入れた。

 そのまま眠りにつき、目が覚めると辺りは明るくなっている。


 早朝、まだ人の少ない時間にキマイラを出て第3、4大陸間の関所を通り抜ける。

 そこそこの頻度で通過するので、この関所の人間とは顔見知りだ。

 通り抜ける際に敬礼をされたので軽く手を挙げて返事をする。


 第4大陸に入ると、森の香りした。

 この大陸の3分の1は森だ。

 それが故かは知らないが、この大陸の緑は濃い。


 半分とはいえ、森に暮らすエルフの血が混ざっているモクランはこの大陸が好きだった。

 いや、好きというよりは、居ると落ち着くというだけなのだが。


「……バル」


 迷いの森が見え始め、愛馬に声をかける。

 愛馬は分かっている、というように速度を緩めた。

 馬に乗ったまま荷物を漁り、中から魔石が先端に括られた糸を取り出す。

 ついでに光っていた魔道具を止める。


 この森は魔力がやたらと高く、そのせいで方向感覚が失われる。

 森の魔力に負けるので魔法での位置の探知が難しく、リコリスに行くのは至難の業だ。

 この糸は、森の中で迷わないために作られた魔道具である。


 魔石にアオイの魔力を、糸に持ち主の魔力を込めてあり、魔力を当てるとリコリスの場所を示してくれる。

 込めた魔力と当てる魔力が一致しないと発動しないので、悪用される心配もない便利な道具だ。

 リコリスの常連客、つまりはアオイの知り合いたちは皆これを持っている。


 入り組んだ森を進み、しばらくすると木が間引かれ始める。

 そこから速度を上げる。リコリスはもうすぐだ。

 木のない空間が広がり、陽の光に目を細めた。


 立派な建物の前で黒髪の綺麗な女性が嬉しそうにこちらを見ていた。珍しく髪を2つに結っている。

 馬を止めると駆け寄ってくる彼女を見て、いつも通りその後ろを付いてくる白髪の少女を見て、その後ろから顔を覗かせる見知らぬ少女に首を傾げた。

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