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薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
3章・悪魔の目
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10,夜空を見上げて

 夜、セルリアは目が冴えていた。

 普段ならとっくに眠っている時間である。

 長々と本を読んでいたのが悪かったのか、目が冴えて眠れない


 どうしようか考えて、シオンの部屋に行こうかな、と思った。

 シオンの隣はよく眠れる。

 もぞもぞとベッドから降りて、部屋を出る前に窓の外を見る。


 今日は明るいから、月が見えるだろうと思ったのだ。

 窓の外には、予想通りの丸い月と、予想外の人物。

 隣の部屋に居るだろうと思っていたシオンと、ウラハ、アオイが並んで何かしていた。


 何をしているのか気になって、窓から眺めているとシオンが振り返った。

 起きていることを咎められるだろうか、と思ったが、シオンは笑顔で手招きした。

 階段を駆け下り、玄関ではなく食糧庫の扉から外に出る。


 駆け寄ると、シオンが口に人差し指を当ててくる。

 そのまま手でアオイの方を示され、手で口を覆った。

 頭を撫でられ、いつものように後ろから抱きしめられる。


 しばらく無言の時間が続き、ウラハがそっと声を出した。

 アオイがそれを聞いて動き、また無言になる。

 何度かそれが続き、アオイがフッと息を吐いた。


「あれ、セルリア。眠れなかったの?」

「うん」


 セルリアに今気づいたようで、微笑みながら頭を撫でてくる。

 そして、申し訳なさそうに眉尻を下げた。


「魔力高めてたから、それでかな。ごめんね」

「ううん。なにしてたの?」

「月と星がいい位置にいたから、特殊な薬を作ってたの」


 そう言って、アオイは持っていた小瓶をセルリアに見せる。

 中には液体が入っていて、それは夜空の色に染まっていた。

 キラキラと輝く液体を見てセルリアは声を上げる。


「きれい」

「でしょう?」


 にっこりと笑って言われ、もう遅いから、と促される。

 シオンももう寝るようで、一緒に家の中に入った。


「シオンにい、いっしょにねていい?」

「ええよ。一緒に寝よ」


 シオンの部屋に入り、すっぽりとシオンの腕の中に納まる。

 一定のリズムで優しく背中を叩かれているうちに眠気が襲ってくる。

 抗うことなく目を閉じて、セルリアは夢の中に入って行った。


 腕の中ですやすやと寝息を立てるセルリアを眺めて、シオンは欠伸を噛み殺した。

 眠くないわけではないが、何となくセルリアを眺めていたい気分である。

 だが、その努力もむなしくすぐに意識は落ちて行った。


 眩しい光を感じて目を開くと、シオンはすでに起きていた。

 セルリアが起きたことに気付いて頭を撫でてくる。


「おはよう、セルちゃん」

「おはよ……」


 まだ寝ていたい気もするが、シオンに促されてベッドから降りる。

 着替えるために部屋に戻り、出てくるとシオンの部屋の扉が開いた。

 目が合って、同時に笑う。


 そのまま一緒に下に降りて顔を洗い、モエギの作る朝食の香りにお腹が鳴った。

 コガネがアオイを起こしに行き、トマリがどこからか現れる。

 ウラハが食器を並べ始めたのを手伝い、アオイが起きてきたらちょうど朝食が出来上がる。


 なんとも平和で幸せな、リコリスの朝である。

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