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薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
3章・悪魔の目
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3,買い物

 シオンがセルリアに家の中の紹介をしている時間、コガネとトマリは出店リコリスの準備をしていた。

 今日はフォーンへの出店日である。

 準備を終わらせ、出発しようとしたところでモエギに声を掛けられた。


「これもお願いします」


 そう言って渡されたのは、買い物の追加リスト。

 1番目を引くのは、最低量の記載がある「布」


「何に使うんだ?」

「セルちゃんの服です」

「ああ、なるほど。色は?」

「任せます」


 にっこりと微笑まれ、コガネは何かあったらトマリに責任を押し付けよう、などと考えた。

 トマリはそんなことを考えているなど知らずに声をかけてくる。

 今度こそ準備を終わらせ、フォーンに向けて出発する。


「今日はなんだー?」

「食料、ビンの原料、あとは布と絵本だな」

「食料が最後だな」


 買い物の予定を立てつつ、トマリは店を引く。

 コガネは足を投げ出して座りながら、メモを眺める。


「布、何色がいいと思う?」

「さあな、任せる」

「怒られたらトマリの所為な」

「分かった、考える」


 自称センスが悪い組は、頭を悩ませた。

 なぜウラハを連れてこなかったのか反省しつつ、何ならいいだろうかと本気で考えた。


「コガネ得意だろ?よくアオイの服見繕ってるじゃねえか」

「あれは既存品だ。布からは分からない」

「……どうすんだよ」

「店員に聞くか……」


 話している間にフォーンに到着する。

 いつも通り移動しながら商品を売り、トマリはその間に通りの店を確認する。

 服屋はあっても、布を売っている店となるとなかなか見つからない。


「少し離れねえとかもな」

「分かった」


 ある程度移動したら、隙間に店を置いてトマリが買い物に出る。

 コガネは店番をしながら帰って来るのを待ち、何かあれば連絡を送る。

 いつも通りだが、今日は布を買うというミッションがある。


 トマリは布の売っている店に入ってから悩み、少し考えてウラハに連絡を取った。

 どうしてすぐに思いつかなかったのか、これが1番確実である。

 魔力契約の契約獣の利点を割と無駄遣いしながら布を無事購入し、一旦出店リコリスに戻る。


「買ったのか」

「ウラハに連絡取った」

「なるほどその手が」

「あったな。何ですぐ思い浮かばなかったんだろうな」


 緩い会話をしながらトマリは再び買い物に出る。

 コガネはのんびりとそれを待ちながら、フッとため息を吐いた。

 今日は面倒ごとに巻き込まれる日のようだ。


 迷いの森方面から大きな魔力が近付いてきていた。

 気付いている者は騒ぎ始め、分からぬものは気付いている者に教えられて動きだす。

 関係ない、とここに留まっても良かったのだが、この魔力は門番では対応不可能だろう。


 コガネはもう一度ため息を吐いて、トマリに連絡を送った。

 魔力の方に行く。店には保護をかけるが、何かあったら頼む。

 トマリからはすぐに了解の返事が来た。


 コガネは店を飛び出して人混みの中を走った。

 多くの人が魔力に気付いて止まっており、普段より動きやすい。

 人混みを走り抜けると、壊された外壁と数人の冒険者が見えた。


 走ってきた勢いそのまま、外壁に乗っていた魔物にドロップキックをかます。

 後ろからどよめきが聞こえてくるが無視して着地し、そこに居た冒険者に声をかける。

 ここで魔物の侵入を阻もうとしたらしい。


「王城に連絡は?」

「い、いってます!」

「そうか。離れてろ」


 声を掛ければ、すぐに離れた。

 何の縁か、常連の少年である。

 少年が外壁からある程度離れたところで、魔物が再び外壁を登ってきた。


 軽く魔法を飛ばして、それに反応している間に情報を読み取る。

 魔物の中位種だが、迷いの森で高めたのか他の個体より魔力が高い。

 暫定的に上位種としよう。


 正直に言えば、これと戦う理由はあまりなかった。

 だが、フォーンが壊れればアオイが悲しむだろう。

 そんな考えでコガネはここに居た。


 フォーンの現国王は勇者だし、先代勇者が2人ほどこの国に居るので動かなくてもいいかと思ったが、彼らは自由に行動できなさそうだ。

 ゆったりと考えながら魔物の攻撃に合わせて上に飛び、懐から短剣を取り出した。


 森の獣王という魔獣の牙、上の左6番目から作った短剣である。

 魔力とも相性が良く、基本的に魔法を主体に攻撃する白キツネとの相性がいい。

 ちなみに、魔法を主体で攻撃するのは「基本的な白キツネ」である。当然例外もある。


 コガネは短剣を逆手に持って魔物の上を飛び越え、後ろから斬りつけた。

 魔物が振り返る動きに合わせてもう一度飛び越え、魔法で動けなくして攻撃を継続する。

 魔物の攻撃でフォーンに被害が出そうになったら、一度離れて結界を張り、それが終わったら再び接近して攻撃する。


 あまりにも鮮やかに、一方的に事は進んだ。

 連絡を受けて王城から騎士団が出てきたときには、もう魔物は仕留められた後だった。

 騎士団長がコガネを見つけ、部下を置いて近づいてくる。


「お手数お掛けしました、コガネさん」

「別に。……処理はしないぞ?」

「はい。あとはお任せを。後日報酬をお届けします」

「あー……主になんて言おう」

「そのまま伝えればよいのでは?」


 騎士団長と知り合いらしい、とそれを知らない騎士団員や冒険者がざわついているのを無視してコガネは出店リコリスに戻る。

 トマリが先に戻ってきていて、報酬だ何だと話をしながら店を動かした。


 混乱に乗じて国外に出て、そのままリコリスに帰る。

 後々フォーンの王城にもいく用事が出来たかもしれなかった。

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