表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
2章・血をすすぐ雪の剣
20/190

11,王宮からの手紙

 時折面倒ごとを抱えた客が来るとは言っても、普段のリコリスは平和なものだ。

 今日なんかは特にその平和な日で、天気もいいし風も穏やかである。

 ウラハとサクラは楽しそうに洗濯をしていて、シオンは庭で昼寝に勤しんでいる。


 トマリの姿が見えないのは……まあ、いつもの事だ。

 アオイとコガネは畑で薬の材料を収穫していた。

 丁寧に1つ1つ収穫し、カゴに入れていく。

 しばらく無言で続けていたのだが、コガネがふと顔を上げた。


「主、何か来るよ」

「え?本当?今日は来客はないと思ってたんだけどな……」


 コガネにつられて顔を上げれは、空に美しい鳥が飛んでいた。

 優雅に旋回してアオイの近くに来た鳥を見て、確かに来客ではないな、と思った。

 その鳥はアオイが伸ばした手に止まり、スッと足を差し出してくる。


「ありがとう、少し待ってくれる?」


 アオイの問いかけに足を降ろすことで答え、飛び立って先にアオイの部屋の窓に移動した。

 慣れたように手紙を運んできたこの鳥は、イピリアの女王が個人的な用がある者に出す使いだ。

 アオイが部屋の窓を開けると、再度足を差し出してきた。


 手紙を受け取っても出て行かないのは、返事を貰うためだろう。

 アオイは手紙を開き、内容を確認して手早く返事を書いた。

 それを持って鳥は去って行く。


 アオイが下に戻ると、コガネが収穫を終わらせて入ってきていた。

 ありがとう、と頭を撫でれば、何だった?と聞かれる。


「カーネリア様がお茶しに来いって」

「ああ、いつもの」


 イピリアの女王、カーネリアとアオイは友人だった。

 アオイが最上位薬師の資格を取った時、王宮に来ないかと聞かれて唯一すぐに断れなかったのがカーネリアの誘いである。


 彼女はアオイを唯一の友人としており、時折こうして遊びに来い、と手紙を寄こす。

 出会った当時は王女だった彼女は女王となり、王宮から出ることは出来なくなっていた。

 退屈だ、街に出たいとぼやくのはいつもである。


「いつ行く?」

「次にイピリアに店を出すときに一緒に乗ってくよ」

「分かった。帰りに回収するね」

「お願いね」


 ぐっと拳を握って言うコガネに笑いかけながら、アオイはモエギを探した。

 食糧庫で食事の内容を考えているモエギを発見し、イピリアへの同行を願う。

 すぐに笑顔で頷かれ、ついでに何が食べたいか聞かれた。



 アオイのリクエストで作られたサンドイッチを頬張りながら、ウラハとモエギが何やら盛り上がっていた。

 内容は、アオイが提案したサプライズの用意であり、主な実行役になるであろう2人は食事が疎かになるほど大いに盛り上がっていた。


 ……楽しそうだな。混ざりたいな。

 そんな目線をサクラが向けているが、珍しくモエギが気付かないほどの盛り上がりである。

 アオイはそれを微笑ましそうに見つめ、サンドイッチを頬張る。甘辛いタレが肉によく絡んでいて、葉野菜はシャキシャキと歯ごたえがいい。


 黙々と食べていたアオイは、ふと気づいて顔を上げた。

 いつの間にやらトマリがいない。

 皿の上に乗ったサンドイッチは無くなっているので、食べ始めた時に居たのは見間違いではないようだ。


 どこに行ったのやら。

 考えてみても、彼の考えが分かる訳はない。

 それでも、食事の後くらいゆっくりすればいいのに、と思った。

 反対にシオンはゆっくりし過ぎである。先ほどまで昼寝をしていて、多分この後も昼寝をしに庭に出るのだろう。


 食事が終わり、モエギとウラハは紙とペンを用意して本格的に話し合いを始めた。

 トマリはいつの間にやら戻ってきて、またどこかに消えて行った。

 アオイは特にすることもなく、少し悩んでシオンの横に寝転がった。


「マスターも昼寝?」

「うん。たまにはね」


 アオイが寝転がると、コガネも寄ってきて光合成、と言いながらいそいそと横になる。

 3人並んで昼寝をして、気付いたらサクラとトマリも寄ってきていた。

 この家の契約獣は1つの所に集まる習性があるのかもしれない。

2章はこれでおしまいです。

3章に時間がかかるかもしれません。期間が開いたら、ごめんなさい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ