表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
おまけ
188/190

神の影

 神獣、と呼ばれるものは12種いる。

 それらは神の手足として神と、その代行者を助ける存在だ。


 それとは別に、影獣と呼ばれる3種が存在している。

 彼らは神の影である。世界を作る際に行われた闇の中の行為は、そのほとんどが彼らによって実行されていた。


 闇の魔力だけ3種に分かれているのは、彼らがそれぞれ操ったものが違っていたからとかそうでもないとか。

 あまり表舞台に出てはこないが、その存在は確実に世界へ影響は与えていた。

 それぞれ種族の名を、黒虎クロコ蛇蝎ダカツ影狼カゲロウという。


 黒虎が操るのは闇の第一種、闇をそのまま操る力。

 闇を触れられるものとしたり、闇の球を作って打ち出したりと分かりやすいものが多い。


 蛇蝎が操るのは闇の第二種、搦め手と言われる力。

 敵の足元にある闇を触れられない物とし、相手を落としたりとやることは一番えげつない。

 そしてそれとは別に、彼らはこの世界で唯一死霊術を操る種族である。


 影狼が操るのは闇の第三種、闇と同化する力。

 ひとたび闇に溶ければ、どこにいるかなど分からない。影が繋がっているところならばどこへでも通り抜けられる力だ。


 彼らも神獣と同じように、神のもとにいた者たち。神の力となっていた者たち。

 だが、彼らは神獣と違い神を主と讃えはしないのだ。

 特に蛇蝎は、神獣合わせ15種の中で唯一直接的に神への害意を口にする。


 何かあったら沈めてやろう、その息の根止めてやろう。

 だが、ただやるのも面白くない。

 間違えない限りは力を貸してやろうか。


 そんなことを、世界を作る前の世界で言ったとか言わないとか。

 それでも今まで害をなしていないのは、彼らの中で神は未だ間違えていないということらしい。




「……トマリー」

「なんだ?」

「蛇蝎に会いたいんだけど、どこにいるだろ?」

「……知るかよ」


 彼らはその害意を神の代行者であるアオイにも向けているはずで、それをアオイも知っているはずである。

 それでもこんなにも気軽に会いに行こうとする精神がトマリには分からなかった。


 あの種族が面倒なのは、同じ影獣に数えられる身であるからよく知っている。

 思考が読めない、目的が読めない、手段が読めない。

 明らかに同じものを見ていない。本当に同じものを見て話しているのか分からなくなる。


 何が面倒かといえば、やつらはそれを分かっていてやっている。

 死霊術、ネクロマンスと呼ばれる力を行使するときには何かこだわりがあるらしく、使えと言ってもこれではいやだ、あれではやらんと文句ばかり言ってくる。


 そもそも影獣でまともに意思の疎通が出来るものなど黒虎くらいなのだ。

 トマリは過去色々あってアオイのもとにいるが、他の影獣神獣に見つかるたび会うたび「珍しい、意外だ、不思議だ」と散々言われる。


「トマリ、考え事してるとこ申し訳ないんだけどもね」

「おう」

「ちなみに黒虎の居場所は知ってる?」

「……何でわざわざ会いになんて行くんだよ」

「会いたくなった」

「意味わかんねぇ」


 ため息を吐いて影の中に沈もうとすると、笑顔で腕を掴まれた。

 逃げるな、ということらしい。


「実は昨日、神獣たちにあってきてね」

「あー……天の方か」

「そう。で、ふと影獣って影狼しか会ってないなーと思ってね」

「会うもんじゃねえよ諦めろ」


 諦めろ、などと言ってみたが。

 こうなってしまうとアオイは早々折れないことを知っている。

 なので、手を振りまらって闇に沈みコガネのもとに顔を出した。


 そのまま先ほどの会話を伝えると、コガネもため息を吐く。

 アオイが会いたいという種族は、なぜこうも面倒なものばかりなのかと嘆いてみる。

 それでも諦めてくれない気もしているので、面倒だが黒虎と蛇蝎の居場所を探してみることにした。


「まあ、さっさと会わせるのが早いやろなぁ」

「そうね。来てもらうか会いに行くかで言ったら、行った方がいいもの」


 シオンとウラハもそんなことを言うので、面倒だし嫌だが探すしかない。

 神獣はそれなりに仲のいい集まりだが、影獣は全員が全員自分以外狂っていると思っている集まりだ。

 息が合うわけもなく、基本お互いの顔も見ないし関わりたくない。


「……黒虎だけで満足したりしねぇかな」

「ないやろうなぁ」

「ないでしょうね」

「はぁー……蛇蝎は会いたくねえんだよ」

「知ってるわ」

「トマリが全力で駄々こねたらマスターも諦めるんちゃう?」


 それは嫌だ、シオンの頭を小突く。

 影狼は蛇蝎が苦手で、蛇蝎は黒虎が苦手で、黒虎は影狼が苦手な三竦みをしているのが影獣である。

 もう根本としてお互い会いたくないのだ。


 神がどうしてその三種をひとまとめにしたのか、それだけはずっと疑問だし纏めるなと文句を言いたい。

 どんなに文句を言ってもどうにもならないなら、せめて心の平穏のために黒虎から探すことにしよう。

 アオイには逐一文句を言っていくことにする。そうしていれば、諦めるかもしれない。



 トマリが文句を言いつつ黒虎を探し始めたのを眺めつつ、アオイは神が言っていた言葉を思い出す。

 「自分に好意的なものだけの世界は心地いいが、歪であろう。不和もなければ回らんさ」

 それを聞いてしまったので、居心地がいい場所に引きこもっている身としてはなんだかいたたまれなくなり。


 嫌がられるだろうとは思っていたし申し訳なくも思うのだが、それでも我が儘をいって一度くらい会いに行ってみるべきだろうと思ったのだ。

 全てを言う気はないが、コガネ辺りは何か察していそうである。

影獣って、そういえば私の頭の中以外に出てこないなーと思いまして。

ちょっとだけでも触れておこうと書き散らかしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ