オリジナルスキル 5
「はーい、目は開けていいよー」
光が放たれた後、のんびりとした口調でレヨンが言った。
それに合わせて目を開けると、ひらひらと舞っている紙をレヨンが捕まえたところだった。
「……おしまい?」
「そ、おしまい。これがセルリアちゃんのスキル判定結果」
不思議そうにレヨンを見上げたセルリアに答えて、レヨンは持っていた紙を差し出した。
アオイたちも部屋に入ってきてその紙を覗き込む。
そこには、人間のものではないであろう作られたように綺麗な字で内容が書き込まれていた。
〈オリジナルスキル有り
スキル名・風の愛し子
スキル内容・風の精霊による加護及び祝福。あらゆる風魔法への適性があり、風の精霊を視聴する力を持つ
魔力・4 〉
以上が紙に記載されていた内容だ。
スキルがない場合はそっと〈あなたにはスキルがないよ……〉的なことが記入されるのだが、セルリアは予想に違わずスキル持ちだったようだ。
「……風」
「お、やっぱり」
「レヨンさん分かってたんですか?」
「いや?ただ、出るなら魔法関連だろうしそれなら属性も風だしそこらへんかなーと」
「おお……流石3分の1エルフ……」
紙をもって固まってしまったセルリアを気にしながらも、アオイたちはのんびりと会話を続ける。
そして、ここで話すのもあれだし、というレヨンの一言でリビングに戻って来るのだった。
「さて。無事出たわけなのだけど」
「そやねぇ。んで、セルちゃんはどうしたん?」
「あの、あのね?魔力4って、すごいでしょ?」
「うん。そうだねぇ。私より上だねぇ」
「そんなスキル、私が持ってるの?」
つまりは実感が湧かないらしい。
不思議そうな、少し不安そうな顔をしたセルリアの頭を撫でてアオイは緩い笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ、私も身の丈に合わないスキル貰ってるし」
「……そうなの?」
「そうなの」
「うん。まあ。アオイちゃんは一旦置いといてだね」
「置いとかれた……!?」
「セルリアちゃんは、事実すでに加護は貰ってるんだよ。そのとっても可愛らしいおめめ、その緑色は風魔法の適応能力というか風の魔力が貯まりすぎたが故のものだろうからねぇ」
当然のように言ったレヨンに、アオイとセルリアが揃って驚きの表情を浮かべる。
セルリアがリコリスに来る理由になった緑の目は、精霊の加護だったらしい。
加護ついでに祝福を貰い、風の精霊なら見えてしまうらしいからその程度の影響力はあって当然なのかもしれないが。
「加護、だったの……」
「貰わない方が良かった、って思うかい?」
「……ううん。なかったら、アオイ姉さまにもシオンにいにも会えなかったもん」
「セルちゃん、なんていい子……!」
感動しているアオイの横で、シオンがそっとセルリアの頭を撫で始め名を上げられなかったコガネが若干悲し気な目をした。
それを全て見ていたレヨンは心底楽し気に笑い、そしてパンっと手を叩いた。
「よーし、とりあえず夕食にしよう。仕込みはしてあるから焼くだけさ」
「お手伝いしまーす」
「わ、私も!」
話の続きは夕食後、である。
一先ずは夕食を作り、食べながら話は盛り上がり。
片づけた後にも盛り上がり、深夜まで話し込みそうになってコガネのストップが入った。
翌朝、シオンとセルリアは街の探索に出かけていき、その間レヨンとアオイ、ついでに巻き込まれたコガネは雑談に興じることにした。
「んで、アオイちゃんからのそれはもうその時点で鑑定代分くらいの価値があるねぇ」
「え、そんなにですか?」
「そんなにそんなに。それに加えてこれはねぇ……」
「ふふ……まあ、迷惑料込ってことで」
「おっけーい。保管だけにするわ」
アオイが持参したものの話は早々に終わらせて、レヨンからのちょっとした以来の話も早々に終わらせて。
後はお互い仕事など関係ない単純なおしゃべりだ。
そちらの方が盛り上がり、昼食を食べた後ものんびり話していたら気付けば夕方になっている。
シオンとセルリアが帰ってきたので時間の経過に気付き、揃って夕食の支度をして食事を済ませれば明日の移動に向けて後は寝るだけだ。
出発は、やはり朝のうちに。
名残惜しそうなレヨンにまた遊びに来る、と告げて別れ、リコリスには帰還の連絡を入れる。
夕方には到着出来るだろうから夕食はいる、とそれだけ主張し連絡を切って、そっと馬の速度を上げた。
先にセルリアのスキル内容は知らせてあるので、リコリス内は今その話題で盛り上がっていることだろう。
セルリアの属性についてはもうすでに全員が認識していたが、これから更に魔法が風に偏っていきそうである。
セルリアが学びたいといえば別の属性も教えるだろうが、ひとまずは風が優先だ。
その方が出来ると分かっているので、まずは出来ることからである。
「セルちゃんはやっぱり大魔法使いの卵だったのかなー」
「そうかもな。精霊が見える時点でそうだとは思うぞ」
「そうだよねぇ。普通見えないんだもんねぇ」
「見えてるから実感ないけどな」
「そうだねぇ」
アオイとコガネののんびりとした会話には気づいていないらしいセルリアは、馬の上で楽しそうにはしゃいでいる。
その姿を微笑ましそうに眺めつつ、アオイはまだ小さな妹の未来に思いを馳せるのだった。
これでおまけそのその2はおしまいになります。
次は……本編関係ないけど書きたいので黒ウサギの話とか書いてると思います。
黒ウサギと闇蝶がお気に入りなのです。