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薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
15章・地の底
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10,報告

 ゾンビやら魔窟やら、盛沢山だった日から一夜明け、アオイたちは報告のためにギルドを訪れていた。

 昨日の夜のゾンビと謎の発光は、やはり話題にはなっているようだ。

 だが、誰も詳細を知らないし、もうどちらも消えてしまったから調べようがない、らしい。


 それらのすべてはトマリが拾ってきた噂なので、詳しいことはギルド長に聞くとしよう。

 そんなわけで眠い目を擦って服を着替え、朝は早くからギルドを訪れた。

 白髪の青年を伴ったフードの小柄な人影、というだけでアオイだと認識したのか、職員の方から声を掛けられる。


 ギルド長の職務室まで案内されたので、入室前にフードは取って笑顔で報告に訪れた。

 ギルド長は、何やら書類に囲まれて忙しそうである。

 あまり長いはしない方がよさそうだ。


「ああ、キャラウェイ様、よくぞいらっしゃいました」

「おはようございます。魔窟内部のご報告を」

「ありがとうございます。どうぞおかけになって下さい」


 促されてソファに腰を下ろし、アオイは正面に来たギルド長を見据えた。

 コガネが内部の罠やら道やら、アオイには良く分からない報告をしているのを聞きながら、ただじっとギルド長を見つめる。


 それでも揺らぎのなかったギルド長に若干の笑みを零し、さてどれをどこまで話そうか、と今更になって考える。

 全てを言うわけにはいかないが、全て言わないわけにもいかないのだ。


「それで、最深部は……」

「若干崩れてはいましたが、穴は見つかりませんでしたね」

「そう、ですか……」

「魔力による修復の跡があった。それで塞がったんだろう」


 コガネが理由を付け加えてくれたので、これで穴に関しては逃れられるだろうか。

 地竜が地面を動かすのは、正確には魔法ではないらしいが魔力を使ってはいるらしい。

 魔力による修復、なら嘘は言っていないのだろう。


「それと、もう一つ。昨夜の謎の光はご覧に?」

「魔窟から出てきたら、急に光始めましたねぇ。何かを認識する前に消えてしまいました」

「なるほど……そうですか」

「あの光が何か、分かりそうですか?」

「残念ながら。何も痕跡がないもので……」

「そうですか……報告は、これだけかな?」

「そうだな」

「そうですね。お忙しい中ありがとうございました」

「いえ、こちらこそ無理を通していただきまして」


 笑顔で言い合って、これにて魔窟関連のやることは終わりである。

 それ以外の用事は特にないので、このままリコリスに帰ることになりそうだ。

 ギルドから出て、帰る前に市場を見ていこう、と船に乗る。


 コガネがモエギに連絡を取って、何か必要なものがないか確認している間、アオイは何となく興味をそそられる出店を眺めて暇を潰していた。

 コガネが連絡を終えて船を漕ぎだしてから、気になるものを指定してそれを眺めてみたりして、ある程度買い物を終わらせる。


 トマリは先に馬を借りてくると言っていたので、買い物が終われば後は帰るだけだ。

 買い忘れがないか確認して、船を返して陸に上がる。

 まっすぐ歩きだしたコガネについていくと、トマリのもとに着いた。


 何かしらの確認方法を持っているのか、単純に魔力が特殊でたどりやすいのか。

 どちらもありそうだが特別聞いてみる気もないので、何も言わずに馬にまたがる。

 それと同時にトマリは闇に溶けていった。


「夕方までにつくかな?」

「ああ、今日は天気もいいからな。駆けていけば日暮れに間に合う」

「じゃあ夕飯はモエギのご飯だ」

「そうだな」


 ゆるゆるとそんな話をして、国を出て馬を走らせる。

 通り道には昨晩ゾンビが大量発生していた場所も入っていたが、光の後も闇の後も何も残ってはいなかった。


 その代わり、少しだけ地竜の魔力が感じられる。

 彼を知っていて意識していなければ気付かない程度の残り香だ。

 おそらく、後処理までしてくれたのだろう。


 機会があれば、何か手土産をもってもう一度訪れてもいいかもしれない。

 闇蝶は来るなと言っていたが、やはりそちらにも何か持っていきたい。

 そんな気分である。


「嫌がられるかなぁ」

「不安なんだろう。置いてくるだけ置いて、ささっと戻ってくればいいんじゃないか?」

「なるほど。……あ、もしくは光魚と一緒に行くとか?」

「それでも反応は同じだと思うぞ」

「そっかー」


 それなら、単身乗り込んでもよさそうだ。

 向こうは嫌がるだろうが、こうなっては意地である。

 手土産は何がいいだろうか、なんて考えながら馬に揺られていると、移動の時間はあっと言う間だ。


 気付けば関所に来ていて、気付けは森の入り口に着いている。

 森に入れば、もうリコリスまで秒読みだ。

 到着と同時にセルリアが飛び出してきたのでそれを受け止めて、馬を返しに行くらしいトマリを見送って家の中に入る。


「ただいまー」

「おかえりー」

「あ、お帰りなさい!」

「ただいま。夕飯なーに?」

「豚肉のソテーです」

「お腹空いてきた」


 今回のお出かけの報告は、夕飯が終わった後だ。

 今は荷解きと夕飯の手伝いが最優先事項であり、それ以外にやることはそんなにない。

 夕飯中は留守の間にあった細々した報告を聞いて、いつも通りに1日が過ぎ去った。

15章はこれで終わりになります。

次、16章で予定通りならリコリス完結……になりそうです。

もう少しお付き合いいただければなと。

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