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薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
15章・地の底
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3,ギルドへ

 ケートスには日暮れ前に到着し、馬を返したところでトマリが合流した。

 アオイたちの到着までそれなりに時間があったので、宿も取っておいてくれたらしい。


「じゃあ、宿の中で報告を聞こうかな」

「おう」

「なら、先に食べるものを買っていこう」

「お、なら向かう先は一つだ!」

「それも見つけてあるぜ」

「流石有能!」


 ケートス。第3大陸にある、外海に面した国だ。

 その国土は陸より水の面積が広く、移動は専ら船である。

 店も船であることが多く、アオイは基本買い物に手間取る。


 アオイが昔いた国、ガルダとはそれなりに近く、昔からよく来ていた国でもある。

 そんな国で、初めて来たときから変わらない習慣があった。

 食事を買う店である。


 アオイもコガネも小鳥たちもほれ込んだパン屋があるのだ。

 店主のお姉さんとも顔見知りになってしまうほど、来るたびに探す店である。

 この店も船の上なので、探さなければいけないが今回はトマリが探しておいてくれた。


 船の操縦を任せてあたりを見渡している間に目的の店の前まで来ていたらしい。

 店主のお姉さんが笑顔で手を振っているので、アオイは周りから見えない程度にフードを持ち上げた。


「こんにちはー」

「こんにちは。久しぶりね」

「そうですね。久々に来ました」


 少し話をして、夕飯と朝食を買い込む。

 昼食まで買ってしまおうかと思ったが、それは流石に止められてしまった。

 なので買い込むのはそのくらいにして立ち去り、そのまま別のものも少しだけ購入して宿に向かう。


 トマリの取っておいてくれた宿は、防犯がとてもしっかりしているところだった。

 基本的にトマリには突っかかっていくスタイルのコガネもこういったことは信頼しているようで、宿探しで文句を言っているのは見たことがない。


 ケートスの宿は、1階は水面になっているものが多い。

 鍵を開けてそこに入り、船を置いておける。

 そこから階段を上がると部屋があるのだ。


「ほー。いい宿」

「そうか?まだ上はあるだろ」

「昔泊まった宿基準だよ。まあ、大体どこも防犯重視でそれなりの宿だったけど」

「危険なところに主を止めるわけにはいかないからな」

「コガネは昔からブレないよね……」

「宿選んでたのは基本サクラとかモエギとかじゃねえのか?」

「そうだった……うちの子みんな過保護……」

「過保護にいかないと主は色々と巻き込まれるだろう」

「そうでした……お手数おかけしました……」


 昔の話になったらアオイに勝ち目はないのだ。

 今よりずっと守られていたのだから。

 ……いや、今も十分守られているのだが、今はアオイがより自分のことを理解したので多少守りやすくなったのだ。


「……んで、トマリの話を聞こうかな?」

「おう」


 置いてあるイスに座って、アオイは微笑んだ。

 真面目スイッチが入ったのを認識したのか、トマリとコガネも真顔になる。


「とりあえず、表立って騒がれちゃいねえな。ただ、噂を聞いて集まってきてるやつらはいる」

「立ち入り許可は?」

「今んとこ、誰にも出てねぇ。ま、どうにかなりそうではあるがな」

「例えば」

「単にオレかコガネがいりゃ行けるだろうよ」

「おっとー。これは私いらないやつかぁー?」

「んなわけねえだろ。話し通すにもある程度の地位はあったほうが楽だ」

「主、薬師免許は?」

「持ってきてるよ」


 コガネの淹れてくれたお茶を啜りながら荷物を漁って薬師免許を取り出す。

 2人が頷いたので荷物の中に戻し、アオイはぼやいた。


「……朝一で行くべきだよね?起きれるかな……」

「起こすから安心しろ」

「お手柔らかに……」


 早朝に起こす宣言をされてしまうと、アオイは早々に寝るしかない。

 何せ寝起きがよろしくないのだ。

 どうせ布団を引っぺがされるが、それでも少しでも長く寝ていたい。


 そんなわけでさっさと夕食を済ませて、風呂も済ませてベッドに潜り込んだ。

 トマリは姿が見えないが、夜に何かするのだろうか。


「おやすみ、主」

「おやすみー」


 コガネに返事をして明かりを落とし、移動の疲れもあってアオイの意識は早々に落ちた。

 基本夢を見ないアオイの眠りは深い。

 気が付けば朝であり、それを認識したのはやはりコガネに布団をはがされたことだった。


 唸っても藻掻いても布団は帰ってこない。

 そして代わりに着替えを渡され、アオイは抵抗をやめて身体を起こした。

 アオイが起きたのを確認してコガネはベッドルームから去って行く。


 着替えながら窓の外を見ると、まだ朝日が昇り始めたころである。

 それでも朝市は始まっているらしく、外からはそれなりに賑やかな声が聞こえてきた。


「おはよう」

「おはよう主。朝食を食べたら行こう」

「はーい。トマリは」

「居るぞ。ギルドは開いてる」

「そっか。ありがとう」


 呼べば陰から出てくるトマリは、報告を残してまた陰に消えていく。

 朝食はもう済ませたようだ。

 アオイが朝食を食べ終わると、宣言通りすぐにギルドに向かうことになった。


 アオイはケートスのギルドに入るのは初めてだ。

 実を言うと、位置も分かっていない。

 いつも通り、そのあたりは任せきりである。

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