表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
13章・古の事柄
139/190

2,解析の結果

 レークたちが来たのは今日の昼間らしい。

 客間は以前も使っていたので説明は省き、先に今回の要件を聞いてしまう。


「それで、今回はどうなさったんですか?」


 客間のソファに座って、モエギが持ってきてくれたお茶を飲みながらレークに尋ねる。

 レークはキラキラとした瞳でアオイを見ており、お茶には手を付けていない。

 レークが手を出さないからか助手2人も手を付けない。冷めても美味しいので、そう気にはならないが。


「以前天空の島に行って持ち帰ったカードを覚えておられますか?」

「はい。人魚のですよね?」

「それです!それの解析が……」

「出来たんですか?」

「いえ全く!」


 元気がいいのは結構だが、それを堂々と言っていいのだろうか。

 アオイが目をぱちくりさせている間にレークは言葉を続ける。


「あまりにも分からないので、今の技術ではどうにもならない事なのだろうと思いまして!」

「……それで、何故ここに?」

「可能性は全て試したいので、人魚に会ってみたいんです!」


 つまり、他に出来る事がないからカードに描かれていた人魚に可能性をかけると。そういう事だろうか。

 それでアオイの元に来るのは、何か知っていると信じているからだろうか。子供のようにキラキラとした瞳を向けられると、変に隠し事も出来ないので困る。


「……レークさんは私を一体何だと思っておられるので……?」

「最上位薬師殿です!」

「いやそうなんですけど……ああ、目がとても純粋……」


 そもそもだ。何か調べたいことがあるなら、薬師ではなく情報屋の所に行くべきである。

 それなのにアオイの所に来た辺り、レークは最上位薬師を何か勘違いしている気がする。


「年下に頼られるのは別に嫌じゃないんですけどね……」

「主はそもそも頼られること自体嫌ってないでしょ?」

「そうなんだけどね……」


 どうしたものか、と考えていたら、レークはアオイを凝視し始めた。

 助手に頭を叩かれて視線を弱めたが、それでも何か気になることがあるのかジッと見てくる。


「……レークさん?」

「失礼かもしれませんが……アオイさん、おいくつなんですか?」

「レーク!」

「女性になんてこと聞くんです?」


 言うが早いか、アルフからは頭を叩かれベーレスからは苦言を呈され。

 それでもレークはアオイをじっと見ている。

 そんなに気になることだろうか。


「私ですか?今年で27になりますが」

「へ?」

「え?」


 なぜか不思議そうな声を出されてしまった。

 首を傾げると、その声の意味は横から回答が提示される。


「主、見た目年齢20くらいだから」

「うそーん」

「ほんとーう」

「でもだって、私最上位薬師だよ?上に見られることはあっても下って……」

「意外と誰も気に留めた事ないと思う」

「えー……」


 コガネと緩い会話をしながら、アオイはふと思う。

 この世界の人間の平均寿命は60歳ほどだ。


 そう考えると、アオイの歳はそろそろ折り返し地点。アオイより10歳ほど年上なアヤメは自分の事を初老扱いし始めたし、10代のころから見た目がほとんど変わらないアオイは驚かれても不思議はないのかもしれない。


「……あれ?レークさんってまだ10代ですよね?」

「はい!今年で18になります!」

「若い……ん?9コ下?」

「そうですね!」

「あらまあ、私も年を食ったなぁ……」

「ところで主、そろそろ話を戻したら?」

「あ、そうだね」


 ついうっかり歳の話で盛り上がってしまったが、今回の話はそれではない。

 コガネからの軌道修正でレークは再び目をキラキラと輝かせ始めた。


「人魚の住処は、知っています。でも、彼女たちが人前に姿を現すか、と言われると……」

「それでもいいです!教えていただけませんか?」

「うーん……じゃあ、私たちも同行します。よろしいですか?」

「むしろお願いします!」


 元気よくお願いされてしまったので、アオイは笑顔で頷いた。

 いつ行くかと聞くと早い方がいいが任せる、と言われる。

 その返事を聞いてアオイはコガネを窺った。


 コガネは分かっていたかのように頷いて、アオイは笑みを深くする。

 後の説明はコガネに任せて客間から出ると、外は夕方から夜に移りゆく所だった。

 まだ、来てくれるだろうか。


 この時間に呼んだことはないので不安だが、やってみないと始まらない。

 アオイは湖に手を入れて、静かに揺らす。

 少し待つと、いつもの水竜がひょっこりと顔を出した。


「こんばんは。聞きたいことがあるの。貴方のほかに、人を乗せて進める子はいるかしら?」


 聞いてみると、すぐに居るよ!と返事をくれた。

 大人の男性が3人乗れるくらい、と具体的に言ってみても大丈夫!と自信満々だ。


『いつ行くの?すぐ?』

「ううん、明日呼ぶから、その子も一緒に来れるかしら?遠出になるけど……」

『大丈夫だよ!あいつも人を乗せるの好きだから!』


 頼もしい返事を貰って、じゃあ明日と手を振る。

 水竜は話をしてくる!と去って行き、それを見送って立ち上がったところでコガネが横にやってきた。

 どうだったかと聞かれて指で丸を作り、揃ってリコリスに入る。


 キッチンからは食欲のそそられるいい香りが漂ってきている。

 つまみ食いしようかと思ったら、軽く払われてしまった。


「主、先に手を洗ってきてください」

「はーい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ