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薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
12章・夢見の星
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4,星空

 夜、星を見上げながらアオイはシオンとウラハを待っていた。

 ウラハは明日の朝食の仕込み、シオンはセルリアを寝かしつけてから来るらしい。

 それを待ちながら、空を見上げてボーっとする。


 こんなにゆっくりとした時間は久々で、アオイの頬は自然と緩んでいた。

 周りにリコリス以外の明かりがないので、ここからは星がよく見える。

 到底数えきれない星に囲まれて、アオイはそっと手を伸ばした。


 その手を握って、ウラハはアオイの横に腰かける。

 暖かい季節とはいえ、夜である。

 身体を冷やさない飲み物を、とカップを渡され、アオイは微笑んだ。


「ありがとう」

「いつもと淹れ方を変えてみたの。マスターが好きかは、ちょっと分からなかったけど」


 そう言われて、一口飲んでほっと息を吐く。

 熱いわけではないのに、じんわりと胸のあたりが暖かい。


「美味しいよ」

「そう。良かったわ」


 ウラハの手には、2つカップが持たれている。

 シオンの分もあるようだ。

 セルリアはすぐに寝付くだろうから、もうすぐ来るはずである。


 そんなことを考えていたら、扉の開く音がして、足音が近づいてくる。

 上を見上げると、視界の中にシオンが現れた。


「セルちゃんはもう寝た?」

「うん。ぐっすりやで」


 言いながら、ウラハとは逆のアオイの横に腰を下ろす。

 マグカップを受け取って、それに口を付けながらシオンはアオイを窺った。


「で、どうしたん?」


 星を見上げながら端的に聞かれて、アオイは魔女の依頼内容を語る。

 2人は特に何も言わずそれを聞いていたが、最後まで聞くと納得の声を上げた。


「なるほど。そりゃぁ俺らに声かけるわなぁ」

「必要なのは、導の星ね」

「今は出てないなあ。もう少し待たんと」

「じゃあ、その間にベースを作らないといけないわね」


 流れるように会話する2人に挟まれて、アオイは苦笑いしながら空を見上げた。

 出来るかどうかから聞こうと思っていたのだが、当然のように作る話が進んでいる。

 良い事なのだが、なんというか。


「流石、うちのお供は優秀だなぁ」

「あら、どうしたの急に」

「改めて思ったんだよ」


 へにゃっと笑ってそういえば、2人は微笑んで言葉を続ける。


「今更やんなぁ」

「ええ。有能じゃないと横に残れないものね」

「そんなに倍率高くないよ」

「いや、マスターは分かってないねん。マスターの契約獣って、結構なステータスやで」

「えー」


 言われても、全然そんな気はしないのだが。まあ、ウラハも頷いているしそうなのかもしれない。

 アオイは考える事をやめてお茶を飲んだ。


「出来るんだよね」

「そうね。星を閉じ込めるベースがあれば」

「導きの星は、俺が探しとくで」

「そっか。じゃあ、材料は何となく分かるかな」

「お、流石マスター」

「あんまり根を詰めちゃ駄目よ?」


 話し合いは意外とすぐに終わった。

 流石は夜空の眷属たちである。思考の手助けをする2種は、夜の空の下だとその思考能力が上昇するとかしないとか。本人に聞いたらそんなことはないと言われたが、上昇している気がする。


 その日はそれだけが用事だったので、その後少し星を眺めた後にそれぞれ部屋に戻る。

 アオイは早く寝ないといけないし、シオンは明日もセルリアに合わせて起きるのだろう。

 ウラハはいつも通りらしい。すごく早起きだ。


「じゃあ、おやすみ。ありがとね」

「ええ、おやすみ」

「おやすみー」


 ゆるゆると部屋に帰り、ベッドに潜り込めばすぐに眠気がやってくる。

 その眠気に抗うことなく身を委ね、ゆったりとした心地のいい空間に意識を預けた。





「これを、レヨンさんに!」

「そう。お願いね」


 朝、朝食を済ませたアオイはサクラにお使いを頼んでいた。

 内容は、レヨンの元に手紙を。

 よくある用事なので、サクラは勢い良く頷いて鳥に姿を変えて飛び立っていった。


「行ってらっしゃい、気を付けて!」


 モエギの声が追いかけて、それに一声返事をしてサクラは空へ上がっていく。

 アオイはその姿を目で追っていたが、見えなくなったところで作業部屋に入って行った。


 サクラは空を進み、実は使える魔法を少し使って加速した。

 元々飛ぶのは好きだった。だから、風系の強化魔法を少しだけ扱える。

 それも、アオイの魔力補給があっての話だが。


 アオイとサクラが契約したのは10年ほど昔だ。

 少しづつ受け取っていた魔力はもう十分過ぎるほど溜まっているし、アオイもサクラも自覚していなくても魔法を使った分の魔力は補給される。


 そんな便利な状態なので、サクラは惜しみなく魔法を使って元飼い主の所に急いだ。

 それほど急ぎの用事でもないのだが、意味もなく急いだ。楽しかった。


「レヨンさーん!」


 レヨンの家の前で人型になって、ノックをして声をかけると扉はすぐに開いた。

 相変わらず格好いい元飼い主は、サクラを見て頬を緩める。


「おお、サクラ。どしたの」

「主からお手紙ー。必要なものがあるんだって」

「ほーん。まあ入りなよ」


 招き入れられて、サクラは手に手紙を持ったまま家の中に入った。

 サクラがここに住んでいた時から物の配置は変わっていない。懐かしいというには結構な頻度で来ている場所である。


 レヨンの向かい側に座って、手紙を差し出して。

 淹れてくれたお茶を飲みながらサクラはニコニコとレヨンの顔を見返した。

サクラはレヨンさんが大好きなので、お届け物を頼むととても張り切ります。可愛いね。

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