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薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
11章・毒を撒くもの
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9,腐敗の根絶

 アジサシが注文の品を全て見つけ出すと同時にサラの硬直が解かれ、チグサがサクラに見せた物に驚いて固まり、金額を聞いて固まった。

 そして提示された金額を平然と払ったサクラに畏怖のような尊敬のようなまなざしを向けてきた。


「サクラちゃん……すごい人だったんだね……」

「うん?注文は主から聞いてるし、お金も主から預かってるよ?」

「最上位薬師様って、やっぱりすごいんだね……」

「うん!主はすごいんだよ!」


 買った物を抱えて、サクラたちは村に向かう。

 アジサシはしばらくこの近くに留まるらしい。

 何かあったらおいで、と言って貰えたので、頼っていいだろう。

 それでも用事が出来れば行ってしまうが、ここに寄るように無理を言ったのはこちらである。


「よし!戻ったらご飯の用意を始めないとね!」

「始めるの早いね。私はお師匠の手伝いかな」

「サラちゃん、お師匠さんと仲いいよね」

「まあ、拾って貰ってからずっと一緒に居るからね」


 そんな話をしながら村に戻り、家に入ったらそれぞれの場所に向かう。

 サラが作業部屋に向かったのを見送ってからサクラはリビングに入った。


「主ただいま!買ってきたよ!」

「ありがとうサクラ。全部あった?」

「うん!」

「流石アジサシさん」


 受け取ったものを確認して、アオイはサクラの頭を撫でる。

 コガネにも確認してもらった後で席を立って作業部屋に向かいつつ、アオイはもう一度作ったメモを確認した。


「さて、上手くいくといいけど」

「主なら大丈夫だ」

「だといいけど」


 言いながら部屋に入り、材料と道具を出していく。

 コガネに任せられる作業は任せて、アオイでないと出来ない作業から手を付ける。


「主、これは?」

「それは……私がやろうかな。置いといて」

「分かった」


 2人で手を動かし始めて、それでも作業にはだいぶ時間がかかる。

 サクラが夕飯を作り上げても作業は終わらず、だと思った、と言われて軽食を差し出された。

 この用意の良さはモエギをずっと見ていたからだろう。


 コガネと顔を見合わせて笑い、これが終わったらしっかりお礼を言わないと、と呟く。

 そして作業を再開した。

 何が失敗につながるか分からない。油断は許されないのだ。


 しばらく無言の作業が続き、薬が出来上がったのは夜も更けてからである。

 どうにも頭が働かないので成功しているかは分からないが、それでも完成はしているはずである。

 少なくともコガネが何も言っていないので、メモにある手順は全てこなしている、はずだ。


 そんなことを考えて、それを最後に意識が遠のいていく。

 身体が傾いたのは認識できたが、地面にぶつかっていないのでコガネが回収してくれたのだろう。



 次に目が覚めた時、アオイはベッドで横になっていた。

 横でトマリが何かを確認していて、ああ、今回の夜の護衛はトマリになったのか、と気付く。


「おはよう、トマリ」

「おう。朝飯は出来てるぞ」

「そっか、ありがとう」


 アオイが起きたのを確認してトマリが去って行き、アオイは急いで着替えを手に取った。

 着替えて部屋を出ると、リビングからいい匂いが漂ってくる。

 サクラとコガネは当然のように起きていて、ハルフも起きて席についていた。


「おはようございます」

「おはようございまーす」

「おはよう主。寝ぐせついてるぞ」

「え、うそ」


 コガネに寝ぐせを直されながら、アオイは机の上に置かれていた薬を手に取る。

 しっかりと覚醒した頭と目で確認すると、それは確かに完成していた。

 よかった、と呟きながら薬を置いて寝ぐせを直し終わったらしいコガネに向き直る。


「コガネ、ありがとうね。昨日も運んでくれたんでしょう?」

「まあ、主が寝落ちるのは分かってたしな」

「……気を付けるね」

「そうしてくれ」


 そんな会話をしているうちにサラが起きてきて、サクラが朝食の配膳を始めた。

 それを手伝いながら、薬師たちは今日の日程を話し合う。


「まずはこれを試したいんです」

「なら、その時に回診しましょう」

「私はポーション作ってようかな」

「主、他のはどうする?」

「他は、帰ってきてからかな」

「分かった」


 予定は決まり、朝食を済ませたら準備をして家を出る。

 村を巡って、病に侵された者たちにポーションを配りながら体の状態を聞き、そのうちの1人に試薬を使ってもらう。

 使う前に試薬であることの説明をしてから薬を使用し、薬を効き具合を確認する。


「キャラウェイ、さん。これは……」

「うん。思ったより効きますね。これなら、腐敗は対処できそうです」


 体の腐敗が始まった部分に作った薬を流し、しばらくするとじわじわと腐敗が消えていく。

 試薬なのでそう多くは作らなかったが、材料はまだある。

 まずはこれを量産し、それと並行して新薬の製作をするのがいいだろう。


 村人にお礼を言われながら、何か変化があったらすぐに知らせるように言ってその場を離れて、移動しながらハルフに薬のレシピを渡す。


「どうでしょう、作れますかね?」

「……おそらくは、大丈夫かと。一度少量で作ります」

「はい。お願いします」

「主、名前はどうするんだ?」

「あー……後でまとめて」

「分かった」


 村の中を全て回ったら家に戻り、またそれぞれ作業部屋に籠る。

 薬師が多いと、複数作業を同時に進められるのでだいぶ楽である。

生きたまま身体が腐るって、改めて考えてみたらかなりの恐怖ですよね

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