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薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
11章・毒を撒くもの
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5,速度調整

 森を抜けて徐々に速度を上げて、第4大陸と第3大陸間の関所を越えたところで、馬と上に乗っているアオイ、コガネに何かの魔法がかかった。

 小鳥状態でコガネの後ろに乗っているサクラにはかかっていないようで、慌てた声を出している。


「コガネ、これは?」

「店主からだな。速度を上げるぞ」

「はーい。サクラ、こっちおいで」

「ピィ」


 何をどこまで知っているのか、ヒエンからの魔法の加護が飛んできた。

 コガネの反応を見るに速度を上げる魔法のようなので、サクラを抱えてコガネにしがみ付く。

 ヒエンの事だ。きっと保護の魔法もかけているが、念のため。


 アオイがサクラを抱えたのを確認して、コガネが速度を上げた。

 馬もこれが初めてではないのか、慣れた様子でコガネの操作について行く。

 速度を上げてもアオイが怖がらないのは、その速度があまりにも速くて実感が湧かないからだ。


「はやーい」

「そうだな」

「どのくらいで着くかな?」

「今日中には」

「はやーい」


 普通ならあり得ない速度で進んでいるようだ。

 絶対に1日では着かないと思っていたのに、着いてしまうらしい。


「どのくらいの魔法?」

「上位の上位」

「ひえー分からん」


 とにかくすごい魔法が飛んできたようだ。

 何が何だか分からないが、先代勇者のすることが分かったこともないので仕方ない。

 そんなことを言っているうちに、速度が落ち始める。

 どうしたのかと思ったら、第3大陸と第2大陸の間の関所についたらしい。


「はや……」

「快適だな」

「そうだね……」

「その気になれば俺でも出来るぞ?」

「流石……非常時だけにしようね」

「分かった」


 関所を抜けて、また速度が上がる。

 コガネは慣れたように馬を操っているが、他者の魔法で加速している時の速度調整はなかなか難しいはずである。


 それを簡単に操っている辺り、普段は忘れそうになるが流石は魔法特化種族である。

 アオイが密かにそんなことを思っている間に、馬はどんどん進んでいく。

 気付けば目的地までそう遠くない位置にまで来ているらしい。


 人通りがある場所に入ってからは速度を落として移動し、それをなぜか感じ取ったようでヒエンの魔法は去って行った。

 どうやっているのか全く分からない。コガネが分からないというのだから、アオイに分かる訳はない。


「主、そろそろだ」

「もう?すごいね」

「そうだな」


 そう言ってコガネが前方を指さした。

 その方向を見ると、うっすらと村らしきものが見えている。

 あれが今回の目的地のようだ。


 村に行く前に馬を返さないといけないので、一旦村からは離れてモーブという街に向かう。

 ここは国ではないが、第1大陸との行き来で立ち寄るものが多いため治安も悪くはないし馬貸しも店を構えている。


 馬を返すのはコガネに任せてサクラと共に広場で待っていると、何やら怪しい影が近付いてきていた。

 ここは国ではない。

 治安が悪くないとはいっても、それはあくまで街基準の時だ。

 国よりは治安は悪い。だから普段は立ち寄らない。


 寄ってきているのは酔っ払いか人攫いか。

 どちらにしても、アオイが弱いことを認識できる程度の実力はあるらしい。

 そして、アオイの陰に居るトマリを感知する魔法能力はないらしい。


 コガネが戻ってくる前にトマリが陰から出てきて、それを見た怪しい男はびくっとして去って行った。

 悪魔付きとでも思ったのだろうか。

 トマリはその背中を見送って陰に戻っていく。


 入れ替わるようにしてコガネが戻ってきたので立ち上がり、そのまま街を出て目的の村に向かう。

 ヒエンの魔法のおかげでまだ昼だ。

 村につくのにも時間に余裕がありそうである。


「コガネ」

「何だ?」

「一応、保護かけておいてくれる?」

「分かった」


 村に入る前にコガネに声をかけ、万が一にもこちらが例の病にかからないようにしておいてもらう。

 アオイがかかることはないと思うが、念のためだ。

 これでアオイが倒れようものなら本末転倒である。


 魔法をかけた後で村に入ると、疲れた顔をした村人が近付いてきた。

 そして、こちらを気遣うように声をかけてくる。

 アオイは外套に身を包んだ怪しい姿なのに、それでも臆していないのは中々なハートの持ち主である。


「旅人さんかい?悪いことは言わん。この村には寄らん方がいいよ」

「いえ、旅人ではないです」


 言いながら、アオイは薬師免許を取り出した。

 今回はこれが早いだろう、としっかり持ってきたのだ。


「とある人の依頼で来ました。最上位薬師、アオイ・キャラウェイと申します」

「さ、最上位薬師?」

「はい。この村の病を治しに来ました」


 村人は驚いたようにアオイの顔(見えていない)と薬師免許を交互に見て、何か思い出したかのように村の中に走って行った。

 あの村人は病に侵されていないようだ。


「入っていいかな?」

「いいんじゃないか?」

「ピィ」


 ゆったりとそんなことを言い合って、村の中に入る。

 先ほどの村人はどこへ行ったのだろうか、と辺りを見渡していると、ちょうど村人が戻ってきたところだった。

 後ろには別の人がついて来ている。


 その人に見覚えがある気がして、どこで見たのか考えている間に2人、いや、3人が近付いてきた。

 最後の人には見覚えがない。

 コガネを見上げると、コガネは何となく察しがついているらしい。


 どこで見たのか、必死に思い出そうとしてるアオイの心情を知らず、3人は近づいてくる。

 そしてアオイが思い出すより先に声をかけてきた。

ヒエンさんは大体なんでも知ってます

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