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薬屋・リコリス  作者: 瓶覗
10章・国との繋がり
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6,お知らせ

 スコルに赴いた翌日は、イピリアに行く日である。

 店の管理はいつも通りコガネとトマリに任せているが、今日は小鳥組にも仕事を頼んだ。

 それぞれにイピリアとフォーンに向かってもらい、ギルドに日程変更を伝えてもらう。


 出店の許可は貰っているのでいつ行くかは自由なのだが、一応国の許可を貰ってやっていることだし、時々だがギルドからの紹介で客が来たり、ギルドの職員が買いに来たりするのでお知らせだけはしておく必要があるだろう。


「お願いね」

「ピイ!」「チュン」


 小鳥組には小鳥の姿で、首に着けているリボンの中心にリコリスの紋を付けて手紙を運んでもらう。

 作るだけ作ってあまり使っていない紋だが、使う時は中々便利である。

 出店リコリスが出発する前に小鳥たちが飛び立ち、それを追うようにコガネたちもリコリスを出る。


 買い物をしに来た常連たちには口頭で説明するが、面倒になった時用に日程を書いた紙も用意してある。

 まあ、そう大きな変化ではないのだ。

 出店リコリスだけで買い物をしている者は居ないだろうから、少し覚えにくい日程になっただけである。


「はー。やるかぁー」


 出店リコリスを見送った後、アオイは作業部屋に入って行った。

 出店場所が増えるということは、薬の消費が増えるということだ。

 つまり、アオイの仕事は増えた。


「忙しくなりそうだなぁ」


 そう悪いことではないのだ。

 これから何があるか分からないし、収入は多い方がいいのだろう。

 それでも、どうしても作業が面倒な時はある。


 薬作りも嫌いではないのだが、面倒な時がある。

 だって、時間かかるし。


「これはそう、脳死周回と同じ……」


 レヨンくらいにしか伝わらないたとえを呟きながら、アオイはポーション作りを進める。

 乾かした薬草を粉末状になるまで砕いて、水を張っておいたナベに入れる。

 火にかけてとろみが出るまで、1時間ほどかき混ぜて、とろみが出てきたらポーションの実を入れてさらに煮詰める。この間も、とにかく混ぜ続ける。


 ポーションの実が煮崩れたら火を止めて、ろ過して液体を小瓶に詰める。

 小瓶にコルクの栓をしたらポーションの完成だ。

 慣れていても、3時間ほどはかかる作業だ。


 薬によって作り方は変わるし、もっと時間がかかるものもある。

 ある程度纏めて作れるからいいが、面倒は面倒だ。

 

「……新薬作るのに比べたら楽だけどね」


 呟きながら小瓶を満たしていき、コルクを閉めて箱に入れていく。

 小さな柄杓を使って入れていくのだが、これに意外と神経を使う。

 零れないように気を付けていると肩も凝るし背中も凝るし、動きは少ないのにとても疲れる。


 この作業を楽にするためだけに物体操作の魔法を覚えようかと思ったくらいだ。

 残念ながら、それを使った方が疲れるという悲しい結果で終わったが。


「あ、ビン少なくなってる。コガネに頼まないと……」


 大量にあったはずの小ビンも気付けば残り少なくなっていて、確認すると材料もほとんどない。

 慌ててサクラに連絡を入れて、フォーンからイピリアに向かってもらう。

 イピリアの中は契約獣の連絡も通らないのだ。




 出店リコリスの店番をしていたコガネの元に、フォーンに行っていたはずのサクラが舞い込んできた。

 どうしたのかと思ったら、小ビンがなくなりそうでついでに材料もないらしい。

 買って帰る、と言って買い物リストに書き加え、ギルドへの報告を終えたらしいモエギと共に帰らせる。


 リコリスで使うビンは、コガネが錬金術で作っているものだ。

 最初は練習がてらやっていたのだが、今ではコガネの仕事の一つになっている。

 アオイの独立前、師匠の店であるエキナセアに居た頃は街の工房で作ってもらっていたのだが、リコリスのある場所は森の中。それも人の寄り付かない迷いの森である。


 買い物に行くにも面倒なので、リコリスの中である程度のものは作れるように整備されている。

 流石に食料は買いに来ないといけないし、布類も買っているがそのくらいだ。

 薬の材料は敷地内で作っているし、ビンの材料もその気になれば森の中で採取できる。

 面倒なのでその気にならなくて買っているが。


 買い物の順番を考えていると見慣れた顔が寄ってきたので、鈴を鳴らしてリコリスの進行を止める。

 近付いてきた常連に何を買うのか聞いて、言われた物を用意しながら日程変更のお知らせをする。


「へえ、スコルにも」

「ああ」

「イピリアには、次いつ来るんだ?」

「7日後だ」

「うし。それだけ分かればまあ、俺は大丈夫だな」


 話しながら商品を渡して、代金を受け取って鈴を鳴らす。

 再び動き出した出店リコリスに揺られながらコガネは手元のノートに売り上げの記入をしていく。

 時間はまだ昼前。今日の売り上げは好調になる気がする。


 出店リコリスを出すときはモエギがお弁当を作ってくれるので、交代でそれを食べながら店番をする。

 弁当の内容は同じなのだが、コガネのものよりトマリの一回り大きい。

 コガネが食べないわけではない。トマリがやたら食べるのだ。


 昼休憩はまだだが、早くも弁当の中身が気になってきた。

 いい感じに空いてきた腹を擦りながら、コガネは手元の鈴を鳴らした。

アオイちゃんの仕事がとてもとても増えました。がんばれー

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