0,戴冠式
第4大陸、外海に面した国。
先代勇者の1人、精霊女王の生まれた国。
その国で、新たな王が誕生した。
先王が死去し、葬儀が執り行われた。その十日後である今日、先王の一人息子である王子が戴冠式に臨んでいた。
新たな王となった王子は言う。
先王死去の重く暗い雰囲気は今日までだと。いつまでも暗いままでは国の発展はなく、それを先王は望まないと。
新王は言う。
先王は確かに王だったと。だが、傲慢な人でもあったと。
それでも、確かに王だったのだ、国の発展を望まないわけはない。だから、暗いままではいられない、と。
それに、と新王は続ける。
いつまでも葬儀の色のままでは、自分が受け入れられていないようだ、と。
自分を王と認めてくれたなら、戴冠の祝いに染めてくれないか、と。
自分を認められないのなら、葬儀の色のままでいい、と。
国民は新王を受け入れ、街は葬儀から祝いに色を変えた。
新王は有能だった。
先王が多少なり残した負の遺産を、全て表に出し、改善すると宣言した。
そのために、初めは忙しくなると。そう臣下に告げた。
臣下は王の手足となり、その改変の手助けをした。
国民も新王の動きを受け入れ、推奨した。
新王は早くも国民から愛されていた。
その勢いを使って多少の無理を通したが、それが受け入れられる程度には愛されていた。
そこで、新王はもう一つ、無理を通すことにした。
それは、この国のためになされることであり、だが、それにしては賭けじみた事だった。
しかし、今、この国に必要なことだ。今、この国に足りていないものだ。
そう言い切った王を止める者は居なかった。
王の言により、臣下の数人が別の国に赴いた。
第4大陸にある、別の2国に。
そこで会えるはずの者を探しに。
10章開始です。
それとはそんなに関係ないのですが、誤字報告ありがとうございます!
自分では意外と気付かないものですね……