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銀の魔導   作者: 雪仲 響


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 街道が分かれている場所に着くと、目の前には青い海が一面に広がっていた。

 一年以上前にマルティアーゼ達が遭難した内海を見て、あの日の事が思い出された。

(ルラさんとサナちゃんはどうしてるのかしら、ここであの嵐に遭ってしまって私達はかなり南まで流されてしまった、そしてカルエと出会ったんだわ)

 まるで遠い昔のように感慨深く懐かしく感じていた。

(あの頃はまだ出会う人はいい人ばかりで、旅は辛くはあったけど楽しかったわ)

 何時から自分は戦うことを強いられてきたのだろう、望んでいないにも関わらず事件や戦闘の渦中にいることが多くなってきた。

尤もその原因の殆どは自分で首を突っ込んだ所為であるのだが、南方に入ってからのマルティアーゼ達は何かしらの戦いをしながらの旅だった気がした。

(色々と経験したお陰で城を出た頃に比べて一回り成長した気がするわ、世間知らずで素晴らしい世界と夢見ていた一人ぼっちのあの頃とは違い、この世界にも沢山の友達が出来たし、生きることの大変さを学んだわ、そしてこれからだって……)

「マルさん、行きますよ」

 マルティアーゼは声をかけられてハッとした。

「ええ……行きましょう」

 街道は右に折れて伸びていて、山脈沿いを南に行けばミーハマットに入ることになる、マルティアーゼ達はここから道なき道に入っていく。

 目印となるのは右手の海であり、林の中を分け入りながら暫くはこの景色で旅をすることになるだろう。

 トムはしきりに地図とにらめっこをしていて、どこまで進んで次はどの方向にと確認に余念がなかった。

 スーグリは森の中は平気なのか、ニコニコと馬に揺られながら森の匂いを胸いっぱい吸い込んで楽しんでいる。

 ゆったりとした時間が流れて夕暮れまで何事もなく歩き続けていく。

 日が沈むのは早く、暗くなったと思うと直ぐに森の中は歩くのも困難なぐらいに真っ暗になった。

 海はまだ差し込んでくる赤い日差しで見渡すことが出来たが、これ以上無理に進むのは危険と感じたトムが、

「今日はこの辺りで休むことにしましょう」

 と、言ってきた。

 森に入らないように崖っぷちの岩場で火を起すと、三人で火を囲んだ。

「まだずっと北に上がるのよね」

 マルティアーゼがトムに聞く。

「はい、あと二日はこのまま北上しないといけないみたいです」

 焚き火の明かりで地図を確認したトムはそう答える。

「森の匂いはいつ嗅いでも落ち着きますね、私の村も森に囲まれてたから懐かしいです、でも此処はちょっと寒いかな」

「暑くもなく寒くもなくて丁度いい気温だと思うけど、ミーハマットと比べると寒いかもね」

「マルさんはミーハマットに行ったことがあるの?」

 スーグリが興味が湧いたのか聞いてきた。

「ええ、前にね、場所はよく分からないんだけれど、森の中に住んでる人達と一緒に過ごしてたわ」

「ほえ、ミーハマットは殆どが森ですよ、私も森の中に住んでるし」

「かなり南東の方でしたね、ミーハマットの版図に加わってると云ってましたが、本人達は認めてなかったですし」

「何処だろう……と云っても私も村から出たことないから、村の名前を聞いてもわかんないけど」

「本当に森の中だったわ、近くに町なんてないし、恐ろしいガブっていう大岩のような動物もいたわ」

「……ガブ?」

 初めて聞いた名前にスーグリはどんな動物だろうと想像した。

「そこの人達はそう呼んでたわ」

「あの時はもう死を覚悟しましたよ、岩のような怪物に長剣だけで倒せる自信なんてありませんでしたからね」

「あの時、私は初めて剣を使ったわ、剣って結構重いのよね、使い方も分からなかったけれど必死でガブの首を切り落としたわ」

 マルティアーゼは興奮気味に語った。

「そんな大きな動物がいたなんて知らなかった……、私の所にはトカゲとか大きくても私ぐらいの動物しか見たことがなかったから」

 スーグリもまたマルティアーゼと同じように、外の世界には自分の知らないことが沢山あるんだと思っていた。

 話に興じていて気がつくと日は完全に沈み、真の闇が訪れていた。

 満天の空には宝石が散りばめられたように何十、何百の星々が微かな光を称えていた。

 食事を終えた三人は地面に寝転がって寝支度を始める。

 外套を敷いて横になったマルティアーゼは、手を伸ばせば届きそうな星々を眺め続けた。

 足元は焚き火の温かさでとても気持ちよく、今日一日の疲れが抜けていく和らぎを感じていると隣から二人の寝息が子守唄のように聞こえてきて、静かに目を瞑った。

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