表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀の魔導   作者: 雪仲 響


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/1026

79 旅の行方

 それから2日後の朝、ずっと側で付きっきりで宿に過ごしたトムは、寝台にもたれてウトウトしてしまい、はっとしてトムは飛び起きた。

「……はっ!」

 寝すぎてしまったと驚いたトムは辺りを見回したが、まだ陽が昇りきっておらず外はまだ人が動く気配はしていない。

「はぁ、ふう……」

 トムは深呼吸をしてマルティアーゼを見ると、彼女の目が開いておりじっと窓の外を見つめていた。

「良かった……やっと目が覚めましたか、心配しましたよ」

「ここは……もう夜?」

「いえ、朝ですよ、もう宿についてから二日もずっと寝ておられたんですよ、起こそうとしても起きてこられないから、医者にも診てもらったんですから……」

「私は病気ではないわよ、それより水と何か食べ物はないかしら、とてもお腹がすいたわ」

 起き上がろうとしたが力が入らず、また横になった。

「待って下さい、水はここに……、食事はとうに冷めてしまって下げてもらったので、今はこれぐらいしかないですが……」

 トムは荷袋の中から旅の非常食の乾燥肉を取り出してマルティアーゼに渡した。

「店が開いたら何か力が出るものでも食べに行きましょう、医者が云うには暑さで参ったのではないかという事でしたので、暫く此処で療養して下さい」

「別に気分も悪くはないわよ、お腹が減ってるぐらいだわ」

 そんなに心配されるほど寝ていたのかと、マルティアーゼが驚くほどだった。

「いやいや、二日間も寝ていたらどう見ても異常ですよ、身体を揺さぶった事も、医者がマールさんの身体を診ていた事も何も覚えておられないのですか?」

「…………全く何も感じなかったけど、というより寝て起きたら朝になっていたとしか私は思っていないわ」

「…………本当にお体は大丈夫なんですか? 後で我慢していたということはしないでくださいよ」

 トムはマルティアーゼが本当に問題がないのか、心配させまいと嘘をついているのではないだろうかと疑った。

「大丈夫よ、心配症ね」

 マルティアーゼはパクリと干し肉をかじった。

 軽い食事の後、町が起き始めるまでもう一度マルティアーゼは寝ると云って寝台に潜り込む。

 トムはまた深い眠りに落ちたのではないかと心配で眠ることが出来ずにいた。

 町に喧騒の声が聞こえ始めると、トムは恐る恐るマルティアーゼに呼びかけてみると、何事もなくマルティアーゼは目を覚まして起きてきた。

 ほっとして二人で外に出た。

マルティアーゼにはこの町に来てまだ一度も町に出たことがなかったので、見る物が新しく新鮮であった。

「ここは今までの町とはかなり雰囲気が違うのね、歩いてる人は同じように一枚布の服装みたいだけれど……」

「この町はメラルドの北側の町でターメと言うらしいです、王都メラルドはこの町の端からでも見ることが出来ますよ」

「よく知ってるのね」

「まぁマールさんが寝ている間に買い出しで町を見て回りましたから」

 トムは仕入れた情報でこの町の美味しいと有名な店を聞いていたので、其処にマルティアーゼを連れて行った。

 異国情緒漂う雰囲気の店で、吹き抜けの入り口から高い天井の大きな食堂へと入っていくと、気温がぐっと下がり涼しい風が建物の中を通り抜けていく。

「気持ちいいわ、こんなに大きな店は初めてね」

 大食堂と言ってもいいほど広く、百人は軽く座れそうな大きな卓に椅子がずらりと並んでいた。

 この店では相席が普通なのか、とにかく空いてる席に次々と人が入れ替わり、立ち代わっていく。

 給仕も多く、引っ切り無しに食事を運んでいたり、帰った席の皿を下げていた。

 二人は空いてる席について近くに来た給仕に、店内に書かれていた品を適当に頼んでから、トムはマルティアーゼに話を切り出した。

「この国についての情報集めをして私なりに考察してみたのですが、今後について私から伝えておきたいことがあります」

「何か変わったことでもあったの?」

「メラルドについては問題はございません、この国の国王は国民から信頼されているみたいで、国情は安定しておりますね、ただ……メラルドより南の方の情勢は芳しくないみたいです」

「と、いうと?」

「メラルドの南にはキエヌ公国、ガル国、エストラ王国が隣接しており戦争とまで拡大はしていないのですが、小競り合いを常にしているらしいです、中でもエストラ王国は内陸にある国でどうしても海に面した土地を欲しているみたいで、西のガル国と北のキエヌ公国にちょっかいを出しているみたいです、それにキエヌ、ガル両国共に好戦的なお国柄みたいで、これを機に逆に内陸に領土を広げてやろうと野心があるらしく、かなり前から国境沿いでの戦闘が繰り返されてるみたいですよ」

「南の国では領土がそんなに狭いのかしらね」

「どうでしょう……、大小様々な国が密接していると、色々と問題が起きるのでしょうね」

 ローザンのような周りを森で囲まれて隣国と接しない国では、そういうイザコザには縁遠い話だった。

「他には何かあるの?」

「はい、伝えたい事が……、もう旅は止めて引き返しましょう」

「…………え?」

 トムは真剣な表情でマルティアーゼを見つめる、それが彼が集めてきた情報をまとめて出した答えだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ