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銀の魔導   作者: 雪仲 響


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 翌日トムは一人、町に出かけて食料と水、その他必需品の買い足しを行った。

「本当に来てくれるんでしょうか? 僅かだった希望が大きく膨らむようです、軒も覚え仲間もこんなに集まったんです、俺達は必ず女性達を救い、ゾーディア男爵の不正を国民の前にさらけ出してやりましょう」

 アーリがトムに手を差し伸べてきた。

 それをトムは無言のまま握り返すと一言、

「だが、一番は捕まった女性達を助けることが最優先だ」

「はい、そのことですが昨晩仲間達がミレーンに行き、捕まっている女性との接触に成功しました」

 捕まった彼女達の顔をよく知っている男達が入った宿で、顔見知りの女性に出会う事が出来、月長祭に騒ぎを起こしそれを合図に助けに来ることを女性に伝える事に成功した。

 その際、彼女には逃げる支度と捕まった他の女性達への連絡を頼んでおいたと云うことだった。

「おお、そうか、まず第一段階は成功というわけだな」

「はい、あの宿に殆どの女性達が閉じ込められているらしいです、ゾーディアが直接関与している宿にも振り分けられているらしいですが、全ての宿の場所も聞いてきたそうなので、月長祭当日はその宿全てを襲撃するつもりです」

「一つではないということか……、余り人数を割きたくはないが、その宿の場所を調べて作戦を練るとしよう、ではグレンとアーリ、それと女性の顔をよく知っている者を集めて会議を行おう」

「は、はい!」

 これほど力強い人物が手伝ってくれるなんて夢のようだと、アーリの胸ははちきれんばかりに小躍りしていた。

 明後日の決行と時間のない日程で、トムはずっと夜更けまで皆と地下室に篭りっきりだった。

 マルティアーゼも途中までは一緒に作戦を聞いていたが、眠気には勝てず一人部屋に戻り就寝した。




 月長祭当日、朝から首都ラーマは賑わいを見せて、露店や飲食店では大量の食材が運び込まれて夜の準備に追われていた。

 ムングロ国の人々だけではなく、沿岸諸国の人達も何日も前からラーマ入りをしていて、この日のために貯めてきたお金を盛大に使おうと、朝から外に出てそわそわと歩き回って何処に何の店があるか何処が一番祭りが見やすいかなどの下見を行っていたりしていたが、この国を知る者の本当の狙いは隣町にあった。

 その町こそミレーンであり、宿の使用人達はいつもより綺麗に店の前を掃除をしたり、女郎達は今日着る艶めかしい服をこれにしよう、あれにしたほうがいいかなと、見栄えの良いものを選んでは気合の入った化粧を施して、多くの男達の目に止めてもらおうと騒がしくしていた。

 長い夜を楽しむ目的は女達との濃密な時間で、市民達は安く良い女を、貴族達は高級で口の固い良い宿で一夜を楽しむ。

 お金を積んで前もって女の予約を入れていたりする貴族達も中にはいたりする。

 月長祭の祭りを楽しむ人々の裏では、こうして男達の欲望が渦巻く密やかな裏の顔がある祭りでもあった。

 ミレーンでは多くの男達がまだ開いてもいない歓楽街にやって来ては、何処の店が良いか何処が手頃な値段で入れるかなど値踏みして、安く良い女を見つけようと目を血走らせていたりする。

 しかし、本来の祭りである月長祭はラーマの海岸沿いの砂浜で執り行われ、長い砂浜には既に幾つもの井桁型が等間隔に組まれていて、海岸沿いの道にも幾つものかがり火の準備も出来ており、夜になればラーマの海岸はさながら昼のように明るく灯される。

 祭りの間は眠れない町となり、子供も大人も時間を忘れて踊りや飲食店で飲み明かし祭りを楽しめるように、国が盛大に財力を注ぎ準備をしていた。

 アーリは十人ほどの男達を引き連れ、各自襲撃する宿の偵察に来ており、何処から攻め込み、どの順路で逃げるかなど丹念に歓楽街を探索していた。

 日はまだ天空に昇ったばかりで夜までの時間にはかなりある。

 倉庫ではマルティアーゼとトムが続々と馬車で逃げる支度や、剣や鎧の準備をする男達の姿があった。

「マールさん、準備が終わったら少し眠っておいて下さい、今夜は長丁場になると思われますからね、睡眠を取るのも重要です、皆も準備が出来たら休憩をしておいてくれ」

「そうね、これが終わったら一眠りするわ」

 着々と準備が行われていると、太陽が真上に登り日が沈んで行くまでがあっと言う間だった。

 それもそのはず、今日は一番太陽が出ている時間の短い日で、本来ならまだ夕刻になる頃にはすっかりと日は沈み、大通りには沢山のかがり火が灯され始める。

 マルティアーゼ達のいるラーマの郊外の農場から、町中が煌々と赤く輝き出されるのを確認すると、トムとアーリが数台の馬車に乗って出発の号令を掛ける。

「マールさん、俺達が出ていった後は帰ってくるまで誰も入れないで下さい」

「分かったわ」

「では」

 トムは一言そう言うと、アーリに目配せをして農場から走り去っていく。

 それを見届けると、マルティアーゼと残った男達で扉を閉めていく。

「頑張って……」

 後はトム達がうまく女性達を救出して戻ってこられるように祈るだけであった。

 祭りは何万という人々がひしめき合い、耳をつんざく喧騒の中、歓楽と享楽を満たす長い夜が始まった。

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