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第1話-2 「異世界で始めてみたのは妖精でした」

 和也が気付くとそこはアニメなんかでよくあるような神殿内部のような場所だった。

 出口も入り口もない広い室内の壁側には等間隔に部屋を明るくするための炎が灯っていることから恐らくは誰かがいることは間違いはないのだろうがその姿はない。


「おー、気付いたか和也」


 と声をかけられ隣を向くと目を閉じて突っ立っている朔人と声をかけた啓介がいた。

 目を閉じたまま棒立ちになっている朔人に対して「気持ち悪ッ」とか思いながら啓介に今自分たちが置かれている状況を訊ねる。


「なぁ、啓介。俺たちあの後どうなったんだ。緑のあの穴に吸い込まれてからはなんか頭の中がぐわんぐわんした感じになって気が付いたらこんなとこいたんだけど」


「俺にもわからん。お前と同じように吸い込まれて、ただほんのちょっとお前らより気が付いただけなんだからな。てか、マジでどうしてくれんだよ我が妹の誕生日。帰れるなら今すぐ帰りたい、大体なんなんだよあの穴もこの石造りの神殿っぽいところも」


 啓介が部屋を360度ぐるりと見渡し和也もそれにつられるように見渡したが部屋を灯す明かりに隣でまだ目を覚ますことのない朔人の姿以外は何も見当たらなかった。

 ただボーとしているのも何なので和也は啓介に自分たちに起こっている今の状況をどう考えているか訪ねてみた。


「いや俺に訊くなよ。つか、和也お前の方がこういった状況については詳しいんじゃないのか」


「まぁ、あるこっちゃあるけど、いざ自分の身にそういったことが起きてみると信じられないよな。下校途中だった俺たちがいきなり訳の分からない場所で目を覚ます……恐らくというか十中八九、異世界にいるやつから召喚されたんだろ。どういった経緯でなんで俺たちだったかとかまだ検討もつかないけどな」


「やっぱりかぁー。異世界ねぇ、そういったものに関してはこの中では一番お前が分かってるんだろうけどお前がアニメやラノベとかで得た異世界の知識がこの世界で通用すればいいんだけどな」


「そこなんだよ。アニメとかラノベにある異世界みたいな世界が本当にあるとはわからないからなぁ。例えば、アニメとかでは主人公が使い魔として異世界に召喚されるとか、死んで異世界転生とか、主人公のいる世界と異世界を行き来できる道みたいなのが出来るとか色々あるんだけど……あれ、今回の俺たちの状況ってもう俺の知識の範囲外なんですけどッ。この出入り口のない脱出不可能な場所に男3人とかそんな状況俺の知識にないんですけど!!」


「落ち着け落ち着け。しかし、もうお前の知識が使えないとどうするか。……ん?この場合どれなんだ和也」


「どれって?」


「いやさ、俺も妹ゲーとかで異世界ものしたことあってさ。そこで元の世界の妹選んで異世界から戻っても異世界で過ごした分の時間が進んでない設定と、異世界で妹にしたヒロインと最終的にくっついてその妹連れて元の世界に戻るとその分の時間が進んでいた設定があったんだよ。ちなみに前者はあえて異世界の妹ヒロインを振ってバッドエンドになった先にトゥルーエンドがあるもんだから時間かかったんだけど」


「あぁー、それか。確かにいろんなパターンがあるからなそういうの。でも俺たちの場合はさすがにまだわからねぇぞ。情報がなさすぎる」


 和也の言う通りだった。

 彼らがこれから何かをしようとする上で情報がなさすぎるのだ。

 彼らを取り巻くこの現状をどうやったら打破できるのか。

 そんなことを考え始めようとしていた二人だが朔人が目を開けないのにさすがに不思議に思った。


「なぁ、啓介。お前が目を覚ましてから俺が目を覚ましてこんなに時間かかったか?」


「いや、さっき言ったみたいにほんのちょっとしかかかってないぞ」


「ふむ……もしかしたら」


「どうしたんだ和也」


「いや、可能性の話なんだけどこいつが目を覚まさないから状況が進展しないんじゃないかと思ってさ。3人揃って次のステップへー的な」


「なくもないなそれ。よし、殴って起こすか」


「「せーの!」」


 2人の拳が棒立ちになって防御など無くがら空きになっている朔人の腹部へと放たれる。

 が、2人の拳が朔人の腹部に突き刺さることはなく空を切ったのだ。

 理由は簡単。朔人が当たる直前に後ろへと避けたのだった。

 

「あっアブねぇ!なんか変な感じされたから目を開けたらお前らの拳が俺の腹に当たる直前だったんですけど!?」


 2人は空を切った拳をゆっくり戻しながら朔人が今したことが信じられなかったが、殴られそうになったのをあの状況で避けたのもそうだが避ける動作で後ろに軽く飛んで5メートルも下がったその身体能力にも驚きを隠せないでいた。

 朔人にはそんな動体視力も身体能力もないのは2人は知っている。

 というか避けた朔人本人も驚いていた。

 

 2人は現状がどうなっているのかを考えるあまり見落としていることがあった。

 いや、そもそもこれは啓介よりも異世界に詳しい和也が気づかなければいけないことだった。

 

 和也はそのことに気付いてどうしてすぐにそのことを思いつかなかったのかと長いため息を吐く。

 彼が気付いたそれは何なのかというと――


「はぁぁぁぁぁぁ、どうしてすぐにそれを思いついてしなかったんだろうな。俺たちこの異世界に召喚されたことによって何らかの力を得てるって可能性を考えるべきだったよ」


 アニメやラノベなんかで主人公たちが異世界に転移した場合、必ずと言ってもいいほど現実では持っていなかった何らかの能力を得ている。

 その可能性は和也たちにもあったのだ。


「あぁー、確かにその可能性はあったな。朔人のさっきの動きを考えると身体能力がかなり上がってるうえに勘が鋭くなってるわけだけど、俺たちはどうなんだろうな」


「おおぉ、なるほどー。状況とかいまいちわかんないけど俺たちが異世界召喚されてすっげー力を得たってことだけはわかった。あれ。この力使って美少女を助ければアニメの主人公たちのようにモテれる可能性がッ!!……ていうかさ、お前らなんでそんな冷静でいられんの」


 朔人の言うことはもっともの意見だった。

 和也にしろ啓介にしろ目を覚ますと突然このような場所にいたのに乱すことなく冷静に今自分たちが置かれている状況を分析し始めたのだから。

 焦ったりテンパったりするのが普通だったりするのだが。


 言われて和也も啓介も不思議に思った。

 それでも特に気にすることはなく和也は朔人に答える。

 

「なんでだろうな、1人だったら完全にパニックってるよ俺は。ただ、お前たちがいるから冷静になれたのかな。ほら、赤信号みんなで渡れば怖くない的な。ま、そんなことより俺たちにどんな力が他にあるか試してみようぜ。さすがに身体能力向上だけじゃないだろうし、例えば魔法が使えるかもしれないから自分の知ってる魔法使ってみようぜ。定番の四大元素の火水木風のどれかとか」「あのぉ」


「おっ、いいねー。とは言っても俺が知ってるのは妹系のアニメやゲームとかのやつしか知らないからお前らにはバリエーションは劣るけど試してやる」「あのぅ」


「最近異世界ものでエロ要素が多いアニメとか見てるから啓介よりは魔法の種類は知ってるぜ。つか、エロアニメで意外に異世界もの多いんだけど魔法とか少ないから頼りにならないんだよなぁこういう時」「あのー」


「まずは俺が見せてやるぜ!四大元素だけじゃねぇ、すべての属性を合わせた俺が今まで見てきた異世界の魔法で最強じゃねと思った魔法をなッ!いくぜ――「あのッッ!!!」


「「「!?」」」


 和也のセリフを遮った声は女性というよりは幼い女の子のものだった。

 その声に3人は驚きを隠せないまま、幼い少女の声が発せられた方向を場所的には和也の右の腰あたりを見るとそこには声から想像できる通りの少女が立っていたのだ。

 だが、ただの少女でないことは見てすぐに分かった。


 身長は、まぁ幼い少女と言えば幼い少女くらいで和也の腰程度くらいはある。

 問題は身長のことを抜いたその容姿だ。

 明るめの緑色のふわっとした髪は肩甲骨あたりまで伸びていて幼顔は可愛らしく美少女に値する。そして何よりも異様だったのは背中から直接生えている一対の透明な羽だった。

 透明とは言っても角度が違えば虹色にも輝いて見え、ちょうどシャボン玉のような感じの色だ。

 まさにその姿はアニメやラノベに出てくる妖精そのものだ。


 そんな美少女妖精を観た啓介はというと、


「おっおおおおおおおおッおおおおおおおおおおおおおぅうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」


「ひゃわわッ」


 どストライクの美少女に興奮を抑えきれないでいる啓介。

 美少女妖精は反射的に身の危険を守るためか和也の後ろに隠れてしまう。

 今にも美少女妖精に襲い掛かりそうな啓介を後ろから止めに入る朔人も妖精の姿に少しデレていた。


「落ち着こうぜお前ら。異世界に美少女の妖精なんて普通だろ、これからもっと美少女に会う可能性だってあるんだぜ?こんなんでそれだったらこれから先やってけねぇぞ」


「はッ、確かに!これからさき俺のいもうt――ゴホン何でもない朔人、もう大丈夫だ離してくれ。ごめんよ、小さな妖精さん」


 冷静さを取り戻したと判断した朔人はゆっくりと啓介を離し、まだ和也の後ろに隠れている妖精へと視線を向ける。

 どうやらまだ啓介のことが怖いのか和也の後ろからは出ようとはせずに少しだけ顔を覗かせてそのまま話し出した。


「あっあの、私はフェリと言います。あなた方を待っている方の使いで参りました。さっそくで申し訳ないのですがあの方が待っている部屋に連れていきますね」


 フェリとしては自分に課せられた任務を早く終えて3人からいや啓介から離れたくてしょうがないのだろう。


「ではいきますね。“場所移動テレポート”」



 彼女が唱えたのは3人が初めて体感する魔法になった。


 

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