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蒼炎の姫御子と幻影の覇者  作者: ザウルス
ネメシア魔術学園編
3/4

戦慄の魔女

「ふう、意外ともろいもんだ。。」


アキトは学園の廊下を堂々と歩いていた。


門のところに行くと、案の定、この学園の職員らしき人物から止められたが、手に持っていた招待状を見せたら簡単に通してくれた。


案内しましょうかと言われたが、断った。


紹介状の中に地図も入っていたし、下手に付きまとわれて感づかれたら一貫の終わりだ。


どこの国の王様や貴族だろうが男は絶対に入れないのだ。それが、親であっても。


アキトは、禁断の聖地に足を踏み入れている事を十分理解しているつもりではある。


しかし、気持ちいいぐらいだれも疑おうとなかった。


途中、「あんな子いたっけ?」と話し声が聞こえたが、「編入生じゃない?」と軽い感じで終了した。


「ここが、教室か……うわ、レベル高そ。」


教室を通りかかると、教師が魔術理論について淡々と語っていた。


話しているうちの9割はわからなかったが、生徒達はきちんと答え、全部正解していた。


まぁ、彼女たちにとっては常識なんだろう。


なんやかんやして、学園の雰囲気を満喫していると目的地に着いた。


そこは、校舎から完全に独立した建物に設けられた部屋。


理事長室。


この学園で1番偉い人物がいる部屋。


地図を広げ、ここがあっているかを再度確認する。


間違いはない。


あいつはここにいる。


旧友との再会はいかなるものだろうか。四年ぶりか。あいつも出世したもんだ。


目の前の木製の扉をアキトが叩こうとすると


「学院長!それは、本当なんですか!?」


突然、部屋の中から女性の強い声が聞こえてきた。


ドア越しでもわかる凛とした声。どこかで聞いたことある気がするな……気のせいか。


丁寧語の中に若干の怒気が混ざっている。お取り込み中だろうか。


終わるでしばらく外で時間をつぶそうかと思ったその時


「お、丁度客人が来たみたいだ。はいっていいぞ。」


女性の意見を無視して、ドア越しにアキトに問いかける。


この、自由奔放な性格。そして、抑制された静寂な声。すべてを見透かされたようなトーンで自然と寒さが襲ってくる。


やっぱり、築かれていたか。相変わらず厄介なやつだ。


アキトは、ドアノブを回して、その部屋に入っていった。


「よう、ダルダロッサ。相変わらず趣味が悪いなお前は。」


「ふん、貴様が言える立場か?」


約、四年ぶりの旧友との再会。


戦慄の魔女ーダルダロッサ・ロッドバーン。


わずか、12歳で精霊術師の資格を獲得し、15歳で精霊術師の中でも最高位の存在である十二天将の地位まで上り詰めた生きる伝説だ。


そして、公務に飽きたという理由で、十二天将を離脱しネメシア魔術学園理事長の座に就いた。


そんな人物と間近に出会えるのは奇跡としか言いようがないが、アキトにとってはどうでもいい。


「学園長、この人はだれですか?」


先ほどまで、ダルダロッサと話し合っていた女性。よく見たらここ制服を着ていて、胸に皮の胸当てを身につけ、腰に剣を帯刀している。


精霊術師というより、騎士にちかい感じだ。


赤い瞳は、真紅の炎のように美しく、長い金髪の髪をツインテールに纏め、鋭い切れ味を持つ美しく少女だった。


「ああ、こいつはカミシゲ・アキト。私の旧友で戦友でもあった。」


「……戦友ですか?」


いや、そこはパートナーといってほしい。まぁ、戦友も変わりないからいいか。


「ああ、こいつがいなかったら私は死んでいた……とまではいかないが、役に立ったとまではいっておこう。」


相変わらずの性格で安心した。本人はまだあの時の事を認めたくないのかツンデレなのかわからないが文句ばかり言ってくる。


まぁ、俺自身も危ないところを助けてくれたしその点ではお互い様ってところだろう。


「……ですが、いくら学院長の戦友だからと理由で神聖な校舎に一般人を連れ込んでいいのですか!?」


彼女の言葉にも一理ある。ここは、だれから見ても神聖な場所。理事長とはいえども、簡単に一般人を招き入れるのはどうだろうか。


「しかも、よりによって男だなんて!!」


そうそう、よりにもよって男……


ん?


今、男って言わなかった?


今の俺は女に見えるはずだが……聞き間違いか?


「不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔不潔!!」


壊れたかのように、不潔という言葉を連呼する。


いつの間にか、腰の剣を抜刀していた。


刹那


シャン!!


アキトが斬撃を躱すと、目の前の机が綺麗に真っ二つに割れた。


あの、レイピアみたいな細い剣でよくここまで。相当な鍛錬を積んでいるようだ。


剣を抜く動きも無駄がなくて神速と言っても過言ではない速さで突き刺してくる。


それよりも驚いたのは、幻影を見破られたことだ。


(恐らく、相当に強力な精霊と契約しているな。少なくとも帝級クラスか。歩いは……)


あの、森で出会った少女と堂々……身体能力で行ったら彼女の方が上か。


「私は、風紀委員代表メリル・レイスベントとして、神聖な学園に無許可で入った貴方を生かすわけにはいきません!!」


アキトは再び驚いた。


(まさか、レイスベントケ大公の娘とはな……とんだ大物に目をつけられたもんだ。)


いくら言い訳を言っても効きそうにない。


あれを使うか。


しかし、この茶番劇はダルダロッサの一言で終止符を打つことになる。


「剣をおさめろ。この学園にいる以上、許可無しの私闘は禁止だ。」


「しかし!」


「私に2度も言わせる気か?」


殺気に近い威圧、空気が一瞬にして変わり、血気盛んだった、メリルも小動物のようにおとなしくなる。


それどころか、剣を持つ手がブルブル震えている。


「申し訳ありません……」


恐怖に震えた声で答えたあと、落ち着きを取り戻したメリルは剣を収め、部屋から出て行った。


その間に、アキトに向けて殺気丸出しだったのは言うまでもない。


「すまないな、彼女は真面目なんだがどうも堅物で、男が苦手みたいなんだ。」


「だろうな、典型的な男嫌いって感じが伝わってきたよ。」


「はは、流石の幻影使いもお手上げか。」


「ああ、まいったぜ。」


以外と偏屈な人物に限って通用しないことがあるから参るよ。ほんとうに。


「それもりも、早く幻影を解け。気持ち悪い。」


「ああ、すまないな。」


ー解除


「さて、うるさいのもいなくなったし話しを始めよう。」


「ああ」


アキトは普段、こんな危険なことをしてまでダルダロッサに会いに行くことはほとんどない。


しかし、招待状の中に入っていた手紙に書かれていた内容がアキトを動かした。


「本当なんだろうな。」


手紙を目の前の執務机に叩きつけ、彼女に強める。


亡霊(シャドウ)が生きているっては」


アキトの目は真剣だ。


「ああ、間違いない。私に傷を負わせ十二天将を離脱させ、お前に呪いをかけたあの女は生きている。」


ダルダロッサは、袖をまくり右腕を見せる。


「まだ、治ってなかったのか。」


彼女の右腕は、火傷そして、切り傷が未だに呪いのように残っている。


「秘術をかけても、この有様。今の私はロクに術も使えない。生きる伝説だなんて、呼ばれてるが、もう伝説は死んだも同然。」


亡霊は彼女から全てを奪った。


そして、何より、何もできなかった自分が悔しくてならない。


「だが、今のお前では亡霊に立ち向かうどころか、相手にもされないだろう。」


それは、言われなくても室然としたことだ。


「しかし、彼女を倒せる可能性があるのはお前の中にいる幻影(バケモノ)だけだ。」


そう、亡霊に瀕死の傷を負わせたのは俺ではなく俺の中に眠る幻影だ。


その代償として、呪いを受けた。呪いは今でもアキトを乗っ取ろうと鎖のように巻きついている。


誰にも解くことができない、見えない鎖に苦しまされている。


この事は、ダルダロッサにも伝えてある。彼女も必死で呪いを解こうとしてくれたけど無駄に終わった。


「でも、俺はそれをまったく制御できない。こんど、中身が飛び出したら俺は壊れるだろうな。」


それは危険な賭けだと言い聞かせる。しかし、ダルダロッサにはある考えがあった。


「そこで……」


突然、彼女が書類を引き出しから取り出すとペンにインクがあるか確認したあとそれをアキトに放り投げた。


「これは……」


「条件だ。これに名前を書け。」


「ーっ!?正気か!?」


それは、ネメシア魔術学園の編入届けの紙であった。すでに、学院長の承諾の判子が押されており、あとはアキトがサインすれば編入が可能に。


「私は、常に冷静だ。」


「どこがだ! 世界大戦の引き金でも引く気か!?」


「そんなもん、私の権限でなんとかなる。」


「随分偉くなったな、お前は何様だ!?」


「戦慄の魔女ーダルダロッサ様だ。」


もはや、何を言っても無駄なようだ。


しかし、ふざけたショートコントも彼女の冷たい声で終わりを告げる。


「勘違いするな。これは、遊びでもおふざけでもない。」


メリルに放った威圧よりもさらに強力な殺気が放たれる。流石のアキトも本気のダルダロッサには黙るしかない。


「幻影の覇者アキト。その存在は世の中から消され私以外に素顔をする者はいなくなった。だが、世界はお前を許そうとはしない。すでに、多くの国がお前を求めて動き出している。」


「………」


「既に、私の元に何人もの精霊騎士や精霊騎士が訪ねてきている。その中には、十二天将もいたがな。」


「十二天将もか……」


これは、本格的に体制を整えないといけない。十二天将が動き出したとなれば戦闘は避けられないだろう。


「それにー」


ダルダロッサは悪魔のような微笑みで


「うっかりしてバラしちゃうかも。あは!」


なんて、可愛らしい仕草で言われても脅迫にしかならない。


「それに、よく考えてみろ。世界中の名だたる令嬢達が集まる学園に男子一人。酒池肉林のハーレムじゃないか。」


「俺はそんな趣味はない!!」


あんたそれでも、理事長か。


そんな奴から生徒を責任持って守るのが仕事だろうが。


「お前のことだ。きっと、半年後には……ご主人様との主従関係か。男だな。」


「おう、その発想ができるお前が怖いよ。」


「まぁ、半分は冗談だ。」


いや、全部冗談だから。半分てお前の中で俺はどんな存在なんだ。


「目を合わせただけで妊娠しそう。」


どうやら、獣扱いのようです。


「わかったよ、これでいいか。」


悩んだ挙句、アキトは紙にサインをした。


それを半端強引に取り上げ、確認したあと


「ネメシア魔術学園へようこそ、カミシゲ・アキト





















































精霊の階級


神級>帝級>特級>上級>中級>低級


ネメシア魔術学園に通う生徒は全員が上級以上の精霊と契約している。

ちなみに、ダルダロッサは神級精霊と契約しているが、誰もその姿を見たことがない。







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