第09話 日程調整の感覚
サラがスケジュールという概念に首を傾げたのには理由がある。
冒険者に限らず、この世界の連中はスケジュールという概念が、
おそろしく薄いのだ。
暁の月、翠星の月、蒼の月、といった月の概念はあるが、
週という概念がない。
およそ、3日間を一まとまりにして、それを1つ、2つ、と数え、
16つで1月となる。
だから、冒険者の連中は、昨日、今日、明日、ぐらいの感覚で生きているし、依頼内容も3日間を区切りにしたものが多い。
幸い、1年間の区切りは「新年の儀」や「麦撒きの日」などが決まっているので、大体は理解できるらしい。
つまり、日本でビジネスマンがやっているような、
1日を4つに区切って、1週間を20分割したスケジュールで打ち合わせや仕事を時間単位で調整して入れていく、などという概念がないのだ。
当然、スケジュール表もないし、ビジネス手帳もない。
手帳・・・売れるかな。ダメだ、資本がないし真似されるだけだ。
まあ、大商人などは感覚も違うのかもしれないが。
農民あがりの冒険者は、基本的に、その日暮らしの連中なので
「5日先の昼の鐘と夕の鐘2つの間に打ち合わせ」などと言っても困惑するか、酒を飲んで忘れるだけだろう。
この世界には機械式時計も存在しない。
教会の鐘は、よくわからない不思議な力で刻を知らせてくれるが、
高価なので街に一つあればいい方だ。
いずれにせよ、紹介者を確保する仕組みはできた。
次は、紹介先を整理する仕組みが必要そうだ。