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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
▼再開:第四十章 街に戻って経営管理の仕組みを作ります
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第759話 住居問題の問題

本日、コミックで「冒険者パーティーの経営を支援します!異世界コンサル株式会社」が発売されました!

とても良い内容に仕上がっておりますので、よろしくお願いします!

またニコニコ静画、コミックウォーカーさんでも最新話掲載されております

調査のために教会へ連れて行く要員の話が一段落したところで「それでね。やっぱり気になることがあるんだけど」と、サラが切り出した。


「気になること?」


「うん。街が・・・聖靴通りっていう名前になるんでしょ?住んでいるところが綺麗になるのは皆も喜ぶと思うんだけど」


「そうだな。道も建物も綺麗になる。客も身なりが綺麗で懐が豊かな連中が増えて買い物もしてくれるだろうさ」


だが、俺の答えはサラを満足させなかったようだ。


「それって職人さんとか、通りの元の商売をしてない人達とか住む所ってあるの?だって、すごく何て言うか・・・お金のある人達の街になるんでしょ? 朝ご飯は市を開いてもらうにしても家賃とかすごく高くなっちゃいそうだし・・・みんながお金持ちってわけじゃないでしょ?」


「そうだな」


区画整備にはつきものの立ち退きと住居問題。これは避けて通れない。

ところが、この世界の常識的には、そもそも問題は存在しない。


なぜなら城壁内の2等街区の市民ならばともかく、3等街区の住人には正確な意味での現住所は存在しない。教会で生まれてすぐに登録管理される生誕名簿は文字通り生まれた場所を保証してくれるが、実際に住んでいる場所は示してくれないのである。


ということは、街を管理する貴族や教会等の公権力からすると3等街区の市民を退かしたところで、名簿上の市民が被害を訴えない限り特に対応することはない。


記録にないのだから問題にならない、ということだ。


マルティンが管理する駆け出し連中に調査させたところによると、そうした「生誕名簿上の住所」と「実際の住所」が重なっていない事例は全体の4割以上に上る。

主な理由は違法建築ーー建築基準法がないので正確には違うのだがーーにより建て増しした住居に親族や他の領地からの家族等を住まわせているためである。

なぜそんなことが起きるのかと言えば、都市という居住空間の不足と3等街区の庶民の収入不足による。

結局のところは都市計画と低価格住宅の不足という構造問題に帰着するのであるが。


「というわけで、元の住人が住めるだけの住宅部分は作ることにする」


しかし、疑問の声はあがる。


「でもどこに?聖靴通りにはそんな余裕ないでしょう?広い通りを真ん中に通して、豪華な店をずらっと並べて、周囲は壁になるように作る。たくさんの人が商売できるようにお店は貸すだけ。だから人が住めるようにはできないでしょう?2階だって食事拠にするんだから、普通の商家みたいに住める場所にするわけにはいかないし」


「そうだな。アンヌの言うとおりだ」


アンヌの指摘は正しい。

聖靴通りは非日常のイベントと食事に特化した遊園地のような場所にする。

遊園地の施設に日常の暮らしが入り込む場所はない。


「じゃあ、どうするの?」


「実は選択肢は3つある。そこまで難しい問題じゃない」


「聞きましょうか?」


アンヌだけでなく、全員にわかるよう黒板に白墨で書いていく。


「1つ目。金を渡して別の場所に転居してもらう。住む場所については教会の力と剣牙の兵団の力で確実に確保する」


教会と駆け出し冒険者の連中を使えば空いている住宅の情報は集められるだろうし「教会の方からきました」と傭兵達が押し掛ければ「嫌です」と貸し渋りをする家主はいないだろう。

確実で現実的な選択肢ではある。


「2つ目は?」


「住宅部分を作る。今は通りを挟んで店舗兼壁を作る二重の殻のような構造の計画になっているが、幅を広げて通りー店舗ー住宅兼壁の三重の殻にする。計画地は広くなるが、まあ仕方ない」


「そうね・・・それなら何とかなるかも? でも予算は増えるわね。それに、そんな場所に住むのは嫌だと言ったら?」


「それなら1つ目の選択肢に戻るだけさ。用意した引っ越し先に転居してもらう」


「そうね。それじゃ3つ目は?」


「横じゃなく上に延ばすのさ。店舗部分を3階建て、あるいは4階建てにする」


「4階建て!それじゃ2等街区の建物じゃない!」


「そう。2等街区で出来てるのだから、ここで出来ないわけじゃない」


怪物を退ける城壁のため2等街区の面積は限られている。

そのために内側の建物は上へ上へと歴史と共に住居は建て増され、今では3階、4階建ても珍しくない。


それが可能なのは地震が少ないという土地柄もあるが、何よりも上質な石材をふんだんに用いた専門の職人の腕によるところが大きいだろう。

3等街区の住宅が素人工事と端が磨耗して丸くなった石材に枝や泥をつっこんだ粗末な建築部材により、2階建てでも傾いている住宅が珍しくないのとは好対照だ。


「つまり、こちらも金をかければできる。あとは横に広げるのと上に積み上げるのと、どちらの方が技術と予算がかかるのか。それ次第だな。おそらくは3つの選択肢の組み合わせになると思うが」


「それって、そこに外から住みたいって人も出てくるんじゃないかしら。だって聖靴通りは毎日が綺麗で賑やかで警備の人が毎日いる安全な街になるんでしょ?お金持ちも住みたがるわよ。あたしだって住みたいわ」


アンヌが嫌な未来像を指摘した。


「・・・そういう見方もあるな」


住宅問題を解決しようとすると、なぜか高級住宅開発をしていることになっている。

旧来の住人と投資してでも住みたいという金持ちの住人の折り合いをどうするか。

問題を解決したつもりが増えたような気もする。

7000字程度の短編「俺は働かない。宇宙の果てが尽きるまで」を書きました。

下記のリンクから行けるようになっています。

「働きたくない!」という強い気持ちをお持ちの方に読んでいただけると嬉しいです

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― 新着の感想 ―
[一言] コミック買いましたよー 面白かった
[良い点] 続いてくれているのがとにかく [一言] おめでとうございます、買います! 続いてくれたのが嬉しくて、引き続き支えていきたいと思います。
[気になる点] 間違ってますよー。 ニコニコ静蛾
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