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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
▼再開:第四十章 街に戻って経営管理の仕組みを作ります
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第736話:街の土地は誰のモノか

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昨夜、サラと話して理解できたことがある。


どうも、俺が意図している土地開発(というより、区画整理)は、この街の住人には馴染みがない手法かもしれない、ということだ。

であれば、準備は余程慎重にやらなければならない。


◇ ◇ ◇ ◇


翌朝、朝食をとってから地区の教会に調べ物に行くことにした。


「おや、代官様どんなご用で」


「ニコロ司祭様から仰せつかった用事がありまして」


「それはそれは・・・ご自由にご利用下さい」


ニコロ司祭の権威の余勢というべきだろうか。

あるいは教会と癒着してきたお陰かもしれない。

以前は、参照するだけで大銅貨を請求された教会の記録保管庫に、今は顔パスで自由に出入りできる。


「あった・・・これか」


探していたのは、3等街区の土地売買の記録である。

というのも、この街で土地を売買するには教会の仲介が必要不可欠であり、その過去の事例を調べておきたかったからだ。


この世界のこの時代、一般に農地の売買であれば農民や農奴が土地の財産として同時に売買されるように、街の土地であってもそこに住む職人や商店は財産として同時に売買される。

その種の所有権の書き換えは住人の誕生と死亡を記録する教会の生誕名簿を基準として行われるため、教会が正義(と適切な報酬)に基づき名義の書き換えを行うことになっている。

ちなみに、この土地売買の手数料は教会の主要な収入源の一つでもある。


そして、ここからが俺が知りたかった本題である。


「・・・やはり、ないか」


過去数十年分の記録を遡ってみたが、3等街区の土地をまとめて購入した貴族の記録もなければ、開発に資金を投じた様子もない。


「売り払った記録はあるんだよな」


大規模な火事のせいで税収が見込めなくなったため、復興資金をケチって地区ごと売り払った記録はある。

まあ、貴族からすると3等街区の住人は放っておけばいずれ増える存在でしかないのだろう。


「サラのやつが拒否反応を起こすはずだ」


色褪せた羊皮紙の記録に、悪態をつきたくなった。


◇ ◇ ◇ ◇


「だってお貴族様って、そういうものでしょ?」


と、元農民のサラはいう。


「まあ・・・そういうものか」


貴族の端に加わっている身としては、率直な意見に苦笑せざるを得ない。


「ケンジは街の土地をたくさん買いたいの?」


「いや。そんな資金はないし、そのつもりもない」


貴族から土地を購入するとなれば教会が仲介してくれたとしても莫大な資金と手数料が必要となるし、そもそも代官の身分で伯爵が統治する街の一画をまとめて購入することなどできないだろう。


「じゃあ、どうするの?」


「貴族を挟まずに、勝手にやる」


「えー・・・大丈夫?」


貴族が土地を購入するのは何故か。その土地の徴税権が欲しいからだ。

人が済んでいれば人頭税を取り、商店があれば売上税を取る。

もっとも街は伯爵が統治しているわけで、税は伯爵に献上された後で土地を所有する貴族に配分される形になる。


「実際、俺たちは勝手に土地を買ってるじゃないか」


土地の売買を3等街区の人々がしてないか、といえばそんなことはない。

教会の記録にはなくとも、親子や親類縁者で土地や建物を融通し合う、親方から弟子に店舗や工房を譲り渡す、という形で行われている。

うちの靴工房でも工房拡張のため、同じ方式で革通りの幾つかの工房の土地を購入している。

しかし、これは実態としてはある種の私的な利用権の売買であるから、教会は関与していない。


「そう言われてみれば・・つまりどういうこと?」


「つまりは、教会の記録と実際に利用している人は違う可能性が高い、ということだな」


「それって・・・なんで?」


「手間と比較して儲からないから・・・かなあ」


教会が管理する記録上の土地の所有者と実際の土地の住人の利用者は、かなりの乖離がある。

これは教会の生誕名簿の更新が住人については誕生と死亡のみ記録するという農民に生まれて農村で一生暮らす人間を対象とする記録管理方式、ある種の長期の国勢調査的な方式が商業活動の速度の実態に追いついていないからでもある。


2等街区以上ではもう少し厳密に管理しているかもしれないが、3等街区の庶民の記録を詳細にとったところで手間と利益が合わないのだろう。

人はいずれ死ぬし、その際には生誕名簿で記録が修正されるのだから放っておいても数十年単位で書類上の整合性は取れるわけだ。

俺もそのあたりの隙間を縫う形で、ゴルゴゴと私的に交渉して傾いた工房の利用権を手に入れたのだから、文句を言う筋合いでもない。


「それに土地が誰のものだろうと関係ない。考え方次第さ」


俺は綺麗な道を通したいだけであって、貴族のように、そこに住む人々から税を取り立てたいわけじゃない。

教会の名の下で、教会のために、お節介にも勝手に汚れた3等外区を花の香り漂う綺麗な地区に作り替えるのだから感謝されこそすれ、反対される筋合いはない。


いちおう、理屈の上では。


「大丈夫かなあ・・・」


心配そうなサラに声をかける。


「普通にやれば大丈夫じゃないな。道を掘り返し始めた途端に、貴族に雇われた破落戸、用心棒が押し寄せてくる。街の人達からも罵声を浴びて袋叩きに合うだろうな」


「ダメじゃない!!」


「耳元で叫ぶな・・・。だから、そうならないやり方を考えるんだ」


貴族からも街の人々からも敵視されないよう、教会の権威を上手く使いつつ3等街区に綺麗な道を通す。

それが、今回の知恵の絞りどころだ。

本日の内容は少し小難しいかもしれません

貴族は税にしか興味がなく街の人は勝手に売買しているが黙認されている

教会は庶民の小銭のやり取りに興味がないので同じく黙認しています、ぐらいの理解でお願いします


26日に発売の月刊コンプエースでコミカライズ第3話が掲載されます。

また2話まではcomicWalkerさん、ニコニコ静画さん、Pixivさんでも公開されています。

リンクは活動報告をご覧下さい。

連載継続のため、応援いただけるとありがたく思います。

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