第715話:傭兵達の始末
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輜重隊が来る、ということで剣牙の兵団の連中の食糧問題は片付いた。
だが、もう一つ頭の痛い問題が残っている。
あの子爵様に従った傭兵達の捕虜の始末である。
「どうしたものかな・・・」
昨晩は、一晩だけのことであったから素人の農民達でも交代で見張りが出来たし、傭兵達も身代金を払えば解放される、という見通しがあったから屋敷の庭に縛られての夜明かしでも大人しくしていた。
しかし、領地の引き継ぎのためにもう2、3日滞在するとなると、傭兵達の身柄をどうにかしなければならない。
「この領地で雇わないのか?人手が足りないだろう」
「考えないでもなかったが、無理だな。村人に受け入れさせるには素行が悪すぎる」
ジルボアの提案には一瞬だけ魅力を感じたが、村人が一斉に蜂起した理由を思い出して却下した。
雇い主の目が少し離れただけで、村人相手に強盗、誘拐、強姦の山賊三連コンボをやらかそうとした連中だ。
そんな連中を抱え込んでいては、村の治安が守れない。
「と、なるとどうする?」
ジルボアの目が冷たく光る。始末してしまえ、ということか。
いや、と首を振る。
戦いの中でならともかく、捕虜を殺すのには抵抗がある。
「あの若様に身代金を上乗せする形で払っていただこう。武器と防具は没収して放逐する。街にたどり着くぐらいの食料と水は持たせる。途中で強盗など働かれてはたまらないからな」
ふうっ、とジルボアがため息を吐く。
「ケンジは、相変わらず甘い」
甘い、かな。まあ身代金の分だけ金銭が上積みされて入るのだから、甘くてもいいじゃないか。
好き好んで血を流すことはない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「と、いうわけでお前達を解放する。武器防具は没収するが、街にたどり着けるだけの食料は渡す。身代金は子爵様が建て替えて下さった。必ず後で返すように。すぐにこの領地から立ち去るよう命じる」
一応は傭兵達に誓約書を書かせる。とはいえ、連中も学はないので、こちらで内容を読み上げて羊皮紙に署名させるだけだ。
身代金は1人あたり銀貨2枚。それが、武器防具を除いたときの、こいつらの命の価値だ。
返すかどうかは知らない。取り立てる責任は子爵様にある。
「くそっ、大損害だぜ!」
「もう二度とあの子爵の依頼はゴメンだ!」
生き残った傭兵達は悪態を吐きながら、日の沈みかけた道を領地の外へと足を引きずるようにして出ていった。
「どうですかね?連中、街までたどりつけますか」
キリクが遠くなっていく背中を睨めつけながら言う。
「どうだろうな。これから野宿となると、魔狼に襲われるかもしれないな。火種を隠し持つぐらい才覚のある奴がいれば、一晩ぐらいは越せるだろうが」
無事にたどり着ける確率が7割、野垂れ死にが3割、といったところだろうか。
近くでは、ジルボアが例の冷たい光を湛えた目で同じ方向を見ている。
その横顔を見ていると、なんとなくだが、連中が街にたどり着くことはないのではないか、と思えた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
傭兵達の姿が見えなくなり、しばらくして剣牙の兵隊の輜重隊がやってきた。
2台の頑丈そうな荷物を満載した馬車に、数名の剣牙の兵団が乗り込んでいる。
この世界では画期的な仕組みのはず、なのだが・・・
「なんだか、普通の街間商人っぽいな」
それが最初の印象だった。剣牙の兵団の輜重隊だというから、特別な装備や馬車を持っているような先入観を持っていたのだが、それが裏切られた気分だ。
「それはそうだ。商売がうまく行っていない街間商人を兵団が買い取ったのだからな」
ジルボアが笑った。
考えてみれば、街間商人は引退冒険者なわけで、装備も陣営も元々から野外での活動を念頭に置いている。
剣牙の兵団が輜重隊を揃えようと思えば、そうした連中を買い取るのが合理的なわけだ。
言われてみれば当たり前のことだが、その当たり前を当然のように思いつき、実行できるからこそ、ジルボアは凄腕揃いの連中がひしめく剣牙の兵団でも、絶対的なトップでいられるのかもしれない。
「これで滞在中は豆のスープで腹を満たさなくて済むな」
「あれは慣れれば結構いけるんだ。まあ、肉はありがたくいただくが」
近づいていくる馬車を眺めてジルボアと軽口を叩きつつ、久しぶりに味わう肉の味を想像して、口内に唾が湧くのを感じた。
明日も更新します。
購入報告、ありがとうございます!
早いところでは書籍の発売も始まっているようです
本日販売ということで、緊張しております(初速がとても重要なので




