第07話 依頼者と清算する
数日後、キンバリー達、新米冒険者は無事に依頼を果たして帰ってきた。
「よく帰ってきたな。とりあえず鍛冶屋行くぞ」
早速に酒場へ繰り出そうとするキンバリー達を留めて、ケンジは街廻りをする。
鍛冶屋につくと、剣を研ぎに出させる。そして費用を仮払いする。
次に回るのは革細工職人のところだ。
職人に言って、鎧の痛みや解れを修理する。
ここでも費用を仮払いする。
そうして、ようやく冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドで報酬を受け取ると、費用の計算だ。
食費+鏃+触媒+研ぎ代+修理の総計を、報酬から差し引く。
すると、大銅貨3枚と銅貨5枚が残った。
早速に分けようとするキンバリー達に、ケンジから待ったがかかる。
「ジンジャー、魔術触媒は幾つ残ってる?」
「火の触媒が2つと風の触媒が1つですね」
「キンバリー、矢の残りは?」
「7本です」
「じゃあ、それらは各自の報酬から引くぞ。評価額は買った時の値段でいいな?」
値段については、一緒に買い物したときに見ているので、一同は頷く。
1人あたりの報酬として、銅貨8枚が残った。
「これだけか・・・」というのが全員の正直な気持ちだった。
「まあ、そういうことだな。近郊のゴブリン討伐なら、こんなもんだ。だがお前らは、こんなもんだ、ってこともわかんなかったんじゃないか?」
とケンジに言われて、キンバリー達はバツの悪い思いをした。
それに、少なくとも赤字ではない。
「今回はサービスして1人あたり1枚で、銅貨4枚だな。ほら、出せ出せ」とケンジ。
まあ、貧乏人相手ならこんなもんか、とケンジは思う。
ケンジがしたことは、依頼前に1時間、依頼後に1時間ほど、
街を回って案内しただけだ。
それで銅貨4枚なら、時間あたりの報酬としては悪くないだろう。
目の前の初心者たちは、3日間かけて命がけの仕事をして、銅貨8枚の報酬だったのだ。
それでも、ケンジの手助けがなければ、きっと赤字で、それに気づけなかっただろう。
今回の報酬があれば、次の報酬までに半額は貯金できる。
仲間とお金でもめる可能性も減った。
そうして、1月もすれば装備も良いものに更新できる。
装備を更新するときには、また買い物に付き合ってやるか、とケンジは思った。