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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第三十九章 領地の現場を歩いて復興を支援します

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第664話 分けることで金になる

「それにしても、随分と単純な機構なのですね」


パペリーノはゴルゴゴが作成した豆の分別器械に近づいては、カラカラとベルトを回しながら嘆息する。


確かに外見は、不格好な籠が3つ繋がってぶら下げられているだけである。

このヘチマが教会にとって巨大な利権につながるとは、とても見えないだろう。


「ちょっとよくわからんのですが」と前置きしてから聞いてきたのは、キリクだ。


「豆の大きさが揃うと、教会が何で得するんですかね。農家が楽になる、とかならわかるんですが」


キリクは街の小麦を扱う商家の出身であるし、そこを出奔してからは恵まれた体躯を活かして剣牙の兵団にいたわけで、貧しい農家や底辺冒険者の暮らしとは無縁だったのだろう。

厳つい外見に反して、領地での食生活の貧しさに真っ先に参っていたのもキリクだった。


「そうだな。小麦を等級でわけることには価値がある、というのはわかるか?」


「そりゃあ、わかりますよ。一番いい小麦は貴族が食べますからね。白いパンは高く売れる。常識じゃないですか」


逆に言えば、等級を分けたところで、豆は農民や貧民しか食わないでしょう?ということである。

キリクの言葉は正しい。この世界の人間にだって優秀な人間はいくらでもいる。

なのに豆の分類がされてこなかったのは、そこに価値が発生しなかったから、という合理的な理由があるはずだ。


「そうだな。豆は貧しき者の味方、というのは正しい」


サラなどは懐事情が良くなってからは、白いパンばかりを食べるようになり、豆は敬遠するようになっている。

貧しい頃に食べすぎて、豆に良い思い出がないのだろう。


「だが、この豆はどうだ?形も揃っているし、大きさも粒が大きいだろう?」


器械でより分けられた豆のうち、終端近く、つまり最後まで穴に落ちなかった豆を一掴みしてみせる。

その豆はいずれも粒が大きく、一様であり、まるで工業製品のような趣がある。


「そりゃあ、上澄みは貴族や商家には売れるかもしれませんがね、あっちはどうなるんですか?」


キリクが指差す先には、まっさきに振るい落とされた割れた豆や形の小さな豆、いわゆるクズ豆があった。


「あれはあれで使いようがあるだろう。潰してペーストにするか、鶏に食べさせてもいい」


「まあ、そうなんでしょうが」とキリクは多少、納得がいかない様子を見せる。


キリクの態度は文句を言っているのではない。

とりあえず付いてきて、護衛の仕事だけをしていればいい、という意識だったのが、自分なりに納得をしようとしているのだ。


「一番のポイントは、分別することで豆に換金価値が生まれることだ」


「大きな豆は貴族様が食べて、クズ豆は鶏が食べるってこと?それって、いいことなの?」


クズ豆を食べさせられそうな農民出身のサラとしては納得がいかない話かもしれない。


「まず、教会にとっては巨大な価値がある。そうだな?」


パペリーノに話を振ると、聖職者は大きく頷いた。

利益や費用コストで説明をするのは難しくないが、農家のサラや商家のキリクにどう説明するべきか。


少し考えて、身近な例を元に説明をする。


「そうだな。例えば、畑の売買を考えてみようか。もし手元に十分な資金があって、畑を買おうと思ったとする」


今なら、サラも自分の資金だけである程度の畑を買うことはできるだろう。

キリクは商売を始めるだろうが、剣牙の兵団には農民に戻りたい者もいるかもしれないので、他人事ではない。


「だが、買おうとした畑は長いこと手入れされていなかったせいか、あるいは農民が無知だったせいか。麦畑という話だったが、小麦、大麦、ライ麦、燕麦など様々な麦が雑に入り混じって生えている状態になっている。この麦畑をいくらで買う?」


「えーと、全部植え替えるのはなし?」


「なしで」一応は思考実験なので、そうした前提から覆す方向はなしということで考えてもらう。


「まずは全部収穫してからですね。どれくらい麦が取れるかわからんと、値段のつけようがありません」


収穫量から値段を考えるという方法をキリクは提案する。


「うーん、あたしはどうかなあ。やっぱり、よっぽど安くしてくれないと。だって、どんな麦が生えてるかわからないってことは、ただの雑草ばっかりの可能性もあるし」


サラの方は、そもそも怪しげな畑は買いたくないという。それも一つの考え方だ。


「ところが、ここに魔法の道具があるとする。畑に投げ込むと、生えている麦を魔法で移動させて、種類ごとに分けてくれる魔法の道具だ。小麦は小麦、大麦は大麦、といった具合に畝や区画でわけてくれる。そうしたら、畑を買いたいと思うかな?」


「じゃあ買う!」と目を輝かせたサラとは反対に、キリクは懐疑的だった。


「そりゃあ、そんなもんがあれば苦労はないですがね。よくは知りませんが、畑を耕すってのは大変なんでしょうが。魔法の道具の値段だって高けりゃ、意味がないですよ」


魔法の道具もただではない、というあたりが商家出身の冒険者らしい用心深さというべきか。


「そうだ。魔法はただじゃない。だが、この器械は圧倒的に安い。作るのも安ければ、動かすのも安くすむ」


ゴルゴゴが作った豆を分ける器械は製作期間も短ければ、材料費も安い。おまけに動かすのも簡単である。


「要するに、代官様は教会の持つ膨大な豆は雑多な麦畑と同じだと仰るのですね。それを、器械という魔法で分けることができれば、売買が可能になる、と」


パペリーノの指摘に、小さく頷く。


これまで教会の中で費用コストとして眠っていた豆が、換金可能な資産になるわけだ。

取引市場を上手く作り出せば、莫大な価値を生むことができる。

そして、規則ルールを決定する権限は教会にあるのだ。


利益にならないはずがない。

少し落ち着いてきましたので、1日1更新は頑張りたいと思います。

明日は12:00更新予定です

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― 新着の感想 ―
[一言] ゴルゴゴ 回転させるなら 「瓢箪より、太い竹(‐筒)があればよかったのじゃが」
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