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異世界コンサル株式会社(旧題:冒険者パーティーの経営を支援します!!)  作者: ダイスケ
第三十九章 領地の現場を歩いて復興を支援します

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第660話 農婦の訪問

翌日から朝食は白いパンと豆のスープになった。


白いパンだけあれば満足のサラと、豆が食べたい俺の妥協の結果だ。

本当はライ麦パンの方が良かったのだが、そういう自分は少数派だった。


「じゃあ、ケンジがライ麦を粉にするの?」


と言われれば引き下がらざるを得ない。

一方で、小麦粉についてはキリクが体を張って石臼を回す役を引き受ける。

いつの世も、直接に手を動かす人間の意見は通りやすい。


「もう少し植物油が安く取れるといいんだがな」


油さえ安くなれば、いろいろと料理の幅も広がる。


「あたしは卵!」


「そうだな。卵を焼いてパンに載せて食べたら美味いだろうな」


「自分は、やはり肉ですね。猪でも魚でも何でもいいですが、やはり肉ですよ」


「鶏が来れば、潰して肉を獲ることもできるさ。もう少しの辛抱だな」


聖職者のパペリーノを除くと、やはり領地での食事には言いたいこともあるらしい。


狩猟権も漁業権も代官にあるわけだから、猟師や漁師がいれば税として一部を受け取る権利もあるのだが、今のところは領民の感情を考えて実行にうつしていない。


「いずれにせよ、もう少し領民の生活を良くしてからだな。まずは与える。受け取るのはそれからだ」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


朝食の後で計画を立てていると、来客がある、とサラが知らせに来た。

例の豆を植えていた農婦である。


心なしか顔色が悪いように見えるが、一方でとび色の目には強い光も感じられる。

若い頃は、気の強そうな美人であったに違いない。


「まずはお座り下さい」


執務室にはソファーもなく粗末な木の椅子のみが数脚あり、壁面には大きな黒板と、昨日の議論の内容が乱暴に書き殴られている。


「いくつか、伺いたいお話があります。ええと、資料によればあなたのお名前は、イーダさん、でよろしいですか」


質問に対して、年かさの農婦は黙って頷いた。


生誕名簿から書き写された領地の資料は怪しい点もあるが、前の代官が来る以前に生まれた住人については比較的、正確に記録されていたと言えそうだ。


「先日も申し上げたとおり、この屋敷は大変に手が足りない状況にありまして、よろしければ屋敷内の家事や掃除などを手伝っていただけないか、と思いまして。もちろん、賃金は払います。とはいえ、毎日では大変でしょうから、1日おきに、太陽が昇って昼になるまで、ということでは如何でしょう?」


農婦から答えはなかったが、とりあえず最後まで説明をしてしまう。


「あとは、いくつかこの村の事情について伺うことがあるかと思います。何をするにも、我々は新参者で、この村については知らないことが多く、間違ったことをするかもしれません。率直なところを教えていただければ、いろいろと助かります」


できるだけ簡単に説明したつもりだが、理解しにくかっただろうか。


「・・・それで、あの懲罰の税については待っていただけるのでしょうか」


今度は、俺が驚く番だった。


「懲罰?税?なんの話ですか?」


農婦は顔を上げ、開き直ったように口を開いた。


「ですから、魚を獲ったことと、豆を植えたことについてです!必ずお支払をします!ですから、どうか畑を取り上げるのだけはお待ち下さい!」


思わず困惑して周囲を見回すと、サラとパペリーノも同じ反応を見せている。


「いや、別に税を追加で獲ったりしませんよ。私はまだ、この領地の方針について説明をしてないわけですから、罪に問うわけにはいかないでしょう?」


そこまで説明すると、農婦はようやくこちらの言葉を信じる気になったようだった。


「じゃあ、お手伝いというのは本当なんでしょうか?」


「本当ですよ。なにしろ、領主として赴任したはいいものの、今はここにいる4人だけですからね。何しろ、手が足りないのです」


思わず苦笑した。そもそも、農婦の土地を取り上げてどうしようと言うのか。


自分はただの代官で領地の所有者ではないし、耕すだけの労働力もなければ時間もない。

豆については多少の興味はあるが、そんなものは銅貨で買えばいいだけだ。

代官屋敷の庭で植えてもいい。


そもそも、自分がこの村に何のために来たのか。

今のところ、村民たちからは前の代官の同種と見做されている、ということはハッキリした。


早急に豆を配る計画を進め、互いの認識の差を埋める必要がある。

明日も18:00更新を目指しますが、じゃっかんズレるかもしれません

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